レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 千葉県立西部図書館 (2120003) | 管理番号 (Control number) | 千県西-2022-0006 | |||||||
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事例作成日 (Creation date) | 2022年09月24日 | 登録日時 (Registration date) | 2023年02月05日 10時02分 | 更新日時 (Last update) | 2023年02月05日 10時03分 | |||||
質問 (Question) | 後撰和歌集に収録されている蝉丸の「これやこの 行くも帰るも 別れつつ 知るも知らぬも 逢坂の関」の和歌について、歌集によっては第三句が「別れては」となっている。「別れつつ」と「別れては」では解釈が違うのか、解説が載っている資料が見たい。 | |||||||||
回答 (Answer) | 【資料1】~【資料4】によると、「別れつつ」と「別れては」で、大きな意味の違いはありませんが、句全体の流れや抑揚などの違いを指摘している資料もあります。 【資料1】『新編和歌の解釈と鑑賞事典』(井上宗雄編 笠間書院 1999) p261「百人一首では、第三句の「つつ」は「ては」となっている。意味はたいして変わらないが、「ては」とすると、第三句に強いアクセントがおかれて上句と下句とが分離してしまうように感じられるのに対して、「つつ」だと、すらっと流れて「行くも……逢」がまとまった感じになり、一首に緊密感が生まれてくる」 【資料2】 『百人一首』(安東次男著 新潮社 1979) p58「後撰の諸本は多く、この歌の第三句を「別れつつ」とし、定家も諸歌学書で同じく「つつ」として採っているが、室町時代以降盛んになった百人一首註釈では、「別れては」と言いならわされてきている。「つつ」よりも「ては」の方が目で読む歌としては姿もしまり、また抑揚も利くが、いずれにしても話の尻取遊ふうの面白さだけで成立っている歌であり、この無性格は当時の一流行である。」 【資料3】『義趣討究 小倉百人一首釈賞 文学文法探究の証跡として』(桑田明著 風間書房 1979) p84「この歌、後撰集の諸本の多くや定家の諸歌学書には第三句が「別れつつ」となっており、百人一首でも定家の撰んだ頃はそうであったらしい。「別れつつ」の場合でも、これと「逢ふ」とが互文の手法で機能させてあることは「別れては」の場合と同様であろう。」 【資料4】『百首異見 古典文庫 第353冊』([香川景樹著] 古典文庫 1976) p76「はやく建保のころより、しか思ひたかへられたるより、三句の別れつゝのてにをはを、さる方にかなはすと見て、わかれてはとなほされたる也。てはとせる時は、上の別れと下の逢と交はりて、逢つ別れつするかたには成行ものから、又末のしるもしらぬもの一句あまりて、いたつらになり侍る事也。もとより作者の本意にたかへは也。よく見わくへし。これを今聞えぬにもあらねと、猶多きに随ふへしといへるは、つゝとあるも、てはとあるも、同し事に聞なしたるにや。」 また、以下の資料には、解釈については書かれていませんが、各歌集に「別れつつ」と「別れては」のどちらが掲載されているかの記述があります。 【資料5】『鑑賞 日本古典文学 第7巻 古今和歌集 後撰和歌集 拾遺和歌集』(角川書店 1978) p275「定家本・慶長本の「別れつつ」に対して、堀河本・承保本には「別れては」とある。なお、『百人一首』は『素性集』『古来風躰抄』とともに「別れては」とあるが、定家の他の諸撰集は『後撰集』同様「別れつつ」である。」 | |||||||||
回答プロセス (Answering process) | 1 自館の和歌の解釈に関する資料を確認し、【資料1】を見つけた。 2 千葉県立図書館蔵書検索をキーワード「後撰和歌集」で検索しヒットした資料を調査し、【資料5】を得た。キーワード「百人一首」で検索しヒットした資料を調査し、【資料2】~【資料4】を得た。 3 その他に確認したが記述を見つけられなかった資料は以下のとおり。 『後撰和歌集 笠間叢書 12』(岸上慎二校注 笠間書院 1988) 『後撰和歌集標注 研究叢書 78』(岸本由豆流[著] 和泉書院 1989) 『百人一首解 百敷のかがみ 百人一首注釈書叢刊 12』([太田白雪著] 和泉書院 1999) 『百人一首うひまなび 百人一首注釈書叢刊 16』(大坪利絹編 和泉書院 1998) 『百首贅々 百人一首注釈書叢刊18』([中井履軒著] 和泉書院 1997) 『百人一首と秀歌撰 和歌文学論集 9』(『和歌文学論集』編集委員会編 風間書房 1994) | |||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | 『新日本古典文学大系 6 後撰和歌集』(岩波書店 1990)には「別れつつ」の方が載っているが、「別れつつ」と「別れては」の解釈の違いについては書かれていなかった。 | |||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) |
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照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||||||
備考 (Notes) | ||||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | 社会人 | ||||||
登録番号 (Registration number) | 1000328600 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) |