レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年03月31日
- 登録日時
- 2016/01/21 17:00
- 更新日時
- 2016/03/11 14:50
- 管理番号
- 埼熊-2015-092
- 質問
-
未解決
『日本民俗文化大系 8 村と村人』(網野善彦〔ほか〕編集 小学館 1984)p92および『御触書寛保集成』(高柳真三、石井良助編 岩波書店 1976)p734「1366」に、利根川や荒川沿いに家を建てることを禁じた触書がある。これ以前にも同様の触書があったのか知りたい。
- 回答
-
同様の触書があったか記述のある資料は見つからなかったが、関連する記述のあった次の資料を紹介した。
『御触書寛保集成』1366の触書は享保12年6月のもの。
「近世後期、霞ヶ浦の湖水環境と「水行直し」」(「人間環境論集 13(1)」p1-30 法政大学人間環境学会 2013)
《CiNii Articles》(http://ci.nii.ac.jp/naid/120005255388 国立情報学研究所 2015/03/20最終確認)
p3-4に、享保12年6月の触書が記載されていて、それと共に次のような記述あり。
「これまで百姓屋敷の建築を禁じているにもかかわらず、次第に屋敷が増加傾向にあり、これは出水の際に支障となるので、新屋敷を建設せず小屋であっても建てないように命じた。川通り堤外にも農民家屋が進出し、水害をより深刻化させていたことがわかる。」
触書以前にも、川沿いに家を建てることを禁じていた記述はあるが、触書等で禁じていたという記述はなし。
『事典しらべる江戸時代』(林英夫編 柏書房 2001)
p538「洪水」の項あり。寛文六年(1666)の「諸国山川掟」に関する記述あり。「この掟は全国向けではなく、畿内を対象とした大坂港維持のための淀川水系に係わるものといわれる」とあり。家屋に関する条文はないが、「川敷を圧迫しないように」といったことが書かれている。
『江戸時代』(大石慎三郎著 中央公論社 1977)p61にも関連する記述あり。
『近世農政史料集 1 江戸幕府法令』(児玉幸多編 吉川弘文館 1968)
p64上段(70)山川掟あり(寛文6年也午2月2日)御当家令条284号・徳川禁令考4022号
p71下段(77)「従此以前如被仰出、所々明地に家を作出儀、堅為御禁制之条、(後略)」とあるが川に関連があるかは触れていない。(寛文7年也 未10月22日)御当家令条388号・徳川禁令考1553号
p165上段(180)百姓新規家作〓新規商売停止其外之儀御書付に「一.諸国在々百姓、有来家居之外ニ、自今新規ニ家作致すへからす、(後略)」とあるが、川に関連があるかは触れていない。(享保7年寅11月)徳川禁令考2082号
- 回答プロセス
-
1 江戸時代の法令集
『御触書集成目録 上 事項目録』(石井良助編 岩波書店 2002)
p56「用水悪水堤川除新田等之部」を確認。質問文で取り上げた触書以前のものなし。
『御触書集成目録 下 編年目録』(石井良助編 岩波書店 2002)
p81上段に例示の触書あり。それより以前に出された触書の見出しを確認するが該当なし。
『徳川禁令考 別巻』(司法省大臣官房庶務課編 創文社 1961)
p62「棠蔭秘鑑 享(公事方御定書 下巻) 十 用水悪水并新田新堤川除等出入之事」を確認するが、質問に合致しない内容である。
『徳川禁令考 後集1』(司法省大臣官房庶務課編 創文社 1968)
p153に例示された触書については掲載あり。
『徳川禁令考 前集5』(司法省大臣官房庶務課編 創文社 1959)
「郊野専耕者法度」の項を確認するが、該当の記述なし。
『徳川禁令考 前集6』(司法省大臣官房庶務課編 創文社 1959)
p339に(4022)「諸國山川掟」あり。この触書が掲載されている第65章「除梗害蕃生利等統令」の章(4000)-(4029)を確認するが、該当なし。
『江戸町触集成 20(索引)』(近世史料研究会編 塙書房 2006)
〈荒川〉〈江戸川〉〈利根川〉〈小貝川〉〈川通〉〈堤外〉〈屋敷〉では該当なし。
〈家作〉〈家作り出し〉〈百姓地〉で年代が合うものを確認したが、該当なし。
『江戸町触集成 2 自天和二年至宝永二年』(近世史料研究会編 塙書房 1994)
p481「三八四一(元禄16年12月)」該当なし。
『江戸町触集成 1 自正保五年至延宝九年』(近世史料研究会編 塙書房 1994)
p16「四四(慶安3年11月)」該当なし。
『江戸町触集成 4 自享保五年至元文二年』(近世史料研究会編 塙書房 1994)
p257-258「六〇〇四(享保11年)」該当なし。
『近世法制史料叢書 2』(石井良助校訂並編集 創文社 1959)
p1-295「御当家令条」、p297-357「律令要略」、p308-309「四 堤井堰、用悪水、新田新堤」
いずれも該当なし。
2 利根川・荒川の歴史・治水関係の資料
『利根川治水考』(根岸門蔵著 崙書房 1977)
第8章利根川流域山林考p96に寛文6年丙午2月(四代将軍家綱時世)令シテ曰ク、「(中略)従前川ニ沿ヒタル原野等ニ田畑ヲ新開シ或ハ竹木葭萱ヲ植ヱ堤防ヲ新築シ川路ヲ狭小ナラシム可ラズ(後略)」とあるが建物については触れていない。
『近世農林政史料 1 公裁録』(地人書館 1963)
p114に例示された触書が掲載されているのみ。
『荒川 人文 荒川総合調査報告書 2』(埼玉県編 埼玉県 1987)
第2節治水と河川管理 p395-396に1666年(寛文6)に発した「諸国山川掟」についての記述あり。地域を限定しない直轄領代官宛のものと解説あり。p405にも「山川掟」についての記述があり、「幕府が農民たちに示した最初のまとまった河川関係法といってもよく」とあるが具体的な内容についての記述はなし。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 法制史 (322 9版)
- 河海工学.河川工学 (517 9版)
- 参考資料
-
- 「人間環境論集 13(1)」(法政大学人間環境学会 2013)
- 『事典しらべる江戸時代』(林英夫編 柏書房 2001) , ISBN 4-7601-2103-X
- 『江戸時代』(大石慎三郎著 中央公論社 1977)
- 『近世農政史料集 1 江戸幕府法令』(児玉幸多編 吉川弘文館 1968)
- キーワード
-
- 御触書
- 利根川
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 地名
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000187315