レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20200816
- 登録日時
- 2020/11/16 00:30
- 更新日時
- 2021/02/25 10:33
- 管理番号
- 多摩-2020-01
- 質問
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解決
雑誌に付ける付録について、ルールのようなものがあるか。過去の変遷も含めて、知りたい。
- 回答
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日本雑誌協会が「雑誌作成上の留意事項」(以下、「留意事項」とする。)という基準を出しており、付録を添付する際のルールに相当する。
最新版は日本雑誌協会HPから参照できる。
○「雑誌制作上の留意事項(2017年改訂版)」(日本雑誌協会)
https://www.j-magazine.or.jp/assets/doc/20170221.pdf
「V 付録の形式・材質」という項目があり、「雑誌を補完する機能を有する」、「当該雑誌と別個では通常販売されないもの」、「付録の大きさは、折り加工したものも含め、雑誌(本誌)の底面積を超えないようにし、また、雑誌(本誌)の4分の1以上にする」といった基準が定められている。
「留意事項」については、資料1、2にまとめられている。
資料1 p.4-11「特集 雑誌付録 大研究」内「1 付録と雑誌作成基準の歴史」
「留意事項」は、雑誌作成にあたっての自主基準として、1986(昭和61)年に設けられた。
雑誌市場の低迷により、業界内で増売のために基準緩和を求める声が出始め、2001(平成13)年に大幅な改訂がなされた。重量や寸法といった規定が削除され、柔軟なものとなった結果「バッグやマウスパッド、ハンカチ、CDなどさまざまなグッズが付録として展開されることとなった」ことが示されている。
資料2 p.4-11「特集 雑誌の「付録」最新動向」内コラム「付録添付誌の主な流れとその背景」に記述あり。
2001(平成13)年5月に「留意事項」が改訂された結果、付録の基準が緩和された。それ以前は材質や添付方法などが細かく規定されていたが、この改訂によってそうした決まりが簡素化され、「付録の自由度が飛躍的に増すこととなった」と書かれている。
基準緩和の背景として、印刷・製本技術の向上に加え、雑誌市場の活性化が主眼にあった。「特に出版社の編集サイドから緩和を求める声が多かった。魅力的な付録を付けることで読者を惹き付け、販売低迷を打破」しようとしていたと書かれている。
また、p.6「表3 『雑誌作成上の留意事項(2001年改訂版)』の付録基準」に、2001年に改訂された「留意事項」のポイントがまとめられている。
「留意事項」を定めている日本雑誌協会の団体史である資料3には、より詳しい記述がある。
資料3 p.59-61「B-5「雑誌作成上の留意事項」」
「留意事項」の作成は日本国有鉄道(以下、国鉄とする。)分割民営化が契機とされているが、その基礎となったのは鉄道省の雑誌特別運賃制度(以下、特運とする。)である。
資料3 p.52によれば、特運とは、雑誌は国民にできるだけ広く、早く、公平に頒布する必要性があるため、雑誌輸送を行う国鉄の運賃を割引くという制度であり、1897(明治30)年に太政官布告された。
「留意事項」作成前、雑誌出版社は、付録を付ける場合には都度国鉄に認可申請を行っており、1956(昭和31)年に日本雑誌協会が設立されたあとは、日本雑誌協会が国鉄と交渉を行っていた。
国鉄民営化の方向が決まった1984(昭和59)年に日本雑誌協会特運規定委員会は、特運廃止(1986年11月)後も輸送等の業務を円滑に実施するために「留意事項」をまとめた。
「留意事項」の運営、基準改訂などは、日本雑誌協会の雑誌基準運営委員会が担当している。
2001年の全面改訂において大幅な緩和を実現したことで、週刊誌の付録も解禁されたり、「改訂時点では予想しえなかった付録、広告サンプル貼付事例が続々登場」したりしたと書かれている。
1990年代、フロッピーディスクや、CD-ROMといった記録メディアの登場で、雑誌広告協会をはじめとする広告団体等から「留意事項」の改訂を求められ、日本雑誌協会は都度日本出版取次協会と検討し部分改訂を行ってきた。しかし、「基準に合致しない事例があいつぐ事態となり、また98年以降、雑誌市場に陰りが出てきた」ことが、全面改訂の背景としてあったことが示されている。
