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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

提供館
(Library)
福井県立図書館 (2110037)管理番号
(Control number)
0000002415
事例作成日
(Creation date)
2022年04月23日登録日時
(Registration date)
2023年06月10日 17時25分更新日時
(Last update)
2023年06月10日 17時27分
質問
(Question)
福井県関係の住所表示で、たとえば「福井市下馬町地係」のように「地係」という表現が使用されているのをよく見かけますが、これはどのような意味の言葉なのでしょうか。また、読み方(読み仮名)も分かれば教えてください。
回答
(Answer)
読み方については、次の資料に「チガカリ(名)地掛かり。下丁」とあることから、大野市下丁では「ちがかり」と発音していることがわかりますが、県域全般での読み方について書かれた資料は見つかりませんでした。
・大野市史編さん委員会∥編. 大野市史 第12巻. 大野市, 2006.3【H236/O4/1-12A】:p104;

表記については、「地係」を「地掛り」と表記する例があったことがわかります。
・明治21年5月18日「福井新報」最下段、啓蒙小学校の記事
https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/da/detail?data_id=030-801433-1-p2

これら「地係」「地掛(り)」について、下記の資料を参照しましたが、いずれにも立項はありません。
・『日本国語大辞典 第二版』全10巻 小学館
・『現代日本語方言大辞典』全9巻 明治書院
・『日本方言大辞典』全3巻 小学館
・『角川古語大辞典』全5巻 角川書店
・『福井県大百科事典』全1巻 福井新聞社

ただし、『日本歴史地名大系』全50巻 平凡社 では唯一、福井県今立郡池田町の「市村」の項目内に「村の東、常安村の地係りに欠ヶ鼻用水(八ヶ村用水)があり…の八ヶ村が受水した」との用例が見られました。
これらのことから、この「地係」という用語が福井県に特有のものである、との推測がたてられますが、郷土資料ではこれらを定義したものは見つけられませんでした。

つぎにGoogleで「"地係"」のキーワードで検索すると、以下のような用例が、いずれも福井県の事例として確認できました。
a)不動産の案内 例:福井市順化1丁目中央3丁目地係 周辺に駐車場166件あります
b)公園の所在地 例:敦賀市総合運動公園 沓見地係、松原公園 松島地係 (敦賀市HP)
c)道路工事区間 例:通行規制区間 フルーツライン(柿原から青ノ木地係) (あわら市HP)
d)造成中の宅地所在地 例:鯖江市吉江町地係(現地は現在、山を切土にて造成中)
e)工事場所 例:門型標識定期点検業務 永平寺町 松岡志比堺 外 地係(永平寺町HP)
不動産および自治体の工事に関する用例が多い点に特徴がみられます。

さらにデジタルアーカイブ福井で「地係」or「地掛」で検索した結果を示します。
https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/da/fwsearch?ctlg=2&name%5B%5D=%E7%9B%AE%E9%8C%B2%E7%A8%AE%E5%88%A5&param%5B%5D=%20*010%E5%8F%A4%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%88%E8%B3%87%E6%96%99%E7%BE%A4%EF%BC%89*%7C*011%E5%8F%A4%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%88%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%89*%7C*020%E5%85%AC%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%88%E7%B0%BF%E5%86%8A%EF%BC%89*%7C*021%E5%85%AC%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%88%E4%BB%B6%E5%90%8D%EF%BC%89*%7C*030%E6%96%B0%E8%81%9E*%7C*050%E7%9C%8C%E5%A0%B1*%7C*060%E5%86%99%E7%9C%9F*%7C*110%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E8%B3%87%E6%96%99*%7C*070%E6%96%87%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E8%B3%87%E6%96%99%E7%BE%A4*%7C*071%E6%96%87%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E8%B3%87%E6%96%99*%7C*090%E8%A1%8C%E6%94%BF%E5%88%8A%E8%A1%8C%E7%89%A9%EF%BC%88%E7%9C%8C%E6%94%BF%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%EF%BC%89*%20%E6%9D%BE%E5%B9%B3%E6%96%87%E5%BA%AB%EF%BC%88%E7%A6%8F%E4%BA%95%E8%97%A9%E5%8F%B2%E6%96%99%EF%BC%89%20%E6%9D%BE%E5%B9%B3%E6%96%87%E5%BA%AB%EF%BC%88%E5%9B%BD%E6%9B%B8%E3%83%BB%E6%BC%A2%E7%B1%8D%EF%BC%89%20%E8%B6%8A%E5%9B%BD%E6%96%87%E5%BA%AB%20%E8%B6%8A%E8%91%B5%E6%96%87%E5%BA%AB%20%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8%E8%B2%B4%E9%87%8D%E5%9B%B3%E6%9B%B8%20%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96&name%5B%5D=%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89&param%5B%5D=%E5%9C%B0%E4%BF%82%7C%E5%9C%B0%E6%8E%9B&name%5B%5D=opt&param%5B%5D=%7B%22faset%22:null,%22sort%22:null,%22page%22:null,%22dispCnt%22:100,%22dispthumbnail%22:true%7D
右側にある目録種別(公文書や古文書など)で絞込ができます。
まず「公文書」では明治時代からこの用語が使われており、また土木工事に関する用例が多いようです。
つぎに「古文書」では築堤工事、用水工事など土木工事に関する資料がみつかり、一見すると江戸時代からこの用語が使われていたようにも思われますが、資料の目録は現代の人が名付けたものもあるため、実際の資料にその用語が使われていたかどうかは注意が必要です。
「県報」では橋や隧道の所在地を示す用例および工事区間等に関する用例があります。
「写真」では道路補修、災害復旧工事、被災状況地を示す用例です。
歴史資料全般についても、やはり公共の土木工事(道路や河川、堤防)などに関する場面での用例が多いことがわかります。

