レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年9月16日
- 登録日時
- 2016/09/16 18:28
- 更新日時
- 2016/10/17 17:59
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 右中-郷土-91
- 質問
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解決
伊藤若冲が描いた「竹図(たけず)」の図版と解説が見たい。
- 回答
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竹図は,京都市北区にある鹿苑寺(ろくおんじ・通称金閣寺)の大書院障壁画の一つで,各縦168.3cm,横93cmの襖四面に,竹が描かれた水墨画です。
【資料1~3,6,9,11~12】では襖四面,【資料5,7~8】では襖四面のうち二面が掲載されています。
大書院は,貞享年間(1684~1688)に建立されました。その後,宝暦9年(1759),龍門承猷(りゅうもんじょうゆう)が住持となった記念に,その師にあたる梅荘顕常(ばいそうけんじょう・大典禅師)が,当時交友関係にあった若冲へ依頼し,同年障壁画が描かれました。五室ある大書院の,一から四の間には松鶴や葡萄図など,そして入口にあたる挟屋の間(さやのま)に竹図が描かれています。
竹は下から上へ,筆を動かす反動を活かして勢いよく表され,また竹の幹は楕円形の節でつなぎ,力強い生命力を象徴するかのように,一本一本描かれています。また,襖の上部に見られる竹の葉は,場所によっては濃淡の差をつけた墨を使用し,三角形の点で細かく筆を入れて表現されています。
現在,竹図を含む大書院障壁画は,国の重要文化財に指定されており,昭和59年(1984),本山相國寺(しょうこくじ)境内にある承天閣美術館(じょうてんかくびじゅつかん)が設立された際に,全て移管,保存されています。【資料10】
- 回答プロセス
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●“伊藤若冲”をキーワードに当館所蔵資料を調査する・・・【資料1~3】
【資料1】“挟屋の間に「竹図」~これらの障壁画(全部で五十面に及ぶ)が宝暦九年(一七五九)の十月に制作成ったことが知られる”
●美術全集に収録された索引【資料4】から図版を探す・・・【資料5~8】
【資料6】“かき消える幹は,葉の茂みに隠れる幹を示す表現の翻案であり,側筆(筆をかさねて穂の腹で描くこと)を用いた小さい三角形の竹葉の重なりによる茂みの表現をみても,牧谿(もっけい)筆「観音猿鶴図(かんのんえんかくず)」に描かれる竹林の表現が,本図の竹のとらえ方,葉の見方の大前提にあることは確かなのであろう”
【資料8】“『松鶴図』東側北寄りの面に自筆の句と落款があり,障壁画が完成したのは宝暦九年十月,若冲四十四歳の年であったことがわかる”
●鹿苑寺に関する資料より・・・【資料9~10】
【資料9】“この部屋(挟屋の間)は客間への玄関の機能を果たしていたことから,竹という画題は,古来玄関に描かれることが多い竹虎図を翻案したものと考えられる”
【資料10】“大典の参禅の弟子龍門承猷が,宝暦九年(一七五九)鹿苑寺七世住持として入寺するおり,その記念に,大典の斡旋により若冲が描いたものである”
●相國寺承天閣美術館に関する資料より・・・【資料11】
【資料11】“このような描法については,『八種画譜』や『芥子園画伝』などの手本を咀嚼したとする説,大徳寺に蔵される牧谿(もっけい)筆の国宝「観音猿鶴図」の変奏と捉える説など,紛々としている”
●障壁画に関する資料より・・・【資料12】
【資料12】“ 玉座の間(一之間)は葡萄図,二之間は松鶴図,三之間は芭蕉鴉図,四之間は菊・秋海棠・鶏図,挟屋の間は竹図という画題で構成され,~”
●重要文化財に関する資料より・・・【資料13】
【資料13】“大書院障壁画 伊藤若冲筆 宝暦九年 昭和34年6月27日指定 紙本墨画竹図(入側)襖貼付四”
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本画 (721)
- 各宗 (188)
- 芸術政策.文化財 (709)
- 参考資料
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- 【資料1】『若冲 特別展覧会没後200年,文化財保護法50年記念事業』 (伊藤 若冲/[画] 京都国立博物館/編集 京都国立博物館 2000) 図20“襖四面と二面拡大”,p331解説
- 【資料2】『若冲』 (伊藤 若冲/[画],狩野 博幸/監修・執筆 紫紅社 1993) 図163“襖四面”
- 【資料3】『伊藤若冲大全』 (伊藤 若冲/[画],京都国立博物館/編集,小学館/編集 小学館 2002) 図170“襖四面”
- 【資料4】『日本美術作品レファレンス事典 絵画篇 近世以前』 (日外アソシエーツ株式会社/編集 日外アソシエーツ,紀伊國屋書店(発売) 1998) p573~574“若冲,伊藤若冲 竹図”,p574“伊藤若冲 竹図襖”
- 【資料5】『日本美術絵画全集 第23巻 若冲 蕭白』 (座右宝刊行会/編 集英社 1977) 図30“全四面うちニ面”,p132解説
- 【資料6】『水墨画の巨匠 第9巻 若冲』 (講談社 1994) 図22“襖四面”,p102解説
- 【資料7】『水墨美術大系 第14巻 若冲 蕭白 蘆雪』 (講談社 1979) 図28“襖四面うちニ面”
- 【資料8】『花鳥画の世界 7 文雅の花・綺想の鳥』 (学研 1983) 図68“襖四面うちニ面”,p133解説
- 【資料9】『大本山相国寺・金閣・銀閣寺宝展』 (大本山相国寺創建六百年/金閣寺創建六百年/銀閣寺創建五百年 北海道立近代美術館/ほか編集 北海道新聞社 1998) 図70“襖四面”,p161~162解説
- 【資料10】『古寺巡礼京都 21 金閣寺 新版』 (淡交社 2008) p135“重要文化財 鹿苑寺大書院障壁画 伊藤若冲筆”
- 【資料11】『若冲展 開基足利義満六〇〇年忌紀念』 (相国寺承天閣美術館/ほか編 日本経済新聞社 2007) 図15“襖四面”,p191~192解説
- 【資料12】『障壁画史』 (水尾比呂志/著 美術出版社 1978) 図91“襖四面”
- 【資料13】『国宝・重要文化財大全 別巻 所有者別総合目録 名称総索引 統計資料』 (文化庁/監修 毎日新聞社 2000) p183“鹿苑寺 大書院障壁画” 図版なし
- キーワード
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- 伊藤若冲
- 鹿苑寺
- 重要文化財
- 相國寺承天閣美術館
- 障壁画
- 水墨画
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000197041