レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年04月16日
- 登録日時
- 2023/04/23 11:26
- 更新日時
- 2023/05/02 11:51
- 管理番号
- 9000038767
- 質問
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解決
甲府駅前にあった水晶の噴水塔が設置されたときの状況と、撤去されたときの状況について知りたい。甲府市webサイトでは「ある電気メーカーから寄贈された」とあるが、その経緯などがわかるか。
- 回答
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1.設置の経緯について
・1960(昭和35)年のはじめに某大手メーカーが「甲府駅前に噴水池を作り寄贈したい。施設費は全額負担する」と申し入れてきた。
・しかし、駅前は市が管理しているが県有地に含まれている公共広場であるため、メーカーの名を噴水に大きく書き込まれ、一見しただけで広告噴水という印象を県民に与えてはこまるので、市当局は慎重に同メーカーと話し合ってきた。
・8月17日の甲府市議会では、(1)会社のマークを目立たないようにする、(2)完成後に要する電力などの維持費(年間26万8千円)を会社側で負担する、の2点を条件に了承を得た。
・メーカーのマークと社名を書き入れた広告板の大きさをめぐって工事が遅れていたが、県・市当局・業者の話し合いがついたので、9月9日に着工した。
・10月17日に完成し、供用開始。
2.撤去の経緯について
・噴水の撤去は、日本国有鉄道東京西鉄道、山梨県、甲府市、甲府商工会議所の4者で行った「甲府駅近代化事業」の中で行われた。
・噴水を撤去することについては、1985(昭和60)年8月1日の第8回甲府駅前広場整備検討委員会で決定された。甲府駅前広場の整備については、県単独整備費が60年9月の補正予算で認められている。
・昭和60年10月29日付けの「山梨日日新聞」記事には、11月初旬には噴水を移転すると書かれているが、これ以降、噴水の撤去について記されている新聞記事は確認できなかった。
- 回答プロセス
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1.『山梨県史』『甲府市史』を調査
2.噴水の設置について調査
(1)山梨日日新聞マイクロフィルム
・「甲府駅前に新名物 噴水塔計画本決まり」(「山梨日日新聞」昭和35年8月18日 7面)
甲府駅前広場のロータリーに噴水塔を建てる計画が本決まりとなり、10月中に完成予定。工賃800万円。この噴水塔はある有力会社が宣伝用に計画したもの。広場は原則として公共施設以外の宣伝用の看板塔など一切許可しない方針をとってきたので、計画は一時だめかと思われたが、会社側の熱意と会社のマークを目立たないように考慮する、建設物はすべて市に寄付することでとの条件で許可することになった。17日の市議会で(1)マークを目立たないようにする、(2)完成後に要する電力などの維持費(年間26万8千円)を会社側で負担する、の2点を条件に了承を得、今日18日に開かれる駅前広場管理委員会の了解を求める。噴水塔のイラストあり。
・「話題の広場 甲府駅前の噴水塔近く完成」(「山梨日日新聞」昭和35年10月15日4面)
甲府駅前ロータリーの噴水塔建設工事は順調に進み、お目見えする日も近い。市都市計画課では、市制祭の17日に水を上げる予定だが、建設スポンサーからの照明器具輸送が遅れているため、20日前後に延びるとのこと。「完成間近い駅前広場の噴水塔」の写真。
・「10メートルのしぶき 甲府駅前の噴水塔完成」(「山梨日日新聞」昭和35年10月18日7面)
市制祭に間に合わせようと突貫工事で仕上げを急いでいた甲府駅前ロータリーの噴水塔が17日に出来上がった。ある電機メーカーの宣伝をかねた贈り物。「甲府駅前ロータリーにでき上がった噴水塔」の写真あり。
