レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年1月7日
- 登録日時
- 2021/03/21 13:23
- 更新日時
- 2021/03/24 22:03
- 管理番号
- 県立長野-20-124
- 質問
-
解決
灰屋(はんや、灰小屋、灰納屋)、堆肥舎、蔵、牛・馬屋などの土壁建築物について、長野県内での記録、保存状況などを知りたい。
- 回答
-
保存状況や分布域がわかる、総合的な資料は確認できなかったため、県内の市町村史誌類などの記述があるものを紹介した。
<灰屋・土蔵について記述のある書籍>
・『長野県史 民俗編 第5巻 総説1 概説』
長野県編 長野県史刊行会 1991 【N209/11-3/5-1】p.148-154
全県の概説として、土蔵などの付属建物の記述があった。土蔵については造りの記述がみられるが、灰置き場である灰屋、便所を含めて、用途についての記述が多く、建築物としての造りについては、触れられていない。
・『長野県史 民俗編 第3巻(1)中信地方』
長野県編 長野県史刊行会 1989 【N209/11-3/3-1】p.352-366,393-399
土蔵の造りについて若干の記述があった。ほかの付属建物の造りについての記述はない。P.354下段に「便所の隣にヘーヤと呼ばれる灰置き場がついている造りも普通にみられた。いろりやこたつから出る灰を保管しておき、人ぷんとまぜて肥料としたものであった。」との記述があったが、建築方法についての記述はない。P.364-365にかけて、外便所と灰屋の位置関係について触れた調査結果がある。調査地域の一覧は、p.i-ivになる。
・『長野県史 民俗編 第4巻(1)北信地方』
長野県編 長野県史刊行会 1984 【N209/11-3/4-1】p.320-332,357-365
土蔵の造りについて若干の記述があった。ほかの付属建物の造りについての記述はない。P.327, 330に「ヘーヤ(灰屋)」の項目が立てられてはいるが、用途と呼び方の調査記録となっている。土壁で作られたか判断できる記述はない。
・『長野県史 美術建築資料編 全1巻(1)建築 解説』
長野県編 長野県史刊行会 1984 【N209/11-3/4-1】p.178-262
p.178-262に県下の民家についての総説と、各棟の説明と復元平面図等がある。P.229「馬場太郎家住宅」の構成建物の中に「旧灰部屋」とあるが、詳細はない。
p.236-237「小野家住宅」の土蔵については、「二階建で、置屋根の形式をもちいている。また、壁の腰には主屋と同様に海鼠壁をもちいている。建築年代を示す記録はないが、様式から主屋と同じころ、もしくは明治初期の建築と推定される。」とある。
p.254-255「旧横田家住宅」には、土蔵が2棟記されている。ともに土蔵造とあり、平面図がある。
p.257「小林一茶旧宅」がある。一茶は文政十年の火事以後、この土蔵を仮住まいとしたまま没している。「土蔵は、置屋根形式の切妻造、茅葺で、背後の妻を土壁でふさぐ。内部は板床で、入口の一部を土間とする。土蔵は、弘化四年(一八四七)の善光寺地震でも倒壊をまぬがれた。」とあり、平面がある。
・『長野県史 美術建築資料編 全1巻(2)建築 写真集』
長野県編 長野県史刊行会 1984 【N209/11-3/4-1】p.320-332,357-365
・『三水村誌』 三水村誌編纂委員会編 三水村 1980【N212/166】 p.647-657
土蔵の造りや平面図、側面図など、他の史誌と比べてもかなり詳しく書かれている。
・『牟礼村誌 下』 牟礼村誌・学校誌編纂委員会編 牟礼村 1997【N212/324/2】 p.320-328
土蔵の造りや平面図、側面図など、他の史誌と比べてもかなり詳しく書かれている。
・『上田市誌 第24巻 民俗編2 衣食住とくらし』
上田市誌編さん委員会編 上田市 2001 【N221/175/24】 p.76-78
土蔵の造りや用途についての記述がある。納屋については、用途のみ簡略に書かれている。
・『真田町誌 民俗編』 真田町誌編纂委員会 真田町誌刊行会 2000 【N221/156/4】 p.115-116
土蔵の構造(土壁の中に石や瓦を入れるなど)や、目的(防火・防犯)に触れている。
