レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年9月12日
- 登録日時
- 2023/01/25 11:17
- 更新日時
- 2023/02/09 19:16
- 管理番号
- 中央-1-0021622
- 質問
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解決
ヨーロッパもしくは中東地域における孤児院の歴史、それの誕生以前の社会において孤児がどのように扱われたか知りたい。
- 回答
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以下の資料を紹介した。
(1)『捨児たちのルネッサンス 15世紀イタリアの捨児養育院と都市・農村』高橋友子/著 名古屋大学出版会 2000年
15世紀中ごろにフィレンツェに開設された、ヨーロッパで最も古い本格的な捨児施設の一つであるインノチェンティ捨児養育院について、史料をもとに詳しく記述している。創設の経緯や当時の社会状況、施設の内部構造が分かるほか、当時の子どもたちの状況も解説されている。
(2)『図説中世ヨーロッパの暮らし』河原温/著 堀越宏一/著 河出書房新社 2015年
p104~105「福祉施設」
p104上段 「中世社会では、孤児、寡婦、病人など“キリストの貧者”と呼ばれた社会的弱者を保護し、救済することはキリスト教会の務めであった」と書かれており、パリの施療院など、孤児院を含めた慈善施設について書かれている。
p105中段 フィレンツェの事例。インノチェンティ捨子養育院が紹介されている。
(3)『図解中世の生活』池上正太/著 新紀元社 2016年
p180~181「施療院と奉仕活動」
貧者や弱者への救済というキリスト教的思想から、教会や修道院が運営した施設として「施療院」の解説あり。民営化に伴い発展し、孤児院や養老院などの施設に展開していったことが書かれている。
(4)『子ども観の社会史 近代イギリスの共同体・家族・子ども』北本正章/著 新曜社 1993年
p121~125「ロンドン孤児院の創設が物語るもの」
トマス・コラムが1741年にイギリスにおける最初の公的な孤児院を創設した経緯について書かれている。
(5)『英国児童福祉制度史研究 足枷から慈悲へそして福祉へ』桑原洋子/著 法律文化社 1989年
チューダー絶対王政期から現在までのイギリスの児童福祉制度を考察した本。エリザベス救貧法の頃からの貧窮児童への対策について書かれている。
「第3章 議員内閣制確立期の児童少年保護立法」
P60 4「非嫡出子・棄児保護制度」
「1739年、国王の勅許を得て、児童養育院がトーマス・コラムによって設立された。コラムはローザーヒーゼとロンドンの間を航海する船の船長であったが、その区間の棄児の多さに気づいた。」とあり。
(6)『世界の福祉 その理念と具体化 第2版』久塚純一/編 岡沢憲芙/編 早稲田大学出版部 2004年
「4 イギリス」
p90「エリザベス救貧法」
「イギリスの社会政策の起源は、救貧法(The Poor Law)に遡る。(略)中でも一六〇一年のエリザベス一世救貧法が重要で、①救貧税の強制課税、②監視員制度、③救済すべき貧民の定義などを定めた。(略)当時は教区が福祉行政の基本単位であり、地域団体活動が貧困児童の就労などを支援した。」
孤児院についての具体的な記述はないが、イギリスの福祉制度の歴史や概略についてまとめられている。
(7)『イギリス児童福祉発達史』J.S.ヘイウッド/著 内田守/訳 ミネルヴァ書房 1971年
序文に「この書物は、第一には孤児たちに与えられた社会の配慮や、その福祉的状態の背後にある、移り変っていく社会の状態や思想を、私の学生たちが探求するのを、援助するつもりで書いたものである」という著者の言葉あり。
巻末索引に「孤児」「孤児院」の項目があり、全体を通して孤児に関する記述が多く見られる。
(8)『概説子ども観の社会史 ヨーロッパとアメリカにみる教育・福祉・国家』ヒュー・カニンガム/著 北本正章/訳 新曜社 2013年
ルネッサンス以後500年間のヨーロッパ子ども史を俯瞰する概説書。p126~子どもの死亡率と遺棄、p151~慈善事業の世俗化、p164~慈善事業の壁、p194~家族的な施設など、ヨーロッパ子ども史の流れの中での子どもの救済のあり方、孤児院のかかわりが概観できる。
(9)『貧困の救いかた 貧しさと救済をめぐる世界史』スティーヴン・M.ボードイン/著 伊藤茂/訳 青土社 2009年
「第1章 前近代世界における貧困と慈善活動 原因、認識、戦略」
p70に以下の記述あり。前近代世界としか書かれていないので時期ははっきりせず。
・「(略)仏教の僧院やキリスト教の修道院が孤児院を運営し(略)」
・イスラームの地での話として、「ワクフは農地や商業活動からの利益を、病院や孤児院、食糧の配布のための基金のような慈善事業のために役立てるものである」
(10)『世界子ども学大事典』ポーラ・S.ファス/編 北本正章/監訳 原書房 2016年
・p302~305「孤児」の項
孤児の数、死亡率、親族との関係、社会からの支援などについてまとまっており、孤児院設立前に孤児がどのように扱われていたかについてもよくわかる。
p304からはヨーロッパ中世の状況について書かれている。西ヨーロッパでは孤児がその親族でない中産階級の人々によって孤児院に預けられていたこと、ヴェネツィアでは1811年に最初の孤児院が創設されたことなどが書かれている。
(最初の孤児院というのは、“ヴェネツィアで最初の”ということか思われる)
・p305~308「孤児院」の項
ほぼアメリカの事例だが、項目の初めにヨーロッパの孤児院について13行書かれている。一部抜粋。
「14世紀なかば、宗教組織、信心会、そして地方自治体は、疾病対策として、また増大する貧困への対策として、ヨーロッパのいたるところに孤児院と捨て子養老院を設立した。パリの信心会は、1366年に孤児院オピタル・ドゥ・サン=エスプリ=アングレーヴェを創設し、イタリアでは1444年にフィレンツェにイノチェンティ孤児院が開設された。(以下略)」
(11)『世界大百科事典 10 改訂新版』平凡社 2007年
・p284「孤児院」の項
一部抜粋「ヨーロッパでは孤児の保護は宗教や私的慈善の立場から、教会やギルドなどによって古い時代から行われていた。イギリスの場合、両親の死亡その他の理由で扶養されなくなった乳幼児は、教区によって養育された。16世紀末期以後、イギリスのロンドン、ブリストル、シュルーズベリーの都市では孤児院が設けられたこともある。(略)孤児院は児童福祉全体の発展なくしては、独自の社会的施設足りえなかったのである。イギリスで孤児や乳幼児保護が本格派するのは1908年の児童法制定以後であり、社会事業としての孤児院の歴史はそれほど古いものではない。」
(12)『孤児と救済のエポック 16~20世紀にみる子ども・家族規範の多層性-』土屋敦/編著 野々村淑子/編著 勁草書房 2019年 【埼玉県立図書館所蔵】
p19~72 16世紀イギリスにおける貧民救済の再編と孤児院について詳しく記述されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 社会福祉 (369 10版)
- 家族問題.男性.女性問題.老人問題 (367 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 孤児
- 孤児院
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000327866