レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/10/01
- 登録日時
- 2012/10/12 17:32
- 更新日時
- 2013/07/25 13:31
- 管理番号
- 長野市立長野-12-017
- 質問
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解決
天神さまについて
①「天神さん」という風習(子供が誕生した際にお祝に「天神さん」が描かれた掛軸を贈り、床の間に飾る)があるようだ。富山や福井など北陸の一部と、長野県北信地方のみで行われているらしいのだが、明治以降の掛け軸の特徴などを時代別に知りたい。
➁子供が誕生した際にお祝に、梅鉢紋入りの着物も贈る風習があると聞いたが本当か。天神さまとの関係は。
- 回答
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①明治時代は掛軸の幅が狭く、軸が細いのが特徴。絵柄は多色刷りの版画で、製作元の印版が押されている。大正時代には、掛軸の幅が広くなり、一見豪華に見える。絵柄は多色刷りの印刷で、軸幅が広くなった分大きく描かれている。製作元の版印は押されなくなる。昭和時代は大正時代とあまり違いは見られない。
➁こういった風習が書かれた資料は見つけられなかったが、天神さまと梅の関係については、以下に記載した参考資料を紹介し回答とした。
- 回答プロセス
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1.郷土資料の棚380~を中心に探すが、該当資料なし。
2.長野県市町村史誌データベースの目次検索で「天神」を検索する。
『長野県史 民俗編 第5巻 総説1』 長野県 長野県史刊行会 1991 <N209ナ5-1> p32
天神講についての記述あり。「学問の神様である天神様を子どもたちがまつる行事をテンジンコーとかテンジンマツリなどといい県下で広く行われており、祭りの内容として、幟をたて灯籠をあげ掛軸を掛け…」とある。
南佐久郡佐久町高野町では、「新調した吹き流しに梅の花の模様を描き「天満天神宮」と墨書きしたものを(中略)飾る」とある。
『松本市史 第3巻 民俗編』 松本市 松本 1997 <N233マ3> p842
「天神さまは菅原道真であり、学問の神様と考えているが、松本市内に天神講というものはみられない。」というような記述がある。
『長野市誌 第10巻 民俗編』 長野市誌編さん委員会 長野市 1998 <N213ナ10> p270
データベースではヒットしなかったが、試しに調べてみた。「初めての年の暮れにはボコのお歳暮またはオテンジンサンなどといって、親元や親類などがこどもにお歳暮を贈ることがある。男の子には破魔矢か菅原道真を描いた掛け軸、女の子には羽子板か紫式部・清少納言などの姿を描いた掛け軸を贈る。これらは年末に床の間や座敷に飾られる。」とある。
3.祭りに関係があるようなので、当館opackで「長野県 祭り」で検索。該当多数だが、郷土史料を中心に当たっていく。
『目で見る信州の祭り大百科』 小林経広 郷土出版社 1988 <N386メ> p110
県内各地で行われている祭りの中で、下伊那郡清内路村下清内路で行われている「天神様のお祭り」では、ほとんどの家に菅原道真公の掛軸があり、個々の家において掛軸を掛け、古くからお祭りする習わしがあることが分かる。
風習についての記述はあるが、掛軸についての記述は見られない。
4.グーグルで「風習 天神 長野」を検索。
「平成15年長野県民俗学研究動向」
http://www.ch-you.ne.jp/users/trx_45/doukou03.htm <最終確認:2010年10月14日>
『高井142号』 高井地方史研究会 に天神さんの贈答風習について記載があることが分かる。
当館OPACで所蔵を確認。ほぼ、求めていた内容である。時代別特徴などの記述あり。
5.梅紋については、家紋(288)の棚へ行き、まず索引がある資料から「梅」を引く。
『家紋の文化史』 大枝史郎 講談社 1999 <288オ> p122~126
『家紋の由来と美』 丹羽基二 南雲堂 1993 <288ニ> p20
更に、当館OPACで<天神 梅>を検索する。
『梅 1』 有岡利幸 法政大学出版局 1999 <627ア1> p73~
梅と菅原道真(天神さま)の関わりについて詳しく載ってはいたが、着物を贈る風習についての記述はなかった。
他にも資料をあたるが空振りに終わる。
6.調査を進めるにあたり、天神信仰が根底にあることが分かったので、天神信仰についての資料を補足として見ていただく。
『民衆宗教史叢書 第4巻 天神信仰』 村山 修一 雄山閣 1983 <387ミ4>
- 事前調査事項
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中野市立博物館で開催された「天神掛軸展」(平成24年1月7日~29日)を見た。
- NDC
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- 風俗習慣.民俗学.民族学 (380)
- 花卉園芸[草花] (627)
- 系譜.家史.皇室 (288)
- 参考資料
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- 『高井142号』 高井地方史研究会 2003/2/1 (p1~6)
- 『家紋の文化史』 大枝史郎 講談社 1999 <288オ> (p122~126)
- 『家紋の由来と美』 丹羽基二 南雲堂 1993 <288ニ> (p20)
- 『梅 1』 有岡利幸 法政大学出版局 1999 <627ア1> (p73~)
- 『民衆宗教史叢書 第4巻 天神信仰』 村山 修一 雄山閣 1983 <387ミ4>
- キーワード
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- 天神
- 祭り
- 長野
- 風習
- 家紋
- 梅
- 天神信仰
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000112403