つぎに自治体の条例規則集を確認したところ、
福井市例規集では、「道路占有工事着手届」に「場所 福井市  丁目  番  号  地係」との記載があり、
https://www1.g-reiki.net/city.fukui/reiki_honbun/s500RG00000650.html#e000000379
また「福井市法定外公共物占用行為許可申請書」にも「占有行為の場所」として次のような記載がありました。
「福井市  町   号  番 地係
      丁目  番    地先」
https://www1.g-reiki.net/city.fukui/reiki_honbun/s500RG00000653.html#e000000121
後者では「地係」と「地先」の使い分けについては不分明ながら、両者が類似する用語として使われているとの予測がたちます。
そこで他自治体での同種の届・申請書を確認したところ、
静岡市「工事着手・完了届(道路占用)」には「工事の場所 静岡市  区  町  地先」とあり、福井市の「地係」に該当するところに「地先」と記載されていました。
https://www.city.shizuoka.lg.jp/shinsei/dtl.php?id=1698
一方、加賀市「道路占用工事着手届」には「工事の場所 箇所  加賀市 町地内」とあり、福井市の「地係」に該当するところに「地内」と記載されていました。
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/material/files/group/85/17926.pdf
「地先」と「地内」の用例は多くの自治体でみられますが、同種の書式で「地係」と用いるのは福井県内の自治体のみのようです。
以上のことから、福井県の土木工事等に係る行政用語として使用される「地係」は、他の自治体では「地先」や「地内」が使われていることがわかります。

この「地先」の用法については、下記文献に、埋立地や河川敷などの無番地、地点を特定できない場所での工事看板で「地先」がよく目にされるとの記事がありました。
今尾恵介∥著. 住所と地名の大研究. 新潮社, 2004.3【290.3/イマオ】:p71;

なお、『日本国語大辞典』には「地先水面」の項目があり、「ある地区に接する前面の水面。その地区を管轄する地方公共団体が、港湾施設などの管理権を有する。その範囲に関しては明確な定義はない」とされています。
この語義に近い「地係」の用例として、福井県例規集『福井県漁業調整規則」第38条(河口付近における採捕の制限)として「耳川 美浜町字和田地係丸礁と同町字和田と字松原の境界点とを結んだ線以内の区域」との記載がみられました。


明確に語義を載せた資料はお伝えできませんでしたが、いくつかの用例などからまとめると以下のようになるように思われます。
・造成中の宅地所在地は、無番地のため「地係」を使用
・堤防や河川敷などの工事も、無番地のため「地係」を使用
・道路や用水などは、地点を特定できないため「地係」を使用
・海や川の所在を示す場合は、「地先」に代わるものとして「地係」を使用
回答プロセス
(Answering process)
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
日本  (291 8版)
参考資料
(Reference materials)
キーワード
(Keywords)
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
事実調査
内容種別
(Type of subject)
郷土 言葉
質問者区分
(Category of questioner)
社会人
登録番号
(Registration number)
1000334383解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
解決

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