(2)山梨時事新聞マイクロフィルム
・「甲府駅前に水晶噴水 夜もヒカリの帯 表玄関飾るデラックス版」(「山梨時事新聞」昭和35年8月13日6面)
甲府駅前にシンボルとなる営造物を設ける計画は数年前から市内の観光団体から出され、市商工観光課が実現に努力してきた。複雑な事情から計画が延び延びになっていだが、今年の初めから再び具体化し、某大手メーカーが「甲府駅前に噴水池を作り寄贈したい。施設費は全額負担する」と申し入れてきた。しかし、駅前は市が管理しているが県有地に含まれている公共広場であるため、メーカーの名を噴水に大きく書き込まれ、一見しただけで広告噴水という印象を県民に与えてはこまるので、市当局は慎重に同メーカーと話し合ってきた。その結果、噴水池の前に作られる幅5メートルの円形緑地帯の中に、メーカーのマークと社名を英文で書き入れた90cm×40cmの標識を建てることで了解が付いた。建設費は800万円。市当局は17日に開かれる市議会産業経済部委員会に了承を求めることとした。
・「噴水塔きょう着工 甲府駅前」(「山梨時事新聞」昭和35年9月9日6面)
甲府駅前ロータリーに新設される水晶噴水塔は、広告版の大きさをめぐって工事が遅れていたが、県・市当局・業者の話し合いがついたので、9日から工事に取りかかり、来月25日に完成する。寄贈者側の某メーカーは、同噴水塔の周囲4カ所に社名とマーク入りの広告版(40cm×90cm)を建てるのが条件になっていたが、県側は甲府駅前に建てる広告版としては大きすぎるので20cm×30cmに縮小すべきだと主張。メーカー側は小さすぎると反論してきたが、25cm×40cmで折り合いがついた。
・「デラックス噴水、完成近し 甲府駅前にニジの噴水」(「山梨時事新聞」昭和35年10月13日7面)
甲府駅前に作られている噴水がいよいよ最後の仕上げにかかり、美しい姿を市民の前に現し始めた。12日は人口水晶の山がセメントで塗り込められる工事が行われ、人口水晶の美しさに道行く人も目をみはっていた。係では市制祭りまでに完成したいと工事を急いでいる。「完成間近い水晶噴水」の写真あり。
・「甲府駅前に水晶噴水 新しい名物お目見え」(「山梨時事新聞」昭和35年10月18日7面)
甲府駅前ロータリーに建設中の水晶噴水塔が17日から13本の水条を吹き上げた。ちょうどこの日は甲府市制施行71周年記念日にあたったため、市制祭見物客や観光客も目をみはっていた。建設費は800万円。「噴水をはじめた甲府駅前の水晶噴水塔」の写真あり。
3.噴水の撤去について調査
(1)「広報こうふ」1980年3月~1986年12月
・「フォトニュース」(「広報こうふ」1981年5月No.304p.7)〈資料番号0201528460〉
昭和56年3月27日、日本国有鉄道東京西鉄道管理局長、望月山梨県知事、河口甲府市長、商工会議所会頭の4者間で「甲府駅近代化に関する基本的合意事項」の覚書を交換。
・「甲府駅の近代化 永年の夢、60年には実現」(「広報こうふ」1982年1月No.312p.4)〈資料番号0201529161〉
昭和56年3月27日、南北自由通路、橋上駅舎、駅ビル建設の3点セットを基本とする覚書を交わし、折衝を経て、昭和56年12月1日、商業規模を骨子とした第2回覚書
・「フォトニュース」(「広報こうふ」1982年11月No.322 p.5)〈資料番号0201529161〉
昭和57年10月7日、甲府駅舎建設に伴う国鉄と甲府市との工事協定
・「フォトニュース」(「広報こうふ」1983年2月No.325 p.5)〈資料番号0201529161〉
昭和57年12月24日、甲府駅近代化の橋上駅舎、南北自由通路の建設を担当する国鉄東京第二工事局甲府工事区が開区
・「フォトニュース」(「広報こうふ」1983年4月No.327 p.5)〈資料番号0201529161〉
昭和58年3月3日、甲府駅南口舞鶴橋脇で甲府駅改良工事起工式
