レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/05/11
- 登録日時
- 2016/12/04 00:30
- 更新日時
- 2016/12/04 09:17
- 管理番号
- 千県中参考-2016-27
- 質問
-
未解決
地方自治体が私債権を免除するにあたって債務者の「無資力」を理由とする場合、「無資力」とは具体的にどのような状態を指すのか、基準を知りたい。
- 回答
-
「無資力」の内容について、法的根拠をもって明示している資料は見つかりませんでした。しかし、地方自治法に関わる「無資力」の内容について検討している資料がありましたので、参考までにご紹介します(【資料1】)。また、民法に関わる「無資力」の内容について論じた資料がありました(【資料2】~【資料4】)。
【資料1】総務省「公金の債権管理回収業務に関する法令と実務」(岡山弁護士会:小寺立名)
p.28~30
地方自治法施行令第171条の6における「無資力又はこれに近い状態」について、「(1)換価可能な資産がなく、(2)生計を維持できるだけの収入がない」という状態を示しています。そして、このことを考える上での参考として、地方税法第15条の7第1項の規定を挙げています。さらに、地方税法第15条の7第1項第2号「滞納処分をすることにより生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」を考える上での参考として、国税徴収法基本通達(第153条関係:滞納処分の停止の要件等)を挙げています。
(参考)
国税庁「国税徴収法基本通達」「第153条関係:滞納処分の停止の要件等」
(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/chosyu/06/02/153/01.htm)
(生活の窮迫)
「3 法第153条第1項第2号の「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」とは、滞納者(個人に限る。)の財産につき滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収(以下「滞納処分の執行等」という。)をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(法第76条第1項第4号に規定する金額で営まれる生活の程度)になるおそれのある場合をいう」。
【資料2】法務省「法制審議会民法(債権関係)部会第39回会議」「部会資料35 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(7)」
p.4~7「2債権者代位権の基本的要件 ア無資力要件の要否及びその内容」(補足説明)
p.60~62「2詐害行為取消権の基本的要件 (1)無資力要件」(補足説明)
この部会資料は判例・学説の検証と改正への提案であり、現行法令の解説ではありません。
【資料3】『詳解・債権法改正の基本方針 2 契約および債権一般』(民法(債権法)改正検討委員会編 商事法務 2009)
p.415「債権者代位権 解説 無資力要件」
(脚注7)
「本提案では、「債務者にその資力が無いこと」という無資力要件の内容を「債務者がその負担する債務をその有する財産をもって完済することができない状態にあるとき(債務者が当該権利を行使しないことによって当該状態となる場合を含む。)としている。」
なお、本書は「民法(債権法)改正検討委員会が2009年3月末にとりまとめた成果のすべてであり、その最終報告書と呼ぶべきもの」(「刊行にあたって」より)ということです。
【資料4】日本大学法学部民事法・商事法研究会「「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」に対する意見」(『法学紀要』53号)p.359~425
p.371「第10 詐害行為取消権 2(1)イ」
(インターネット最終アクセス:2016年11月22日)
- 回答プロセス
-
自館の蔵書検索システムで件名「地方財政」「官庁会計」「債権回収」や全項目「自治体」「私債権」「債権管理」「無資力」で検索し、また自館の書架でNDC318(地方自治)やNDC349(地方財政)付近を確認しました。【資料3】のほか下記資料にもあたりましたが、目的の情報は見当たりませんでした。
『自治体私債権回収のための裁判手続マニュアル』(瀧康暢著 ぎょうせい 2013)
『Q&A自治体の私債権管理・回収マニュアル』(大阪弁護士会編集 ぎょうせい 2012)
『債権管理・回収の法律相談』(真和総合法律事務所編 学陽書房 2010)
『自治体職員が知っておきたい債権管理術』(大塚康男著 ぎょうせい 2010)
『債権回収法講義』(森田修著 有斐閣 2006)
続いて、国立国会図書館サーチやCiNii Articlesで同様のキーワードで検索しました。【資料4】のほか下記論文にもあたりましたが、目的の情報は見当たりませんでした。
片山直也「責任財産・無資力 民法」(『法学セミナー』50巻5号 2005.5)p.32~33
清水 恵介「民商法講座(43)債務者の無資力とその実体法的効力」(『民事法情報』207号 2003.12)p.44~52
林錫璋「債権者代位権と債務者の無資力」(『桃山学院大学経済経営論集』43巻1号 2001.6)p.69~104
天野弘「債権者代位権における無資力理論の再検討 上」(『判例タイムズ』23巻12号 1972.11)p.24~33
天野弘「債権者代位権における無資力理論の再検討 下」(『判例タイムズ』23巻14号 1972.12)p.34~46
検索エンジンで「無資力」「要件」「内容」「意味」等のキーワードで検索して【資料1】【資料2】を見つけました。
- 事前調査事項
-
『債権管理法講義』(大鹿行宏編 大蔵財務協会 2011)
p.202「債権の内容の変更、免除等」「1 債務者が無資力又はこれに近い状態にあるとき」(法24条1項1号)
本書は「国の債権の管理等に関する法律」に関する解説書。これによれば、「無資力状態とは、債務者がその生計を維持するに足る資力を有しない程度の生活状態にあることをいう。端的にいえば、債務者が生活保護法による扶助を受けているか、又はこれに準ずる程度の生活状態にある場合をいうものと考えてよい」とされている。
なお、本書収録の「国の債権の管理等に関する法律・同法施行令・債権管理事務取扱規則の三段対照表」には、関連する記述はない(p.307)。
『逐条地方自治法』(松本英昭著 学陽書房 2015)
p.998~1006「債権」
条文の解釈や運用について書かれているが、同法240条第3項や同法施行令171条の7第1項(p.1004)の条文において「無資力」の内容についての記述はない。
- NDC
-
- 地方自治.地方行政 (318 9版)
- 民法.民事法 (324 9版)
- 地方財政 (349 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】総務省「公共サービス改革(市場化テスト)」「第33回地方公共サービス部会 地方公共団体との研究会」(平成27年2月4日)「資料4 公金の債権管理回収業務に関する法令と実務」(岡山弁護士会:小寺立名)(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/koukyo_service_kaikaku/02shingi06_150204.html)
- 【資料2】法務省「法制審議会民法(債権関係)部会第39回会議」(平成24年1月17日)「部会資料35 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(7)」(http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900113.html)
- 【資料3】『詳解・債権法改正の基本方針 2 契約および債権一般』(民法(債権法)改正検討委員会編 商事法務 2009)(0106162626)
- 【資料4】日本大学法学部民事法・商事法研究会「「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」に対する意見」(『法学紀要』53号 2012.3)p.359~425(オープンアクセス)(http://ci.nii.ac.jp/naid/110008915505)
- キーワード
-
- 地方公共団体(チホウコウキョウダンタイ)
- 地方自治法(チホウジチホウ)
- 地方財政(チホウザイセイ)
- 官庁会計(カンチョウカイケイ)
- 債権(サイケン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 法情報,一般
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000200808