・『真田町誌 歴史編下』 真田町誌編纂委員会 真田町誌刊行会 1999 【N221/156/3】 p.198-200
江戸期の土蔵や雪隠の規模についての調査がまとめられている。
・『臼田町誌 第2巻 民俗編』
臼田町誌編纂委員会編 佐久市臼田町誌刊行会 2008 【N223/106/2】 p.115-119
屋敷の付属建物としての土蔵や小屋類について、記述がある。図面等はないが、土蔵の建築方法について若干の記述がある。
・『丸子町誌 民俗編』 丸子町誌編纂委員会 丸子町 1992 【N221/132/4】 p.57-63
屋敷内の配置や付属建物についての記述がある。土蔵や小屋類の建築方法についても、若干の記述がみられる。養蚕から酪農へと産業構造が変わったため、屋敷の配置の変遷の図がある。
・『八千穂村誌 第3巻 民俗編』
八千穂村誌民俗編編纂委員会編 八千穂村誌刊行会 2002 【N223/102/3】 p.116
土蔵についての記述がある。
・『南相木村誌 南相木の民俗習俗』 南相木村教育委員会編 南相木村 2003 【N223/11b/1】 p.46-49
土蔵の造りについて記述がある。また、土蔵の壁を戦時中に汚した旨のコラムもあった。
・『原村誌 下巻』 原村編 原村役場 1997 【N241/109/2】 p.1087-1088
土蔵の構造、建築方法についての記述がある。
・『南箕輪村誌 上巻』
南箕輪村誌編纂委員会編 南箕輪村誌刊行委員会 1984 【N242/100/1】 p.613-614
便所の項目に灰屋について、「三方を土で塗った壁で仕切られた場所に火の気のなくなった灰をためておき、大事な肥料にした。」とあった。続いて土蔵の造りについての記述がある。
・『売木村誌 下巻』売木村誌編纂委員会編 売木村誌刊行委員会 2006 【N243/231/2】 p.622-623
土蔵の作り方の記述がある。
・『宮田村誌 下巻』 宮田村誌編纂委員会編 宮田村誌刊行会 1983 【N242/91/2】 p.663-667
土蔵の造りについて、他の史誌よりも詳しく書かれている。
・『飯島町誌 下巻』 飯島町誌編纂刊行委員会編 飯島町 1993 【N242/110/3】 p.934-936
土蔵の造りについての記述がある。
・『日義村誌 民俗編』 日義村誌編纂委員会編・刊 1998 【N234/105/2】 p.59-60
土蔵の造りについての記述がある。白壁を保護するための「ササラ壁」が多かったことも書かれている。
・『松本市史 第3巻 民俗編』 松本市編・刊 1997 【N233/106/3】 p.736-737
土蔵や納屋の造りについての記述、「屋敷内の付属建物」の種類別の残存している市内の略図がある。
・『三郷村誌I』 三郷村誌編纂会 三郷村誌編纂会 1980 【N232/23】 p.496
土蔵の造りについて記述がある。
・『三郷村誌II 第5巻 民俗編』 三郷村誌編纂委員会 三郷村誌刊行会 2004 【N232/23/2-5】 p.59-61
土蔵の造りについて記述がある。
・『大町市史 第5巻 民俗・観光』 大町市史編纂委員会 大町市 1984 【N231/36/5-1】p.207
土蔵の造りについて記述がある。
<灰屋について記述のある雑誌論文>
・中島淑雄著「灰屋-上伊那郡飯島町本郷の事例-」 『伊那路』第43巻1号(1999) p.24-25
小屋の作りについての記述はないが、建物内部の平面図(配置図)が4棟分あった。
文化庁の「文化財遺産オンライン」に、長野県松本市波多にある「波多腰家住宅灰屋」(登録有形文化財(建造物))【最終確認2021.3.22】も登録されている。蔵、文庫蔵などもある。報告書のようなものが刊行されたかは不明。
<土蔵について若干の記述があったもの>
・『民家』 信濃毎日新聞社編集局編 信濃毎日新聞社 1972 (信濃の美 2) 【N521/45】
・『鼎の民家』 鼎町文化財審議委員会編 鼎町教育委員会 1977 【N521/55】
・『長野県の国宝・重要文化財建造物修理工事報告書 4 住宅・民家建築』
長野県文化財保護協会編 郷土出版社 1988 【N521/102/4】
県重要文化財「真山家住宅」の修理工事報告書を所収。土蔵の記録あり。
