レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/08/07
- 登録日時
- 2023/03/30 00:30
- 更新日時
- 2023/04/08 09:49
- 管理番号
- 0000001531
- 質問
-
未解決
以前以下の文章を写したことがあるのだが、その文章が掲載されている本を探している。明治~大正くらいの出版物で、和讃ではないかと思う。
「人生わずか五十年、花にたとえて朝顔の、露よりもろき身を持って、いついつまでも居るように、親子兄弟夫婦じゃと、愛と情にに絡まれて、憎いというて腹を立て、可愛いというては欲おこし、世間の人と交わると、自分の都合のよい時は、彼れ此れゆうて出入りする。ひとたび意見を間違えば、互いに恨みン組合、人の悪しきに目をかけて、自分の悪しきは棚に上げ、昨日も暮れた、今日もまた、あるやないやに執われて、明けても暮れても罪ばかり。(中略)南無阿弥陀仏 阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 阿弥陀仏」
- 回答
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(1)インターネットで検索すると、よく似た文言が沢山ヒットし、「黒谷和讃」とされています。
(2)「黒谷和讃」を検索すると、「寺の御詠歌(和讃ともいう)で「クロタニ和讃」について知りたい。この和讃のクロタニとは地名なのか寺名なのか。仮名でかかれたものをもっているのでわからない。」という埼玉県立久喜図書館のレファレンス事例がヒットしました。こちらを確認すると「黒谷」というのが法然上人を指していることが分かります。
(3)当館蔵書で「黒谷和讃」「法然 和讃」などのキーワードで調べても、明治~大正の該当するような出版物の所蔵がありませんでした。
(4)(2)の事例に『黒谷和賛大師御詠歌(クロダニワサンダイシゴエイカ)』(出版社不明)の所蔵がある、との記載があったので、埼玉県立図書館に内容の問い合わせをしましたが、「人間わずか五十年 花にたとえて朝顔の 露よりわろき身をもって」で始まりますが、それ以降の述は一致していない、とのことでした。
(5)国立国会図書館サーチ(https://iss.ndl.go.jp/)で検索しますと、『仏教各宗和讃集』井上松翠 編 (法文館, 1912) がヒットし、デジタルコレクションで本文を閲覧することができます。 (https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/917662)
よく似た内容のもので以下の2点が確認できますが、途中から内容は違っていきます。
①「黒谷和讃」
「帰命頂礼黒谷の、圓光大師のをしへには、人間わづか五十年、花にたとへば朝顔の、露よりもろき身を持ちて、なぜに後生を願わぬぞ、たとへ浮世にながらへて、楽しむ心にくらすとも、老も若もつまも子も、おくれ先だつ世の習ひ、花も紅葉も一とさかり、こよひ枕をかたむけて、直に頓死をするもあり、朝なに笑ひし幼子も、今宵のあらしに誘われて、露ときへゆく憐れさは、有為転変の世のならひ、今日は他人の葬礼し、明日は我身の野送りぞ、是を思へばおのづから、
念仏唱て願ふべし、南無阿弥陀仏阿弥陀仏、助けたまへや阿弥陀仏、南無阿弥陀仏阿弥陀仏」
②「法然聖人花和讃」
「帰命頂礼人間僅五十年、花に譬てあさがをの、露よりもろき身を持て、何ぜに後生を願ぬぞ、花も紅葉もひと盛り、思へば我身も一盛り、今日は人の葬礼し、明日は我身の葬礼ぞ、それを思へば自から、念仏後生願べし、独り生れて独り死す、死出の闇路に連わなし、二再此世に還らぬぞ、皆々後生願ふべし、未来と云も遠からず、身の継目が過去未来、他人の葬礼を見るに付 我もかくやと驚けば・・・」
※このほかヒットしたのは録音資料のみでした。
(6)『日本歌謡集成 』巻4に数多くの和讃が収録されていたので、確認してみましたが、掲載されておりませんでした。
(7)『日本民俗大辞典』下「和讃」の項には、「江戸時代の念仏講ではさまざまな和讃がうたわれるようになるが、これらは、地の和讃といわれ、その土地その土地で伝わったものである。明治から大正にかけては各所で和讃大会・御詠歌大会が開かれ、念仏講の交流がはかられた」(p829)とあり、土地土地で少しずつ異なる文言が伝えられているようです。
(8)『鯖江市史』第1巻には、豊地域に伝わる民謡として以下の歌が掲載されていて、これまで確認した中で一番よく似ています。
