レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年6月5日
- 登録日時
- 2020/07/09 10:22
- 更新日時
- 2020/11/26 13:26
- 管理番号
- 県立長野-20-031
- 質問
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解決
伊那市東春近の地名「渡場(どば)」のいわれを知りたい。
- 回答
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『地名「渡場」の由来』 のp.5に、「地名『渡場』の由来」という項があり、いわれについての記載がある。
ここでは、『長野県の地名 その由来』 p.435-437、『上伊那の地名 その由来』 p.31-33を引いて
「渡場」という地名の「渡=ど」は川と河を渡る所を意味し、
「場」は場所を意味することばで渡河点(=とがてん)と同義語である。
江戸時代前は河の合流点を渡る場所を『渡場』といっていたが、江戸時代になって、
渡河点を意味する「渡場」が合流点に位置しているため、合流地点に木材を集積しておく
場所を「どば」と呼ぶようになった。
としている。
また、『知っておきたいふるさと伊那 第2集』 p.209-213を引いて、
渡場という地名は奥地で建築用の木材や榑木材(くれきざい)を切り出して、川を下し、
木挺場に上げて置き、役人の指図で天竜川に入れ、目的地まで流し運び、その上げ置いた
材木を天竜川に入れることを「渡入れ」といい、渡入れをする場所を渡場と名付けられた。
東春近の渡場の地名もたいへん古く、意味のある地名である。(-後略-)
と、紹介している。
さらに、「渡場」の地名は木川と木挺場に深くかかわりがあるとして、『東春近村誌』 p.640-642に掲載されている細田義一氏の「木川と木挺場」を紹介している。
『地名「渡場」の由来』p.5では、木川は、現在は用水路となっており、木挺場の跡地は茱萸(ぐみ)島集会場と紹介している。木川および茱萸(ぐみ)島は、現在の国土地理院の地図(電子国土web)には名称の記載は見当たらない。
『東春近村誌』では、p.130-131の「村の地名」に、島・原にかかわる地名として、渡場を挙げている。p.629-642では、通船と筏についての節があり、p.640-642の前掲の細田義一氏の「木川と木挺場」も含まれている。
『伊那市史 歴史編』 p.1102-1108にかけて、通船と渡船について触れている部分がある。渡場については触れられていない。
『高遠町誌 上巻』【N242/79/1-2】の林業の節のp.130では、
(-前略-)川の湾曲のよどみに貯木できる場所を渡(ど)と言う。
(-中略-)三峰川・天竜川・小黒川の合流点より少し下がって東春近渡場も材木渡場であった。
という記述があった。p.136には、「三峰川、天竜川流域略図(徳川林政史研究紀要参考)」という図があり、管流れ筏の経路が示されている。
- 回答プロセス
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1 国土地理院2万伍せ分の1地図で場所を確認する。利用者の問い合わせのとおり、伊那市東春近 付近で「渡場」の地名表記を見つける。
2 東春近 は、現・伊那市にあたるので、『伊那市誌』および『東春近村誌』を確認していく。
3 南信地域の史誌が配架されているN234周辺の棚で、実際に資料を探す。『地名「渡場」の由来』を始めとする東春近の地名のシリーズ本を発見する。これに、先行研究を含めて、詳しい調査が掲載されている。
<調査資料>
・『地名「渡場」の由来』 東春近渡場地名調査の会 2013 【N242/251/3】
・『長野県の地名 その由来』 松崎岩夫著 信濃古代文化研究所 1991 【N293/23】
・『上伊那の地名 その由来』 松崎岩夫著 ほおずき書籍 1999 【N242/142】
・『知っておきたいふるさと伊那 第2集』 ほおずき書籍 1990 【N242/102/2】
・『東春近村誌』 東春近村誌編纂委員会 東春近村誌刊行委員会 1972 【N242/52】
・『伊那市史 歴史編』伊那市史編纂委員会編 伊那市史刊行会 1984 【N242/86/3】
・『高遠町誌 上巻』【N242/79/1-2】
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 10版)
- 中部地方 (215 10版)
- 参考資料
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地名「渡場」の由来. 東春近渡場地名調査の会. ([伊那市古い地名調査報告書] : [3])
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I091585061-00 (【N242/251/3】) -
松崎岩夫著 , 松崎, 岩夫. 長野県の地名その由来. 信濃古代文化研究所, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I009202097-00 (【N293/23】) -
松崎岩夫著 , 松崎, 岩夫. 上伊那の地名その由来. ほおずき書籍, 1999.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I006574166-00 , ISBN 4795286469 (【N242/142】) -
東春近村誌編纂委員会 編. 東春近村誌. 東春近村誌刊行委員会, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002576134-00 (【N242/52】)
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地名「渡場」の由来. 東春近渡場地名調査の会. ([伊那市古い地名調査報告書] : [3])
- キーワード
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- 地名
- 長野県‐地名
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000284405