・『重要文化財旧横田家住宅修理工事報告書』文化財建造物保存技術協会編 長野市 1991 【N521/122】
・『松本市重要文化財馬場家住宅第1期修理工事報告書』
松本市教育委員会文化課編 松本市教育委員会 1996 【N521/141】
・『長野県宝中村家住宅修理工事報告書』 美麻村教育委員会編 美麻村 1997 【N521/142】
・『長野県宝妻篭宿脇本陣林家住宅調査報告書』 南木曽町教育委員会 1999 【N521/154】
・『重要文化財馬場家住宅隠居屋及び附茶室保存修理工事報告書』
文化財建造物保存技術協会編 馬場太郎 2002 【N521/161】
・『加納屋深沢家住宅調査報告書』
文化財研究所奈良文化財研究所編 楢川村町並み文化整備課 2004 【N521/168】
・『徳利屋原家住宅調査報告書』
文化財研究所奈良文化財研究所編集 楢川村町並み文化整備課 2004 【N521/169】
・『上問屋手塚家住宅調査報告書』
文化財研究所奈良文化財研究所編 塩尻市教育委員会 2006 【N521/191】
・『重要文化財小野家住宅保存活用計画調査報告書』
文化財研究所奈良文化財研究所編 塩尻市教育委員会 2006 【N521/192】
・『重要文化財堀内家住宅保存活用計画調査報告書』
奈良文化財研究所編 塩尻市教育委員会 2007 【N521/216】
・『長野市指定有形文化財<建造物>旧樋口家住宅保存整備事業報告書』
竹村建築設計事務所編 長野市教育委員会文化財課 2012 【N521/230】
・『重要文化財小野家住宅主屋ほか二棟保存修理工事報告書』
文化財建造物保存技術協会編著 小野良文 2013 【N521/241】
・『寺町商家(旧金箱家住宅)保存整備事業報告書』
文化財保存計画協会編 長野市 2016 【N521/266】
・『旧前島家住宅保存整備事業報告書』 長野市教育委員会編 長野市教育委員会 2015 【N521/267】
・『旧小田切家住宅修理工事報告書』 信州伝統的建造物保存技術研究会編 須坂市 2017 【N521/271】
・『宮田宿本陣旧新井家住宅移築復原工事報告書』
宮田宿本陣旧新井家住宅移築復元委員会編集 宮田村教育委員会 1987 【N521/282】
・『旧(イチヤマカ)林家住宅』 信濃建築史研究室編集 岡谷市教育委員会 2001 【N521/287】
<その他調査資料>
・『豊野町誌3 豊野町の民俗と地区誌』豊野町誌刊行委員会編・刊 1998 【N212/18a/3】p.47-50
屋敷内の配置や付属建物の用途についての記述がある。
・『高森町史 上巻前編』高森町史編纂委員会編 高森町史刊行会 1972 【N243/76/1】p.539下段
灰を溜め置く小屋を灰屋と呼び、上に板敷を張って物置にすることもあった。
「文政十三年 十月十七日、拙(拙者)灰屋二階張り手伝致ス 十八日、灰屋二階出来、わらあげ」(下市田・中村藤雄氏所有、文政十三寅年日記帳)
・『木曽・楢川村誌6 民俗 暮らしのデザイン』楢川村誌編纂委員会編 楢川村 1998 【N234/88/6】
p.438-442 蔵と物置の項に、土蔵や塗師の仕事場としての「クラ(土蔵造り)」の用途の記述があった。
p.513-518 村内の蔵について、いつ頃作られたものかの調査表がある。
・『長野県史 民俗編第1巻(1)東信地方』
長野県編 長野県史刊行会 1986 【N209/11-3/1-1】p.283-290,313-321
土蔵の造りについて若干の記述があります。ほかの付属建物の造りについての記述はない。
・『長野県史 民俗編第2巻(1)南信地方』
長野県編 長野県史刊行会 1988 【N209/11-3/2-1】p.420-430,463-470
土蔵の造りについて若干の記述があります。ほかの付属建物の造りについての記述はない。
- 回答プロセス
-
1 『日本民俗大辞典 下』で「灰屋」を確認する。
2 当館の郷土資料の書誌の全項目を、「灰屋」「納屋」「蔵」「馬屋」などのキーワードで検索したものを見ていくこととする。
3 長野県下には、市町村単位だけでなく旧村単位の史誌、区誌などが多くあり、悉皆的な調査は難しいため、「長野県市町村史誌目次情報データベース」【最終確認2021.3.22】で、「灰屋」「納屋」「蔵」と検索して、ヒットしたものに限って調査した。