「人生わずか五十年 花にたとえて朝顔の 露よりもろき身をもって いついつまでもいるように 親子兄弟夫婦じゃt 愛と情にからまりて かわいいといっては 欲をおこし 憎いといっては 腹をたて 世間の人との交わりも 自分の都合のよい時は かれこれいって出入りする 一度意見をまちがえば たがいに恨み憎みあう 人の悪しきに目をつけて 自分の悪しきは棚に上げ 昨日も暮れた今日もまた 有るや無いやにとらわれて 明けから暮れまで罪ばかり ほんに思えば皆さまよ 上は帝をはじめとし 下は卑賤の人々も のがれがたきは無常なり この息一度きれたなら 経帷子を身にまとい 六文数珠を手にかけて 小首かたげて思案する 姿みるこそあわれなり」(合いの手を省略しました)
(9)また、福井県立図書館より、以下の資料にも掲載されていなかった旨、情報提供いただきました。
『豊村誌』(豊公民館, 1957.1)、『北国民謡の旅』(府中書院, 1947.9)、『福井県の民謡』(福井県民俗学会, 1967.7)、『若越民謡大鑑』(福井県郷土誌懇談会, 1973.1)、『福井県の民謡』(福井県教育委員会, 1988.3)
(10)民謡や流行唄の可能性も出てきたので、以下の郷土資料もあたってみましたが、掲載されていませんでした。
・ 石川県歌謡
・ 稿本金沢市史 [12]風俗編 第1 金沢市∥編 名著出版 1973.7
・ 稿本金沢市史 [13]風俗編 第2 金沢市∥編 名著出版 1973.7
・ 金沢市史 資料編14 金沢市史編さん委員会?編集 金沢市 2001.3
・ 加賀・能登の民俗 第1~3巻 小倉/學?著 三橋/健?監修 瑞木書房 2005.3
・ 金沢市史 資料編13(寺社) 金沢市史編さん委員会∥編 金沢市 1996.3
(11)このほか、『浄土教経偈和讃』(土田 政次郎∥著 鴻盟社 1917)、『やんれぶし』(探花房∥戯作近八郎右衛門∥編輯 近八郎右衛門 1879)、『目蓮尊者地獄めぐり』(附 浄土道行 近八郎右衛門∥著 1886)など、関連のありそうな明治~大正の版本を確認してみましたが、見つけることはできませんでした。
以上、ご希望の資料を見つけることができなかったことをご報告します。
- 回答プロセス
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(1)Googleで全文検索をすると、
「黒谷和讃」で似た文言が多数ヒットする。
(2)「黒谷和讃」をGoogle検索すると、「寺の御詠歌(和讃ともいう)で「クロタニ和讃」について知りたい。この和讃のクロタニとは地名なのか寺名なのか。仮名でかかれたものをもっているのでわからない。」(https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&lsmp=1&kwup=%E9%BB%92%E8%B0%B7%E5%92%8C%E8%AE%83&kwbt=%E9%BB%92%E8%B0%B7%E5%92%8C%E8%AE%83&mcmd=25&mcup=25&mcbt=25&st=score&asc=desc&oldmc=25&oldst=score&oldasc=desc&id=1000018030)
というレファレンス事例がヒット。
この事例により、「黒谷」とは法然であることがわかる。
この事例の参考資料『日本歌謡集成』巻4(高野辰之編 春秋社 1928)にはたくさんの和讃が収録されているが、質問と同じものはない。
(4)NDLサーチで「黒谷和讃」を検索、ヒットした『仏教各宗和讃集』をデジタルコレクションで確認。
(8)GoogleBooksで『鯖江市史』1巻の内容がヒットし、所蔵がなかったので、福井県立図書館にレファレンスを依頼。NDLデジタルコレクション図書館送信で読めることを教えてもらう。
(9)地域によって内容が異なるようなので、郷土資料をあたる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 仏教 (18 9版)
- 参考資料
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- 4 黒谷和賛大師御詠歌 埼玉県立図書館所蔵
- 5 仏教各宗和讃集 井上松翠 編 法文館 1912
- 6 日本歌謡集成 巻4 高野/辰之?編 春秋社 1928 911.6/4/4
- 7 日本民俗大辞典 下 福田/アジオ?[ほか]編 吉川弘文館 2000.4 380.33/フク ニ/2
- 8 鯖江市史. 史料編 第1巻 (民俗編) 鯖江市史編纂委員会 編 鯖江市 1973 国立国会デジタルコレクション(国立国会図書館/図書館・個人送信限定)
- キーワード
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- 黒谷和讃
- 照会先
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- 埼玉県立図書館
- 福井県立図書館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331212