レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 宮城県図書館 (2110032) | 管理番号 (Control number) | MYG-REF-220079 | |||||||||||||
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事例作成日 (Creation date) | 2023/01/20 | 登録日時 (Registration date) | 2023年03月18日 00時30分 | 更新日時 (Last update) | 2023年03月18日 00時30分 | |||||||||||
質問 (Question) | 御家騒動における切腹は,当時どのような評価がされていたか知りたい。 | |||||||||||||||
回答 (Answer) | 「御家騒動」と「切腹」を直接結びつけて,評価している記述は見当たりませんでした。 参考として,中世から近世にかけて,「切腹」に関する評価に言及している資料を下記のとおり御案内します。 そのほとんどが,新渡戸稲造『武士道』や山本常朝『葉隠』に言及し,あるいは,刑罰史からの言及によっています。 ※【 】内は当館請求記号です。 資料1 山本博文著『江戸時代の国家・法・社会』校倉書房, 2004【210.5/2004.8】 「III 武士と法の万華鏡」-「一 切腹と日本人」-「1 切腹の始まりと切腹する心性」(pp.133-144)に,次のように記述されています。 「謀殺と斬罪(前略)切腹は確かに刑罰でもあるわけですが,刑罰になるのは江戸時代になってからのことで,それ以前は,切腹という刑罰は基本的には存在しません。鎌倉時代,室町時代という中世の社会においては,武士の処罰はあくまで斬罪でした。(後略)」(p.138) 「切腹刑の始まり(前略)オランダ人のモンタヌスが十七世紀にあらわした『日本史』という本で,日本についていろいろなことを書いています。(中略)十六,七世紀頃の日本の様子を示していると思います。(中略)死すべき罪を犯した場合には,国王つまり将軍なり大名に,「自決することを許されたい」と願い出る形をとり,それが許されることは,彼にとっては非常に名誉であった。(中略)自分が死にたいと願い,「切腹します」と通告して,それを許容されれば素直に切腹するけれども,もし主君の方が,斬罪などの切腹以外の死に方を強要した場合には,名誉にかけてあくまで抵抗するというのです。この時期にはまだ切腹刑は確立していませんが,攻められて殺されたり,斬罪に処せられたりするよりは,自分で腹を切って死ぬほうがいいと思っていたことがわかります。こういうことからも,切腹刑はどうも江戸時代の初め,あるいは戦国時代の終わりぐらいから出始めたことがわかるわけです。(後略)」(pp.139-140) 「(前略)切腹はあくまで武士の名誉な刑罰でした。(中略)実際は命じられて切腹している場合でも,あくまで自害であることが観念として認められていた。だから,江戸時代の刑罰としての切腹は意外と事例が少ないのです。(後略)」(p.143) なお,上掲資料には,「III 武士と法の万華鏡」-「一 切腹と日本人」-「4 御家騒動と切腹」(pp.155-157)の項もあり,薩摩藩での御家騒動による切腹について紹介していますが,切腹に対する評価(美徳であるか恥であるか等)には触れられていません。 資料2 山本博文著『武士と世間』中央公論新社, 2003【156/ヤヒ2003.6】 「武士にとっての「世間」」(pp.190-192)の項 「(前略)江戸時代においては,世間を騒がせたこと自体が重い罪状になりえた。それは,武士の名誉というものが,とりもなおさず世間が認めるものだったからにほかならない。逆に失態を犯した武士の運命も,世間の評判によって左右される。改易や切腹に処せられた武士を検討すると,処罰にふさわしい罪を犯した者もいるが,現代では考えられないほど軽微な不手際による者もいる。(中略)武士は死を恐れない強い精神力が必要とされ,武士にふさわしくない行動をした場合は自ら死を選ぶ倫理と能力をもつとされていた。(後略)」(pp.191-192) 資料3 千葉徳爾[著]『切腹の話』講談社, 1980【382.1/1972.8】 「4 刑罰としての切腹」-「1 切腹刑の成立」(pp.94-115)の項 「(前略)武士が自分の非をみとめてその責任を負う場合,最終的には死をえらぶことになるわけであるが,その死が,罪はあるがしかも武勇と名誉とは汚したくないという願望をもって,つまり,みずからの死を以て名誉をあがなおうとする際の象徴的表現形式として,腹を切裂くという方式がえらばれる不文律がここに成立したのであった。それを,当の罪ある者の側でなく,国法を行なう支配者の側から承認すれば,刑としての切腹となるわけである。(後略)」(pp.94-95) 上記のほか,「3 切腹の歴史」や「6 切腹の原型と意味」などの章において,切腹の事例とその考察が記載されています。 資料4 千葉徳爾著『日本人はなぜ切腹するのか』東京堂出版, 1994【382.1/1994.9】 資料3と同じ著者ですが,さらに詳細な民俗学的な考察が記載されています。 資料5 新渡戸稲造著 ; 奈良本辰也訳・解説『武士道』三笠書房, 1993【156/ニイ1993.2/Bチテキ】 新渡戸稲造の『武士道』の校注・現代語訳資料です。「第12章 「切腹」-生きる勇気,死ぬ勇気」(pp.116-134)に切腹についての考察が掲載されています。 資料6 大隈三好著『切腹の歴史』雄山閣出版, 1995【156/オミ1995.9】 「八,刑罰的切腹」(pp.79-99)の項 「切腹は本来自主的なものだった。