レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年04月16日
- 登録日時
- 2013/10/11 15:43
- 更新日時
- 2022/11/24 12:46
- 管理番号
- 大分県立郷土-2010-005
- 質問
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解決
やせうまの由来について知りたい。昔から食べられているかどうか。
- 回答
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由来ははっきりしない。平安の頃からと伝承されている。
<事後調査>
・由来としては、次の3つが挙げられていた。
1.都落ちした幼君が乳母の八瀬に「やせ、うま。」とおやつをねだり、八瀬が、細長く練った小麦粉の団子に黄粉をまぶして出したという伝説がもとになっている。
2.17世紀ごろから食べられていた。1の伝説はこのころに作られたものである。
3.江戸からの移入語が定着した。
資料は下記のとおり。
●1の伝説について
時代を書いているものは平安時代としている。場所も書いているものは由布市挾間町としている。記述があった資料は、参考文献の【1】~【9】。
●2について
【9】『挾間史談 第2号(2011)』挾間史談会/編 挾間史談会 2011.7
p58~62「「やせうま」伝説の背景を想う」
挾間町古野に1の伝説が語り伝えられていることを受け、伝説の背景として、17世紀の古野地区の暮しを分析し、伝説が後付けであるとしている。概ね下記のような内容が書かれている。
・少ない米を補うために穀物を食べており、食べ方の工夫が進む中で、「やせうま」またはそれに近いものを食べるようになっていた。
・江戸期に、妙蓮寺(八瀬がお参りに行っていたという寺)の施餓鬼会で、供えるための米がないため、かわりに「麦・小麦食」を供えるようになった。また、お供えは共食するため、分けやすく食べやすい「やせうま」を供えるようになった。
・伝説については、妙蓮寺の17世紀の再興に合わせ、八瀬童子の地が出てくる後醍醐天皇の潜幸をもとに、高貴な人物が出てくる話を創ることで、イメージアップを図った。また、若君が「やせうま」をねだって食べることで、麦食を立派な食べ物として認識させるはたらきがあった。
●3について
【10】『挾間史談 第8号(2022)』挾間史談会/編 挾間史談会 2022.5
p48~59「「やせうま」は古野が発祥であるか?」
【9】の説を分析し、挾間町古野が発祥ではないとしている。そして、【11】の記述を引用している。
【11】『写真集 明治大正昭和 大分』渡辺 克己/編 国書刊行会 2020.9
p159~161「大分の赤ネコ考」
p160~161に江戸からの移入語が定着し、大分特有のものになったという記述がある。その中に、江戸の随筆家、柳亭種彦の『用捨箱』の記述が引用されており、古くからある白糸餅という細くねじったものがあり、馬の形はしていないが、異名を「やせうま」といったという旨の記述がある。また、信州小県郡の風俗を書いた冊子の引用もあり、同じような餅を「やせうま」と言い、それはもはや江戸にはない旨が記されている。これらより、江戸にいた武士か商人が大分に持ち帰って郷土食に定着させたとしている。
- 回答プロセス
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過去の調査事例をもとに『大分市史 下巻』(昭和31年)、『大分百科事典』、『大分の伝統料理』を参照。
<事後調査>
1 「やせうま」で所蔵検索
2 大分の郷土料理に関する資料を確認
3 挾間史談を確認
4 3に出てくる資料を確認
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品.料理 (596 10版)
- 伝説.民話[昔話] (388 10版)
- 参考資料
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【1】西澤千惠子 著 , 西澤, 千惠子. 今こそ作ってみたいおおいたの郷土料理. 大分学研究会, 2018. (大分学研究叢書 ; 第2巻)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030029058-00 , ISBN 9784990784515 (p110) -
【2】西日本新聞社社会部 編著 , 西日本新聞社. 九州和菓子紀行. 書肆侃侃房, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007741588-00 , ISBN 4902108127 (p68) -
【3】大分合同新聞 編 , 大分合同新聞社. 大分の味. 大分合同新聞.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I086585518-00 (p56) -
【4】大分合同新聞文化センター 企画編集 , 大分合同新聞文化センター. 大分の伝統料理. 大分合同新聞社, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002176602-00 (p92~93) -
【5】永山久夫 [著] , 永山, 久夫, 1934-. 長寿村の一〇〇歳食. 角川書店, 2003. (角川oneテーマ21)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004276518-00 , ISBN 4047041483 (p40) -
【6】鶴崎校区つるさき七輪の街づくり推進委員会 編 , 鶴崎校区つるさき七輪の街づくり推進委員会. ふるさと鶴崎のくらしと歴史. 大分市鶴崎支所, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I086599638-00 (p96~97) -
【7】岡田哲 編 , 岡田, 哲, 1931-. 日本の味探究事典. 東京堂出版, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002480794-00 , ISBN 4490104103 (p326) -
【8】挾間町誌編集委員会 編. 挾間町誌. 挾間町誌刊行会, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002584678-00 (p757~758) -
【9】挾間史談会 編 , 挾間史談会. 挾間史談 第2号(2011). 挾間史談会, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I087283167-00 (p58~62) -
【10】挾間史談会 編 , 挾間史談会. 挾間史談 第8号(2022). 挾間史談会, 2022.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I112620436-00 (p48~59) -
【11】渡辺克己 編 , 渡辺, 克己, 1913-. 写真集 明治大正昭和 大分 オンデマンド版. 国書刊行会, 2020. (ふるさとの想い出)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030650123-00 , ISBN 9784336067210 (p160~161)
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【1】西澤千惠子 著 , 西澤, 千惠子. 今こそ作ってみたいおおいたの郷土料理. 大分学研究会, 2018. (大分学研究叢書 ; 第2巻)
- キーワード
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- 日本料理
- 大分県
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000138226