・「この夏、甲府駅の新しい時代が始まる」(「広報こうふ」1984年8月No.343 pp.2-3)〈資料番号0201530029〉
昭和59年8月21日、橋上駅舎、南北自通路が使用開始。
(2)「山梨日日新聞縮刷版」昭和60年8月~昭和61年8月
・「南口 今月にも着工 甲府駅広場整備検討委 レイアウト案了承」(「山梨日日新聞」昭和60年8月2日13面 縮刷版p.37)
甲府駅前広場整備検討委員会(座長・小倉健県土木部技監)は1日、甲府市役所で第8回委員会を開き、県から示された南口広場の最終レイアウト案を基本的に了承。噴水の撤去が新たに確定。工事期間は約1年で、新設分にあたる広場西側から着手し、61年8月に完成予定。
・「月末にも整備に着手 甲府駅南口広場 来年夏の完成目指す」(「山梨日日新聞」昭和60年8月18日13面 縮刷版p.365)
県は8月末か9月上旬に甲府駅南口広場の整備工事を発注し、来年8月の完成を目指す。
・「甲府駅前広場を整備 県補正予算の主要事業」(「山梨日日新聞」昭和60年9月21日2面 縮刷版p.438)
甲府駅前広場県単独整備費(4億5134万4000円)広場、歩道、タクシー乗り場などを整備。最終工期は来年8月。
・「華やか県都の“顔” 甲府駅ビル 6日にオープン」(「山梨日日新聞」昭和60年10月1日1面 縮刷版p.1)
県都の新しい玄関となる甲府駅ビル「エクラン」は建設工事をほぼ終え、6日のオープンを待つばかりとなっている。近く甲府駅南口北口の広場整備も本格的に始まる。
・「甲府駅ビル 「エクラン」が落成 年商60億円を目指す」(「山梨日日新聞」昭和60年10月5日6面 縮刷版p.90)
甲府駅ビル「エクラン」が4日落成した。
・「甲府駅ビル特集」(「山梨日日新聞」昭和60年10月6日21~27面 縮刷版pp.129-135)
27面には「甲府駅82年の歩み」
・「来年夏めざし起工式 一新する甲府駅南口 信玄さんは中央広場に」(「山梨日日新聞」昭和60年10月29日14面 縮刷版p.622)
28日甲府駅南口広場の起工式が行われた。県が事業主体となって貨物ヤード跡地に信玄公像を中心とした中央広場、自家用車乗降場、駐輪スペースを建設し、駅中央にはタクシー乗り場、東側にバス乗り場を配置する。11月初旬には現広場の噴水、樹木を移転し、人や車が通行するゾーンも部分的に変更させながら工事をする。信玄公像は現在地から撤去し腐食の状況などを検査中で、今年中に新しい中央広場に配置する。信玄公像跡地には新広場のシンボルとなるケヤキを植える予定。
・「ピカピカ信玄公像 新しい台座に設置」(「山梨日日新聞」昭和60年11月27日13面 縮刷版p.569)
甲府駅前広場の改修のためドッグ入りしていた信玄公像が、26日、修理、化粧を終え約2か月ぶりに新しい台座に設置された。
・「中央線」(「山梨日日新聞」昭和61年3月9日15面 縮刷版p.187)
生まれ変わりつつある甲府駅南口に8日、大きなケヤキの木がお目見えした。
・「甲府駅前広場が完成 平和通りの舗道も衣替え」(「山梨日日新聞」昭和61年7月23日10面 縮刷版p.526)
甲府駅南北広場の整備が終わり8月18日、完成式が行われる。
・「甲府駅前広場の完成祝う 国体選手らの歓迎OK」(「山梨日日新聞」 昭和61年8月19日1面 縮刷版p.373)
かいじ国体夏季大会を目指して整備していた甲府駅南口・北口広場が完成し18日完成式が行われた。
(3)「山梨日日新聞縮刷版データベース」※1989年以降の記事が検索可
・「水晶の街象徴復活へ 昇仙峡に“甲府駅の噴水”再現 来月完成「新たな名所に」」(「山梨日日新聞」2019年 (令和1年) 9月15日 (日)23面)
昭和の半ばから後半に国鉄(現JR)甲府駅南口のロータリーにあった水晶を模した噴水塔を昇仙峡で復活させようと計画し、10月中に完成する予定。甲府駅南口には1960年に水晶噴水塔(池の直径約15メートル)が設置されたが、かいじ国体(86年)に合わせた駅舎建て替えに伴い85年に解体。駅前噴水塔の水晶は光学ガラスによる模造品だったが、昇仙峡の噴水塔には本物の原石を使用する。