(中略)戦国時代になると,敗将が家族や家来たちを助ける条件で,責を一身に負うて切腹する,または勝者がそれを命ずるといったケースも多く現われたし,江戸時代になると士以上の閏刑として刑名とさえなる(後略)」(p.79) 「一〇,江戸時代の切腹」(pp.104-160)の項 「(前略)戦場を離れた江戸期の切腹は,概して行刑上の切腹がその主体となる。行刑上の切腹は武士に限られた賜死だが,この外にもいわゆる純粋な自殺行為として武士の間にこの方法が用いられたことは云うまでもない,引責自殺,名誉保全のための自刃,主君あるいは恩恵を蒙ったものへの殉死等平和の治世にも切腹の種子は尽きなかった。(後略)」(p.106) 資料7 武士道学会編『武士道読本』国書刊行会, 2013【156/フシ2013.5】 第一出版協会から昭和14年に発行された論文集を復刻した資料です。 高木武「八 日本武士道と西洋武士道」-「七 制裁の比較」(pp.208-209)の項 「武士道は,武士社会を律する峻厳なる道義である。したがって,武士にして,もし義務を怠るか,その体面を傷つけるようなことがあると,相当なる制裁を加えたのである。われにおいては,武士に刑罰を加えるに当たっても,つとめてその名誉を尊重し,極めて破廉恥なる罪を犯すとか,または,許し難い罪悪を犯した場合のほかは,一命を奪うにしても,切腹の制を設けて,その名誉を尊重した。武士にして切腹を課せらるるは,他の刑罰を課せらるるよりもはるかに名誉であった。(後略)」(p.208) 資料8 鈴木文孝著『近世武士道論』以文社, 1991【156/スフ1991.6】 下記は,『葉隠』(山本常朝 著)における武士道思想を考察した論考です。 「第四章 『葉隠』における武士道思想」-「第四節 求道志向」(pp.225-233)の項 「(前略)一切の損得勘定を超えた―したがって,死をもいとわない―忠義心をもって武士たる者の本来的な心的態勢と見なす常朝が,「武士道」を法度・掟に優先させ,さらには「大切な命」にさえも優先させて傍輩のあだ討ちを果たした武士に衷心から共感を寄せているのは,極めて自然な成り行きである。「武士道」を法度・掟に優先させることは,討ち死にすることをもおじけず切腹の料刑に処せられることをもおじけない,真の勇気をもった武士のみがなし得ることである。たとえ,科刑に処せられて切腹するとしても,切腹することそれ自体は武士にとって決して恥ではなく,侍らしい死に方の一つの型である,と常朝は考えている。(後略)」(p.231) 上記のほか,資料9,資料10,資料11に切腹や武士道に関する考察が記載されていました。 資料9 八切止夫[著]『切腹論考』中央公論社, 1979【210.04/1970.X】 「切腹論考」(pp.5-32)の項 資料10 笹森建美著『武士道とキリスト教』新潮社, 2013【156/サタ2013.1】 「六 キリスト教は「切腹」を認めるか武士道に「愛」はあるか」(p.123)の項 資料11 菅野覚明著『武士道の逆襲』講談社, 2004【156/カカ2004.X】 「第四章 一生を見事に暮らす 2死の覚悟「武士道と云うは,死ぬ事と見付けたり」」(pp.189-193)の項 | |||||||||||||||
回答プロセス (Answering process) | 当館所蔵資料から,「切腹」や「武士道」をキーワードに検索した。 下記の資料1から資料11を調査したが,「御家騒動における切腹の評価」に関する記述は見当たらなかった。 <調査資料> 資料1 山本博文著『江戸時代の国家・法・社会』校倉書房, 2004【210.5/2004.8】 資料2 山本博文著『武士と世間』中央公論新社, 2003【156/ヤヒ2003.6】 資料3 千葉徳爾[著]『切腹の話』講談社, 1980【382.1/1972.8】 資料4 千葉徳爾著『日本人はなぜ切腹するのか』東京堂出版, 1994【382.1/1994.9】 資料5 新渡戸稲造著 ; 奈良本辰也訳・解説『武士道』三笠書房, 1993【156/ニイ1993.2/Bチテキ】 資料6 大隈三好著『切腹の歴史』雄山閣出版, 1995【156/オミ1995.9】 資料7 武士道学会編『武士道読本』国書刊行会, 2013【156/フシ2013.5】 資料8 鈴木文孝著『近世武士道論』以文社, 1991【156/スフ1991.6】 資料9 八切止夫[著]『切腹論考』中央公論社, 1979【210.04/1970.X】 資料10 笹森建美著『武士道とキリスト教』新潮社, 2013【156/サタ2013.1】 資料11 菅野覚明著『武士道の逆襲』講談社, 2004【156/カカ2004.X】 | |||||||||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | ||||||||||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) | ||||||||||||||||
照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||||||||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||||||||||||
備考 (Notes) | ||||||||||||||||
調査種別 (Type of search) | 事実調査 | 内容種別 (Type of subject) | その他 | 質問者区分 (Category of questioner) | 社会人 | |||||||||||
登録番号 (Registration number) | 1000330644 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 未解決 |