レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月03日
- 登録日時
- 2021/05/16 12:56
- 更新日時
- 2021/05/26 17:08
- 管理番号
- 県立長野-20-138
- 質問
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解決
銀河系はどこに向かって動いているのか知りたい。
『地球の大常識』(ポプラ社)p.19に「大規模な銀河系は、宇宙のある方向に向かって動き続けている」とある。
- 回答
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「銀河系」が動いている方向として確認できた記述は下記の2つ。
1.「グレートアトラクター」と呼ばれる、「海蛇座・ケンタウルス座の方向に存在するとされる重力源の方向。
・『宇宙の大常識(これだけは知っておきたい)』安延 尚文文 ポプラ社 2005【440/ヤ】
p.102「銀河系がふくまれる銀河群、銀河団は?」の最後に「最近の観測では、この局部超銀河団も、ほかのいくつかの超銀河団とともに、宇宙のある方向へ引きつけられている。その巨大な引力源は「グレートアトラクター」と呼ばれ、そこにも巨大な超銀河団があると考えられている」とある。
グレートアトラクターについての記述がある事典は下記のとおり。
・『天文の事典』磯部 琇三編集 朝倉書店 2003【440.36/イシ】p.158
・『オックスフォード天文学辞典』Ian Ridpath編 朝倉書店 2003【440.33/リア】p.127
・『天文学大事典』天文学大事典編集委員会編 地人書館 2007【N440.33/テン】p.195-196
2.「アンドロメダ銀河」の方向
銀河系はアンドロメダ銀河とお互いの持つ引力で引き合っており、数十億年後には衝突して1つの大きな銀河になるとの予測がされている。
・『宇宙の大常識』(前掲)p.98「銀河系の未来はどうなるの?」
・『宇宙 (ポプラディア大図鑑WONDA)』青木 和光監修 ポプラ社 2013【440/ウ】p.77「近い未来の宇宙」
・『そうだいすぎて気がとおくなる宇宙の図鑑』渡部 潤一監修 西東社 2020【440/ソ】「45億年後に銀河系はとなりの銀河と衝突する」[ページ数なし]
- 回答プロセス
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質問者は大人の方だったが、お孫さんに買ってあげた本の中で不思議に思ったとのことだったので、一緒に見ることができそうな児童書を中心に調査を進め、不十分と思われる部分を一般書で補強する形で資料を紹介した。
1.『宇宙の大常識』を参照する。
質問者が見た文献と同一シリーズの『宇宙の大常識』を参照したところ、以下の記述があった。
p.98「銀河系はアンドロメダ銀河の方向へ、1秒間に134キロメートルの速さで進んでいる。数十億年後には2つの銀河は衝突してしまうだろう。」
p.102「銀河系がふくまれる銀河群、銀河団は?」の最後には「最近の観測では、この局部超銀河団も、ほかのいくつかの超銀河団とともに、宇宙のある方向へ引きつけられている。その巨大な引力源は「グレートアトラクター」と呼ばれ、そこにも巨大な超銀河団があると考えられている」
以上から、方針としてこの2つについて調べることにする。
2.宇宙に関する児童書の中の記述を探す
(1)児童室の宇宙に関する分類440の書棚にある本の銀河系について書かれている部分を参照したところ、下記の資料が確認できた。
・『宇宙 (ポプラディア大図鑑WONDA)』青木 和光監修 ポプラ社 2013【440/ウ】p.77
「となりあう銀河になかには、おたがいのもつ引力にひっぱられて近づいているものも多くあり、局部銀河群にふくまれる銀河系とアンドロメダ銀河も、そうした銀河のひとつです」とある。
・『そうだいすぎて気がとおくなる宇宙の図鑑』渡部 潤一監修 西東社 2020【440/ソ】「45億年後に銀河系はとなりの銀河と衝突する」[ページ数なし]
「私たちのいる銀河系もまた、230万光年離れたおとなりのアンドロメダ銀河と、秒速300㎞という速さで引き合っています」とある。
初めに見つけた『宇宙の大常識』以外のグレートアトラクターについて書かれている児童書は見つからず。
(2)児童室の参考書のコーナーにある事典で「グレートアトラクター」を探す
下記を参照したが、索引に「グレートアトラクター」の項目なし。
・『総合百科事典ポプラディア 12索引』ポプラ社 2011[031/ソ/12]
・『宇宙 (ポプラディア情報館)』渡部 潤一監修 ポプラ社 2007【440/ウ】
・『宇宙 (ポプラディア大図鑑WONDA)』青木 和光監修 ポプラ社 2013【440/ウ】
・『星と星座 (ポプラディア大図鑑WONDA)』渡部 潤一監修 ポプラ社 2012【443/ホ】
・『地球 (ポプラディア大図鑑WONDA)』斎藤 靖二監修 ポプラ社 2014【450/チ】
3.「グレートアトラクター」について書かれている一般書を探す