(4)「ザやまなし」1895年6月創刊号〜12月号、1986年1月~6月
※いずれも噴水塔についての関連記述なし
(5)「情報山梨」昭和60年3月号~昭和61年12・月合併号
・「今年10月の完成をめざす甲府駅ビルも外観はすでに姿を現し…」(「情報山梨」昭和60年7月号表紙)※噴水塔が写っている写真
・「甲府駅前の整備工事は順調に進んでいる」(「情報山梨」昭和61年3月号表紙)※噴水塔が撤去され、跡地が残っている写真
(6)「広報資料」(山梨県公聴広報課)昭和58年2月号〜昭和60年12月号、昭和61年1月号〜12月号
※いずれも噴水塔についての関連記述なし
(7)『山梨県議会定例会会議録』(山梨県議会/編)昭和60年9月、12月
・『山梨県議会定例会会議録 昭和60年9月』p.23、p.38、p.53に甲府駅前広場についての質問・回答あり。
・『山梨県議会定例会会議録 昭和60年12月』p.77、p110、p.121に甲府駅前広場についての質問・回答あり
(8)商工会議所の歴史
・『甲府商工会議所八十年史』(芳賀和夫/編 甲府商工会議所 1990年)
pp.619-626「甲府駅近代化構想とその展開」に、昭和30年代からの甲府駅近代化構想の経緯が詳述。
・『甲府商工会議所百二十年史』(芳賀和夫/編集 甲府商工会議所 2001年)pp.245-249「甲府駅近代化の推進」に、昭和57年からの経緯の記述。
- 事前調査事項
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甲府市webサイト「甲府のシンボルだった噴水塔」https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/kamejii/045.html ※2022.5.6最終確認
- NDC
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- 日本 (291 10版)
- 参考資料
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- 「山梨日日新聞」 昭和35年8月18日 (7面)
- 「山梨日日新聞」 昭和35年10月15日 (4面)
- 「山梨日日新聞」 昭和35年10月18日 (7面)
- 「山梨時事新聞」 昭和35年8月13日 (6面)
- 「山梨時事新聞」 昭和35年9月9日 (6面)
- 「山梨時事新聞」 昭和35年10月13日 (7面)
- 山梨日日新聞社. 山梨日日新聞縮刷版 昭和60年8月号 (p.37)
- 山梨日日新聞社. 山梨日日新聞縮刷版 昭和60年10月号 (p.622)
- キーワード
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- 甲府駅前広場
- 水晶噴水塔
- 噴水塔
- 甲府市近代化事業
- 甲府市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 新聞記事においては、寄贈した大手電機メーカーの会社名は書かれていないが、甲府市の古い写真が掲載されている写真集を確認したところ『甲府物語:市制100周年記念 写真集』(「写真集甲府物語」編集委員会/企画・編集 甲府市 1990年)〈資料番号0106794167〉p.27に掲載の噴水塔の写真には広告板が写っており、広告版にはロゴマークに「日立」と書かれている。また、『甲府市の昭和:写真アルバム』(樹林舎 2016年)〈資料番号0106739733〉p.101の写真には、ロゴマークに「Hitachi」と書かれた広告版が写っている。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000332373