レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年6月22日
- 登録日時
- 2017/03/29 00:30
- 更新日時
- 2022/03/15 16:59
- 管理番号
- 県立長野-13-022
- 質問
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解決
栁宗悦の論文「地蔵菩薩のことなど」(『民藝』日本民藝協会 93号 1960年)で
・松本市(近在)では、地蔵尊より青面金剛の方が多い
・村によっては三十三観音の如き群像があって観音像が多い
としているが、それぞれ根拠となる資料はあるか。
- 回答
-
栁宗悦が参考にしたかは不明だが、以下を参考になる資料として紹介した。
1 青面金剛について記載のある資料
・『東筑摩郡誌 別篇第2 農村信仰誌』六人社 1943【N386/3】
「青面金剛」について第1章p.30に
「庚申刻像は二七五に上る多数が報告されて居り、道神碑中でも道祖神碑と共に興味あるもので
あるが、道祖神の形態の変化に富むに比し千篇一律で案外類型は尠(すくな)い。恐らく青面金
金剛と思はれる双手四手乃手六手の立像で、日月弓矢縄剣蛇玉等を持ち、獣を踏む形が一般的で、
(後略)」
とあり、項目がとられ像数が掲載されていて、その中には観音像の紹介も1例ある。全数が青面金剛か不明ではあるが、具体的な数値が掲載されていた。
また、p.23には文字碑の「青面金剛」類は12基あるとしていることから、上記と合わせ280基前後となると思われる。
「地蔵尊」については第二編第1章で、その分布と形態・形状、祭置場所、形態の変遷などが、調査した数に対するパーセンテージ(青面金剛のみ)と共に掲載され、p.309に
「(前略)「刻像碑」の中に「刻像碑で念仏供養塔として建立された事の明記されてゐるものは
三二個である。その内立軆像が二十基あり、(中略)地蔵が六躰、他は多く半伽思惟び如意輪観音
或いは彌勒と思はれるもの、又は聖観音の立像である。」
とある。
<論文発表以降に発行された資料だが、参考になる資料>
・『まつもとの石造文化財1-18』松本市教育委員会編 松本市教育委員会 1973-1979【N714/2/1-18】
松本地域の石造文化財の所在・形態・像の種類が掲載されている。
・宮田文武「松本市本郷地区における庚申考について」信濃 信濃史学会 第33巻1号 1981 p.89
松本市本郷地区の庚申塔一覧があり、青面金剛が含まれている。ただし、地蔵に関する記述はない。
2 三十三観音・観音像について記載のある資料。
1と同じ論文「地蔵菩薩のことなど」『柳宗悦全集』19巻 柳宗悦著 筑摩書房 1982【750.8/6/19】p.693に
「村によって観音像が大変多い処もあるが、それは「三十三観音」の如き群像があるためなのだ
が、(後略)」
とあり、これを補足する資料を調査する。
論文では「三十三観音」の如きとあるが、実際に群像は設置されていたようである。
柳宗悦氏の論文で参考にしたと思われる資料は見つからなかった。
<論文発表後に作成された資料だが、参考になる資料>
・『松本平の石神石仏考』 三村邦夫/著 柳沢書苑 1978年【N387/24】p.47-52「Ⅻ巡礼札所仏と巡礼供養碑」によると、
各地巡礼を行うのは大変困難だったため、札所巡礼の各霊場の本尊仏をかたどった札所石仏がつ
くられ、筑南地方にはそういう石仏が多く確認されている
とあり、数が掲載されている。
西国三十三所 9か所
西国坂東秩父の観音三札所、すなわち観音百札所 3か所 ※秩父は三十四札
この他不明のもの 3か所
この資料には群像の写真も掲載されている。
・『まつもとの石造文化財1-18』 松本市教育委員会【N714/2/1-18】
18巻p.8から松本市の観音像についての解説がある。特にp.13からは三十三所観音、百番観音について解説され、写真が掲載されている。
p.14に三十三観音や百番観音について、
「西国坂東秩父の三十三所観音の全部即ち百番観音を巡礼すれば更に良い功徳が得られるとされ
たが、実際には困難であるため、石仏として一ヶ所に集めて造立されるようになった」
とあり、13か所を掲載しているが、「等」とも書かれているため、これ以外にも設置されている場所があるようである。
なお、この資料は、上記の三十三観音像・百番観音像以外の松本市域の観音像についても解説されている。
- 回答プロセス
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1 『民藝』は当館で所蔵していないが、国立国会図書館サーチで検索した結果、国立国会図書館デジタルコレクションで参加館公開されているほか、『柳宗悦全集 第19巻』に収録されていることがわかった。本文を確認したところ、参考文献等の記載はなかった。【最終確認:2021.12.10】
2 栁宗悦のほかの論文に記載がないか『栁宗悦全集』を確認する。7巻p.610「信州東筑の石彫」に
「信州の民間石彫についても、東筑摩郡の分は既に報告が一冊の単行本にまとめられてある。(中略)只何郡の何村には、何の彫刻が何體あつて、それがどういふ民間信仰と繋がりがあるかということが報告してあるだけである。」
とある。
3 2から当館の蔵書で東筑摩郡に関する資料の中から民間信仰や石仏関連の資料を検索する。
検索結果から2の論文が昭和30年発表のため、それ以前に書かれたものを確認する。
- 事前調査事項
- NDC
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- 工芸 (750 10版)
- 石彫 (714 10版)
- 年中行事.祭礼 (386 10版)
- 参考資料
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柳 宗悦/著 , 柳‖宗悦. 柳宗悦全集 第7巻. 筑摩書房, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I015658721-00 (【750.8/6/7】) -
柳 宗悦/著 , 柳‖宗悦. 柳宗悦全集 第19巻. 筑摩書房, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I011510948-00 (【750.8/6/19】) -
信濃教育会東筑摩部会/編 , 信濃教育会東筑摩部会. 東筑摩郡誌 別篇第2. 六人社.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059338648-00 (【N386/3】) -
松本市教育委員会社会教育課/編 , 松本市教育委員会社会教育課 , 松本市教育委員会社会教育課. まつもとの石造文化財 資料編 1-18 松本市教育委員会, 1973-1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059269093-00 (【N714/2/1~18】) -
三村邦雄 著 , 三村, 邦雄. 松本平の石神石仏考. 柳沢書苑, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001396637-00 (【N387/24】) - 宮田文武. 松本市本郷地区における庚申考について. 信濃史学会, 1981. 信濃 第33巻第1号
-
柳 宗悦/著 , 柳‖宗悦. 柳宗悦全集 第7巻. 筑摩書房, 1981.
- キーワード
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- 青面金剛
- 三十三観音
- 庚申
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000212957