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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

提供館
(Library)
県立長野図書館 (2110021)管理番号
(Control number)
県立長野-22-187
事例作成日
(Creation date)
2022年12月27日登録日時
(Registration date)
2023年01月25日 18時04分更新日時
(Last update)
2023年02月27日 20時54分
質問
(Question)
幕末の高遠藩の開産御役所勤務の武士の勤務実態についてわかる資料はあるか。
回答
(Answer)
開産御役所は、幕末の高遠藩の政策の一つである「産物会所」の後身である開産所のことと思われる。

 次の資料に産物会所開設と開産所への変遷について記載があったが、開所している日時についての言及は確認できなかった。また、受付時間についても、当時は不定時法のため流動的な時間であったとは思われる。加えて、後で紹介する資料でも、武士の勤務時間はかなり短かったことがわかる。

・『信州高遠藩史の研究』 北原通男著 北原通男著書刊行会 1984【N242/101】
  p.435-436, 448-452に、幕末の高遠藩の政策の一つである産物会所の創設、その後身である開産所に
 ついての記述がある。しかし、その運営形態についての記述は確認できなかった。
・『長野県上伊那誌 第2巻 歴史編』 上伊那誌編纂会編 上伊那誌刊行会 1965【N242/32/2】
  p.855-856に、記述がありますが、内容は『信州高遠藩史の研究』とほぼ同じ。
・『高遠町誌 上巻 歴史1』 高遠町誌編纂委員会編 高遠町誌刊行会 1983 【N242/79/1-1】
  p.894-895によると、藩の財政立て直しのために産物会所を創設。産業奨励したため数年間に工業が
 発達したが、相次ぐ災害のために立て直しができなかっ旨の記述がある。

 幕末期の高遠藩士の勤務形態を具体的にまとめた資料は確認できなかった。
 一般的に、藩の職制によって役職の内容や人数によって、勤務日数や形態は異なっていたらしい。江戸詰め特有の勤務や、幕末においては、通常の勤めの他に軍事訓練もあったようだ。
 職制、勤務実態については、武士が個人的につけていた日記等から類推してまとめた論考がいくつかあったので、高遠藩に限らず紹介した。

・『高遠藩士五代 地方武士の系譜とその生活』 竹内治利著 高遠堂出版 1996【N288/385】
  高遠藩士飯田氏5代の日記を翻刻、解説が加えられたもの。また、後半にはこれをもとに当時の高遠藩
 士の生活について考察が書かれている。利用者の疑問に全て対応できる内容ではないが、細かなところ
 まで書かれているので、参考になると思われる。
・『高遠藩の基礎的研究』 長谷川正次著 国書刊行会 1985【N242/104】
  高遠藩家臣団の職制等について、詳しくまとめられているが、個々の武士の勤務日数までは不明。
・『信州高遠藩史の研究』(前掲)
  p.320-326に、藩主内藤家の公勤について書かれている。江戸では、大名火消し、江戸城の衛戍、ま
 た大阪の加番がある年もあり、参勤交代など、在地を離れての勤務がある藩士も多かった模様。その際
 の勤務内容が書かれている。
  p.327-332には、藩主が在城の時の領内視察の様子が書かれている。また、藩制についてもまとめら
 れているが、勤務状況については、触れられていない。また、p.359-361に「高遠城下町の行政」があ
 り、文政5年の藩役人や町役人などの月番の状況をまとめた表がある。交代制(連続することもある)
 で月番を勤めていたことがわかる。
・『長野県上伊那誌 第2巻 歴史編』(前掲)
  p.660-672に、幕府に対する勤務、藩制、藩士の格式などが、まとめられている。『信州高遠藩史の
 研究』と、ほぼ同じ内容。
・『高遠町誌 上巻 歴史1』(前掲)
  第3章第2節の「高遠領主」に、各時代の藩制が詳しく書かれている。職務の内容に触れている箇所も
 あるが、勤務実態などはない。大阪の加番に際して、藩の主要な人材が藩主に随従して移動していた記
 述がp.545にあった。
・『高遠の古記録』第7号 高遠文化財保護委員会(1961)
  p.1-46に「高遠藩小役人の日記抄」を所収。岩崎家に残る3代の日記の内、「岩崎宅右衛門日記」(延
 享3年-文政5年没)を翻刻したものの抜粋。翻刻のみで解説はない。
・『旧飯田藩士柳田家日記「心覚」』 飯田市美術博物館編・刊 2004【N243/216】
  飯田藩士柳田東助為善の日記。東助自身は隠居しているが一子、東次郎の出仕の様子が細かく書かれて
 いる。また、p.21-22に東次郎をとおして武士の勤めについて解説があり、参考になると思われる。
・『図録 近世武士生活史入門事典』 武士生活研究会編 柏書房 1991【210.5/ブシ】
  p.22-32に、武士の職制、俸禄の記述がある。p.162-166には、武士の家計について書かれており、内
 職についても書かれている。
  p.250-259に、武士の勤務外の時間では、武芸鍛錬以外の時間の使い方として、教養・娯楽の茶の
 湯、能楽があげられている。その他の娯楽として、俳句、川柳、芝居など。
・『大江戸復元図鑑 武士編』 笹間良彦著画 遊子館 2004【382.13/サヨ/2】
  p.46-47に下級武士の暮らし、p.124-137に地方藩の武士についての記述がある。
・『江戸の武士』 安藤優一郎ほか編 廣済堂出版 2017【210.5/エド】
  p.102-108の江戸勤番の武士の仕事では、江戸城に登城する藩主の供が主な仕事とあり、p.127-138
 には、江戸での生活についての記述がある。
・『文人・勤番藩士の生活と心情』 高牧實著 岩田書院 2009 【210.55/タミ】
  p.177-322に、『森正名江戸日記』を基にした論文「土佐藩士 森正名の江戸勤務と生活」が所収。日
 記から江戸での勤務状況がまとめられている。こまめに出勤しているように見えるが、宿番(宿直)を
 仲間に頼まれて交代したことにより、多いのかもしれない。
・『元禄下級武士の生活』 加賀樹芝朗著 雄山閣 1966 【210.5/89】
  時期も異なるが、尾張名古屋藩の下級武士・朝日文左衛門重章の27年間の日記『鸚鵡籠中記(おうむ
 ろうちゅうき)』を翻刻したもの。この解説に御城組を務めた際の様子があり、九日ごとに宿直の勤番
 で、勤務中も酒を飲んでいることが書かれている。勤務がない時は浄瑠璃になどの趣味に没頭していた
 ことがわかる。
回答プロセス
(Answering process)
1 開産御役所について『高遠町誌 上巻 歴史1』を調べる。「産物会所」の後進とわかる。いづれも、藩の財政立て直しのために産業奨励するものだったが、この政策により工業が発達したのは数年間だけで、相次ぐ災害のために財政の立て直しはできなかったらしい。

