レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2016/09/16 16:52
- 更新日時
- 2016/09/24 09:26
- 管理番号
- 109
- 質問
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解決
尼崎市立地域研究史料館寄託「東大島部落農会文書(2)」の「文書群概要」の「歴史」の項目に、東大島では、「都市化の進行により、昭和46年(1971)には、村としての稲作が終了した」とあるが、当時まだ田んぼがあったように記憶している。稲作は継続していたのでは?
【参考】「東大島部落農会文書(2)」文書群概要
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/collections/records/catalogs/pdf/102023.pdf
- 回答
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尼崎市域は武庫川と猪名川という二つの大きな河川の間に位置し、豊かな水の恵みのもと、近代以降も多くの地域で引き続き農業が営まれてきました。しかし、工業化・宅地化が全市域で進行するようになり、とりわけ高度経済成長期以降、尼崎市からそのような農業の風景が急速に失われていきました。こうした市域の状況を受け、地域研究史料館では市民ボランティアの方々とともに、「尼崎の戦後農業」をテーマに、市域の262人の方々から聞き取り調査を実施し、その成果は尼崎市制90周年記念『尼崎の農業を語る 262』(『尼崎の農業を語る 262』刊行会発行、2006)として刊行されました。
同書に収録した、東大島地区で農業をされていた方々への聞き取り調査は平成13年(2001)に実施しており、「東大島村としては昭和46年に稲作を終了した」と報告しています。「東大島部落農会文書(2)」の「文書群概要」は、上記を参照して記述しました。ただしその一方で、同書には、個人の方が昭和53年(1578)まで稲作を継続していた旨も記されていました。よって、昭和46年の段階では、同地区の田んぼはまだあったことになります。
村としての営農、個人としての営農、それぞれをどう理解すればよいか、当時聞き取り調査に関わった方々に確認したところ、「村として稲作を終了した」というのは、稲作のための潅漑用水の維持管理などを、地区で実施するのを止めたことを意味するということです。東大島地区では、潅漑用溜池として春日池を利用していたそうですが、稲作終了を決定したのちに、春日池は公園となりました(現在の春日公園)。東大島地区では、このように水利環境は変化したのちも、個人として稲作を継続された方もいらっしゃいました。水は、個人で田に引くことになりますので、武庫川の「六樋」からの「こぼれ水」、あるいは水道水を利用したとのことでした。
東大島地区の戦後農業の様子については、上記『尼崎の農業を語る 262』に詳しく紹介しており、同地区の農業の様子を知ることができます。また、史料館では東大島地区の農会から二度にわたって文書の寄託を受けています。それぞれ「東大島部落農会文書(1)」「東大島部落農会文書(2)」として文書群概要・文書目録等を公開しており、それぞれ閲覧することができます。
- 回答プロセス
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1 尼崎市東大島地区の戦後農業の様子がわかる文献を調査
◆『尼崎の農業を語る 262』等 ※その後、当時の聞取調査にあたった元職員・ボランティアの方等へ詳細をたずねる
2 尼崎市東大島地区の農会史料
◆「東大島部落農会文書(1)」
(文書群概要)http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/collections/records/catalogs/pdf/079001.pdf
(文書目録)http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/collections/records/catalogs/pdf/079001c.pdf
◆「東大島部落農会文書(2)」
(文書群概要)http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/collections/records/catalogs/pdf/102023.pdf
(文書目録)http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/collections/records/catalogs/pdf/102023c.pdf
3 尼崎市域の近現代の農業について記した文献を確認
◆『図説尼崎の歴史』下巻 現代編 第二節「高度経済成長期の尼崎2」のコラム「農業の機械化」
◆『図説尼崎の歴史』下巻 現代編 第三節「石油危機から震災まで1」の「転換期を迎える尼崎の経済」のうち、「都市部での農業」
◆ 沼尻晃伸 『村落からみた市街地形成 : 人と土地・水の関係史:尼崎1925-73年』(日本経済評論社、2015)
尼崎市のうち、立花地区(土地区画整理事業)、大庄地区(浜田地区)の村落の市街地への変容について、農地や水利のあり方から論じたもの
- 事前調査事項
- NDC
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- 農業史.事情 (612)
- 近畿地方 (216)
- 参考資料
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- 尼崎市立地域研究史料館 編 , 尼崎市立地域研究史料館. 尼崎の農業を語る262 : 尼崎市制90周年記念. 『尼崎の農業を語る262』刊行会, 2006. (当館請求記号 612.6/A/ア)
- 尼崎市立地域研究史料館/編集 , 尼崎市立地域研究史料館. 図説尼崎の歴史 : 尼崎市制九〇周年記念 下巻. 尼崎市, 2007. (当館請求記号 219/A/ア)
- 沼尻晃伸 著 , 沼尻, 晃伸, 1964-. 村落からみた市街地形成 : 人と土地・水の関係史尼崎1925-73年. 日本経済評論社, 2015. , ISBN 9784818823600 (当館請求記号 519.6/A/ヌ)
- キーワード
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- 農業
- 営農
- 尼崎市東大島
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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◆Web版『図説尼崎の歴史』現代編 第二節「高度経済成長期の尼崎2」のコラム「農業の機械化」
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/chronicles/visual/05gendai/gendai2-c1.html
◆Web版『図説尼崎の歴史』現代編 第三節「石油危機から震災まで1」の「転換期を迎える尼崎の経済」のうち、「都市部での農業」
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/chronicles/visual/05gendai/gendai3-1.html
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000197034