レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/01/28
- 登録日時
- 2022/03/16 00:30
- 更新日時
- 2022/03/16 00:30
- 管理番号
- 6001054602
- 質問
-
解決
饅頭を守護する守護神が奈良にいると聞いた。どんな神様か、どんな由来があるかを知りたい。
- 回答
-
調査の結果、「林浄因(りんじょういん)」という実在した人物が饅頭の守護神としてまつられていることが分かった。
次の資料に記載がある。
・『パン (ものと人間の文化史 80)』(安達巌/著 法政大学出版局 1996.5)
p.172
林浄因は「饅頭づくりの名手でもあった。そこで彼はいまの奈良市漢国町林小路に住居して、生業のため饅頭を売り出した。その跡にいまこの林浄因を祭神とする林神社が建っていて、この神は日本の菓祖神として崇められている」とある。
・『日本神祇由来事典』(川口謙二/編著 柏書房 1993.10)
p.496-497「林浄因」
奈良市に漢国神社という神社があり、その境内末社に林神社があって、その林神社の祭神が林浄因である。
そして「林神社は、饅頭の守護神として、塩瀬総本家はもちろん、全国の菓子製造業者に信仰されている」とある。
林浄因が饅頭の神様としてまつられるようになった経緯は以下の資料に記載があった。
・『奈良県史 13 民俗 下』(奈良県史編集委員会/編集 名著出版 1988.11)
p.98
「日本における饅頭の開祖である浄因が、饅頭の神様としてまつられ、林神社が創建されたのは昭和二十四年のことである。漢国神社の境内に饅頭塚とよばれる塚がある。それは浄因が生前に、饅頭製造者や林家の発展を祈念して紅白の饅頃を埋めて封土を盛った塚であるといい、その因縁をもって漢国神社の和田宮司のよびかけで、全国の生菓子製造業者の協力によってはじまり、昭和三十一年には社殿も造営された」
・『日本の食生活全集 29 聞き書 奈良の食事』(「日本の食生活全集 奈良」編集委員会/編集 農山漁村文化協会 1992.10)
p.312-313「林神社の饅頭祭り」
林浄因の「店が漢國神社の社頭にあったことから、漢國神社の境内に祭られることになった」。
歴史上の人物としての林浄因については以下の資料に記載があった。
・『華僑・華人事典』(「可児弘明/[ほか]編 弘文堂 2002.6)
p.837「林浄因」
1349(貞和5)年に来日したこと、饅頭が宮中に献上され、後村上天皇の御嘉賞を受け宮女を賜ったこと、子孫は饅頭屋を続け、のちに京都に移ったことなど、生涯の概略が記載されている。
・『咄・雑談の伝承世界:近世説話の成立』(小林幸夫/著 三弥井書店 1996.6』
p.340-344 (二)饅頭屋 林宗二
「御伽百物語」の伝える林浄因の逸事を紹介している。また林浄因の子孫の系図も記載されている。
なお「御伽百物語」所収の逸事については以下の資料で全文が確認できる。
・『珍本全集. 下卷』(博文館編輯局/校訂 博文館 1895)
コマ番号:35-36 「奈良饅頭」
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1882915/35 (2021/01/28 確認)
・『鬼の太平記:まんじゅう伝来史』(沢史生/著 彩流社 1992.11)
全編にわたり、林浄因及びその一族、周辺人物や時代背景などについて考察している。
[事例作成日:2022年1月28日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 神衹・神道史 (172 10版)
- 衣食住の習俗 (383 10版)
- 参考資料
-
- パン 安達/巌∥著 法政大学出版局 1996.5 (172)
- 日本神祇由来事典 川口/謙二∥編著 柏書房 1993.10 (496-497)
- 奈良県史 13 奈良県史編集委員会∥編集 名著出版 1988.11 (98)
- 日本の食生活全集 29 農山漁村文化協会 1992.10 (312-313)
- 華僑・華人事典 可児/弘明∥編 弘文堂 2002.6 (837)
- 咄・雑談の伝承世界 小林/幸夫∥著 三弥井書店 1996.6 (340-344)
- 鬼の太平記 沢/史生∥著 彩流社 1992.11
- https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1882915/35 (珍本全集. 下卷)
- キーワード
-
- 林浄因(リンジョウイン)
- 饅頭(マンジュウ)
- 日本の神(ニホンノカミ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物・団体
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000313680