2 郷土分類N242で、高遠藩のあった上伊那郡の歴史が書かれた資料を探す。『信州高遠藩史の研究』『長野県上伊那誌 第2巻 歴史編』などを見るが、開産所の執務時間、受付時間等の詳しい記述があるものは確認できなかった。

3 所蔵資料を「高遠」「武士」「藩士」「生活」などを組み合わせて、郷土史研究の雑誌記事を含めて検索する。高遠藩に限らず、県内各地の藩士の日記から、当時の武士の生活を論考したものを見つけて確認する。『高遠藩士五代 地方武士の系譜とその生活』『高遠藩の基礎的研究』『信州高遠藩史の研究』などが参考になる。また、『旧飯田藩士柳田家日記「心覚」』 が、幕末期のもの。

4 藩主とともに、江戸表に詰めていたものと、国元である高遠に残っていたものとでは、勤務の内容に差があることがわかってきたので、江戸表の藩士について、NDC分類210.5(日本の歴史 江戸時代)の書棚で調べる。『図録 近世武士生活史入門事典』『江戸の武士』『文人・勤番藩士の生活と心情』『元禄下級武士の生活』などを確認する。

5 同じようにNDC分類382.1(民俗・風習)の書棚でも調査する。『大江戸復元図鑑 武士編』など。

<調査資料>
・『近世の信州伊那・高遠』 北原眞人著 伊那毎日新聞社 1977 【N242/71】p.196-246
  「在仕送役北沢家」があり、幕末における高遠藩の財政改革に努めた北沢家の記録を紐解いている。
 代々名主を務める本百姓の家で、文政期には、代々、御徒士格に準ぜられ、勝兵衛は御供番格、御中小
 姓を務めている。北沢家は本百姓であったこともあり、酒造業も含め多角経営をしていたことがわかる。
・『高遠の古記録』第1-4号 高遠文化財保護委員会
・『高遠藩総合年表』 長谷川正次著 青山社 1980 【N242/83】
・『長野県史 通史編第6巻近世3』 長野県編 長野県史刊行会 1989 【N209/11-4/6】
・『高遠藩の基礎的研究』 長谷川正次著 国書刊行会 1985 【N242/104】
事前調査事項
(Preliminary research)
NDC
中部地方  (215 10版)
日本史  (210 10版)
風俗史.民俗誌.民族誌  (382)
参考資料
(Reference materials)
北原 通男/著 , 北原‖通男. 信州高遠藩史の研究. 北原通男著書刊行会, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005677062-00  (【N242/101】)
上伊那誌編纂会/編 , 上伊那誌編纂会 , 上伊那誌編纂会. 長野県上伊那誌 2. 上伊那誌刊行会, 1965-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059088303-00  (【N242/32/2】)
高遠町誌編纂委員会/編 , 高遠町誌編纂委員会 , 高遠町誌編纂委員会. 高遠町誌 上巻 歴史 2. 高遠町誌刊行会, 1983-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059397194-00  (【N242/79/1-1】)
竹内治利 , 竹内 治利. 高遠藩士五代 : 地方武士の系譜とその生活. 高遠堂出版, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I097202298-00  (【N288/385】)
長谷川正次 著 , 長谷川, 正次, 1934-. 高遠藩の基礎的研究. 国書刊行会, 1985.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001749171-00  (【N242/104】)
飯田市美術博物館・柳田國男館/編 , 飯田市美術博物館・柳田國男館. 旧飯田藩士柳田家日記「心覚」. 飯田市美術博物館・柳田國男館, 2004-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I058907627-00  (【N243/216】)
武士生活研究会 編 , 武士生活研究会. 図録・近世武士生活史入門事典. 柏書房, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002088707-00 , ISBN 4760106049 (【210.5/ブシ】)
笹間良彦 著画 , 笹間, 良彦, 1916-2005. 大江戸復元図鑑 武士編. 遊子館, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007365359-00 , ISBN 4946525564 (【382.13/サヨ/2】)
キーワード
(Keywords)
高遠藩
伊那市
上伊那郡高遠町
藩士
勤務実態
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
文献紹介 事実調査
内容種別
(Type of subject)
郷土
質問者区分
(Category of questioner)
社会人
登録番号
(Registration number)
1000327924解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
解決

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