「留意事項」作成前の検討については、資料4 p.302-303「昭和六十年誌 雑誌の形式・形態・材料等に関する規定の作成」にも記述がある。
国鉄の分割・民営化にあたり、1986(昭和61)年11月から特運を「実質上廃止するため、これに代る自主規準の作成が必要である」ことを背景として、日本雑誌協会販売委員会に、特運規定委員会が設けられた。検討事項は、主に「特運における雑誌の定義」、「本誌について」、「付録について」の3点であったこと、「特運規定の見直し、問題点の摘出作業」後に委員会案をつくったこと、委員会案のタイトルは「雑誌の形式・形態・材質等に関する規定」であったとしている。規定の目的は、「読者の利便と、業界の競争秩序を確保し、かつ円滑な雑誌輸送を促進すること」にあったとしている。
また、以下のサイトにも「留意事項」について簡潔な解説がある。
○「書店で雑誌の付録が多様になっているのが目立ちますが、その動向について(その1)」(日本印刷技術協会)
https://www.jagat.or.jp/archives/12175
※その2以降はWebサイト最終確認日時点で見つからず。
当該留意事項ができる前の付録のルールや、ルールの変遷については、過去の日本雑誌協会の団体史である資料4~7に記述あり。
例えば、以下のページに関連する記述がある。
資料4 1976(昭和51)年から1985(昭和60)年までの動向が編年体で示されている。
p.63-67「昭和五十二年誌 児童書・学習誌の付録について日書連からの要望」
p.84-85「昭和五十三年誌 付録のパック詰問題起こる」
p.88-90「昭和五十三年誌 レーヨン系不織布の付録への使用」
資料5 1966(昭和41)年から1975(昭和50)年までの動向が編年体で示されている。
p.54-55「昭和四十一年誌 一般月刊雑誌付録の増量に関する陳情」
p.77-79「昭和四十二年誌 雑誌付録の増量について」
p.196-197「出版物郵便問題協議会の活動」
当該資料は都立中央図書館でのみ所蔵であったため、都立間貸出により都立多摩図書館に取寄せて確認した。
資料6 日本雑誌協会の委員会ごとに、(時期)の活動内容が示されている。
p.262-272「第二部 業務関係委員会の活動 四 輸送委員会 付録・増刊について」
昭和30年代に行われた国鉄と日本雑誌協会との間の、付録・増刊についての運賃の特例措置についての折衝の記録がある。
都立中央図書館のみ所蔵している資料だが、国立国会図書館デジタル化資料送信サービスにより都立多摩図書館でも閲覧可能。
資料7 大正期、昭和戦前期の動向が編年体で示されている。
p.82-83「大正十二年誌 第三種郵便物の遵守要望」
p.167-170「昭和四年誌 附録は第三種郵便物内に」
p.214-215「昭和七年誌 附録は本誌の二分の一まで」
p.229-231「昭和九年誌 附録輸送の制限強化」
p.273-278「昭和十年誌 附録輸送は本誌と同重量まで」
Webサイトの最終確認日:2020年8月17日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本語 (051)
- 参考資料
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- 【資料1】雑誌:出版月報 58巻 10号 通巻725号 (2016年8月) / 全国出版協会出版科学研究所
- 【資料2】雑誌:出版月報 51巻 10号 通巻620号 (2009年8月) / 全国出版協会出版科学研究所
- 【資料3】日本雑誌協会日本書籍出版協会50年史: 1956→2007 / 『50年史』編集委員会/編集 / 日本雑誌協会 / 2007.11 <023.1/5072/2007>
- 【資料4】日本雑誌協会三十年史: 自昭和51年至昭和60年 / 日本雑誌協会三十年史編纂委員会/編 / 日本雑誌協会 / 1988.6 <0506/3001/88>
- 【資料5】日本雑誌協会二十年史: 自昭和四十一年至昭和五十年 / 日本雑誌協会二十年史編集委員会/編纂 / 日本雑誌協会 / 1981 <0506/1/81>
- 【資料6】日本雑誌協会十年史 / 日本雑誌協会十年史編集委員会/編纂 / 日本雑誌協会 / 1967 <0506/N691/N>
- 【資料7】日本雑誌協会史 第1部 大正・昭和前期 / [日本雑誌協会/編] / 日本雑誌協会 / 1968 <0506/ニツホ/1>
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000289529