一般図書室の宇宙に関する分類440の書棚にある本を参照し、以下の記述を見つけた。
・『天文の事典』磯部 琇三編集 朝倉書店 2003【440.36/イシ】p.158
「(前略)うみへび-ケンタウルス座超銀河団から約30度離れた天の川の方向で、距離が約1.5倍の位置に、超銀河団に相当する巨大な質量集中があると考えられ、それはグレートアトラクターと呼ばれるようになった。以来今日まで、銀河の大規模な特異速度場の研究が多くなされているが、グレートアトラクターの実在性も含めて、十分信頼性のある描像は研究者の間でもまだ確立されていない。」とある。
・『オックスフォード天文学辞典』Ian Ridpath編 朝倉書店 2003【440.33/リア】p.127
「ウミヘビ座とケンタウルス座の方向にあり、われわれの銀河系を含めた周囲の銀河を引き付けている可能性があるといわれている物質の巨大集中場所。(中略)グレートアトラクターが位置すると想定される場所には確かに銀河が集中しているが、より最近の研究によると、観測されている銀河の運動はおそらくより遠方にある数個の銀河団の引力に由来するという。」
・『天文学大事典』天文学大事典編集委員会編 地人書館 2007【N440.33/テン】p.195-196
「リンデンベルら(「7人の侍」などとも呼ばれる)が、後退速度約7000㎞/s以内の約400個の楕円銀河の特異運動の観測を基に1988年に提唱した巨大重力源の名称。(中略)ただし、その後の同様の研究により、グレートアトラクター付近には確かに銀河の大集団はあるものの、銀河系を含め、周囲の銀河への重力的影響は、当初考えられていたほどは大きくないらしいことがわかってきた。なお、グレートアトラクターの領域はちょうど天の川の方向にあるため、銀河の分布を直接観測することは非常にむずかしい。」
- 事前調査事項
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『地球の大常識』(ポプラ社)p.19に「大規模な銀河系は、宇宙のある方向に向かって動き続けている」とある。
- NDC
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- 天文学.宇宙科学 (440)
- 参考資料
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安延尚文文 ; 県秀彦監修 , 安延, 尚文 , 縣, 秀彦. 宇宙の大常識. ポプラ社, 2005. (これだけは知っておきたい!, 20)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I001134562-00 , ISBN 4591085252 -
磯部琇三 [ほか] 編集 , 磯部, 琇三 , 佐藤, 勝彦 , 岡村, 定矩 , 辻, 隆 , 吉澤, 正則 , 渡邊, 鉄哉. 天文の事典. 朝倉書店, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002653353-00 , ISBN 4254150156 -
Ian Ridpath編 , Ridpath, Ian , 岡村, 定矩. オックスフォード天文学辞典. 朝倉書店, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I001805247-00 , ISBN 4254150172 -
天文学大事典編集委員会 編 , 地人書館. 天文学大事典. 地人書館, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008739114-00 , ISBN 9784805207871 -
青木和光監修 , 青木, 和光. 宇宙. ポプラ社, 2013. (ポプラディア大図鑑WONDA (ワンダ), 10)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I008636292-00 , ISBN 9784591136638 -
渡部潤一監修 , 渡部, 潤一. そうだいすぎて気がとおくなる宇宙の図鑑. 西東社, 2020.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I012190333-00 , ISBN 9784791628742
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安延尚文文 ; 県秀彦監修 , 安延, 尚文 , 縣, 秀彦. 宇宙の大常識. ポプラ社, 2005. (これだけは知っておきたい!, 20)
- キーワード
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- 宇宙
- 銀河系
- グレートアトラクター
- アンドロメダ銀河
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000298339