<調査済資料>
・『日本の民家調査報告書集成9 中部地方の民家』 東洋書林 1998 【521.86/ニホ/9】
・『秋山郷の民家』 長野県教育委員会編 長野県教育委員会 1962 【N521/7】
・『八千穂村の民家』 長野県教育委員会編 長野県教育委員会 1963 【N521/8】
・『白馬村の民家』
長野県教育委員会編 長野県教育委員会 1964 (長野県民俗資料調査報告 5) 【N521/9】
・『伊那市の民家』
長野県教育委員会編 長野県教育委員会 1965 (長野県民俗資料調査報告 6) 【N521/10】
・『中部地方の民家』 丹生谷章著 明玄書房 1968 【N521/36】
・『大鹿村の民家』
長野県教育委員会編 長野県教育委員会 1966 (長野県民俗資料調査報告 8) 【N521/38】
・『信濃路の民家』 荒川久治著 信濃路 1971 【N521/43】
・『佐藤章素描画集 山の民家』 佐藤章著 矢来書院 1973 【N521/48】
・『信濃の民家』 太田博太郎著 長野県文化財保護協会 1976 【N521/52】
・『民家調査報告書』
飯島町文化財調査委員会編 飯島町教育委員会 1977 (飯島町の民家 第1集)【N521/56/1】
・『佐久地方に於ける徳川初期の民家に就いて』 小林尚二著 小林尚二 1952 【N521/63】
・『民家と西洋館 (信州の文化シリーズ)』 信州郷土史研究会編 信濃毎日新聞社 1981 【N521/67】
・『長野県の国宝・重要文化財建造物修理工事報告書 4 住宅・民家建築』
長野県文化財保護協会編 郷土出版社 1988 【N521/102/4】
・『駒ケ根市の民家』 「駒ケ根市の民家」編集委員会編 駒ケ根市教育委員会 1992 【N521/121】
・『東海・中央高地の住まい』
吉沢政己著 INAX出版 1996 (INAX album 34 日本列島民家の旅 6)【N521/134】
・『民家再生の設計手法』 降幡廣信著 彰国社 1997 【N521/140】
・『日本の民家重要文化財修理報告書集成3 農家』
村上訒一[ほか]編 東洋書林 2000 【N521/207/3】
・『日本の民家重要文化財修理報告書集成8 町屋宿場』
村上訒一[ほか]編 東洋書林 2000 【N521/207/8】
・『辰野町の建造物 (辰野町の民家 2)』
辰野町教育委員会編 辰野町教育委員会 1990 【N521/233/2】
・『民家の再生1 降幡廣信の仕事』 降幡廣信[著] 建築資料研究社 1989 【N521/243/1】
・『重要文化財 小笠原家住宅修理工事報告書』 飯田市編 飯田市 1970 【N521/44】
・『重要文化財 春原家住宅修理工事報告書』
文化財建造物保存技術協会編 春原家住宅修理委員会 1981 【N521/64】
・『重要文化財島崎家住宅修理工事報告書』
文化財建造物保存技術協会編 重要文化財島崎家住宅修理委員会 1987 【N521/104】
・『こども松代みて歩き 武士の住まい』 松代文化財ボランティアの会編
長野市教育委員会文化財課松代文化施設等管理事務所(真田宝物館) 2012 【N521/225/2】
・『高橋家住宅復元整備工事報告書』 松本市教育委員会 2010 【N521/239】
・『重要文化財堀内家住宅ほか一棟保存修理報告書』
文化財建造物保存技術協会編 堀内 健 2019 【N521/286】
・『信濃の民家』 太田博太郎著 長野県教育委員会編 長野県文化財保護協会 1976 【N521/52】
秋山郷/八千穂村/白馬村/伊那市/大鹿村/松代町
- 事前調査事項
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『日本民俗大辞典 下』福田アジオ編 吉川弘文館 2000 【380.33/フア/2】『図説民俗建築大事典』 日本民俗建築学会編 柏書房 2001【383.9/ニホ】
- NDC
-
- 日本の建築 (521)
- 中部地方 (215)
- 参考資料
- キーワード
-
- 灰屋
- 土蔵
- 蔵
- 民家
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000295640