レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月01日
- 登録日時
- 2020/12/23 16:35
- 更新日時
- 2020/12/23 16:35
- 管理番号
- 市川20200901-04
- 質問
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未解決
『荷風全集 第23巻 初版』(岩波書店 1963)p.174の「断腸亭日乗」昭和16年「六月初六」に「葛粉一袋 越後小谷町産 金参円なり」とあるが、「小谷町」という町名が存在しないことから、「小千谷町」の誤植ではないか。
- 回答
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該当資料、同全集再刊(2刷)23巻(1972)p.174、新版24巻(1994)p.523、第二次刊行(2刷)24巻(2011)p.523でも「越後小谷町産」との記載。
なお、新版(第二次刊行)21巻(2010)の後記には、「原本『断腸亭日乗』を翻刻、収録することとした。原本『断腸亭日乗』は、永井永光氏によって保管されており、(中略)これらは、岩波全集発行第一次『荷風全集』(中略)においてはじめて翻刻、紹介された(第一刷、第二刷)。本全集では、その方針を踏襲しながら改めて原本と照合して本文を定めたうえ、原本公開以前の中央公論社版『荷風全集』所収の日記篇、東都書房版『永井荷風日記』所収本文との「異同」を示すなどの配慮をした。」とある。
原文公開以前の公刊本『荷風全集 第22巻』(中央公論社 1952)p.140及び『永井荷風日記 第6巻』(東都書房 1959)p.38、も確認したが、いずれも「越後小谷町産」。
『断腸亭日乗 第5巻 新版』(岩波書店 2002)p.185でも同記載。
葛粉については、『永井荷風ひとり暮らしの贅沢』(永井永光/[ほか]著 新潮社 2006)p.43「茶筒に残る葛粉」で、『断腸亭日乗』の昭和9年10月1日、昭和15年5月23日、昭和16年4月11日、昭和17年11月16日に葛粉の記載があることがわかるが、本文で産地については記されていなかった。
改めて、葛粉記載の該当箇所を確認すると、「金兵衛のかみさん余がために新潟よりつてをたよりて購ひ求めしなりと云ふ。」とある。
また、『荷風と戦争 断腸亭日乗に残された戦時下の東京』(百足光生/著 国書刊行会 2020)p.109-110でも「葛粉一袋(越後小谷町産)」との記載があり、「金兵衛」の説明もあるが、おかみの名前や出身地等の記載はない。
以上、小谷町が小千谷町の誤植、誤記であるという資料は確認できなかった。『荷風全集』の後記より、誤植とは考えにくく、可能性としては荷風の誤記ではないかと推測される。なお、新潟県に小谷という地名はある。(村上市小谷、十日町市松之山小谷)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 貴重書.郷土資料.その他の特別コレクション (090 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000291325