レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年10月27日
- 登録日時
- 2022/11/16 09:49
- 更新日時
- 2022/12/17 13:14
- 管理番号
- 2224
- 質問
-
解決
『幕末・維新のかりや』p84の表10にある「青中紙」とは何のことか
- 回答
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青、中、紙を含む「青中紙」に近い語の記載のある資料、「青中紙」と表記のある資料はあるが、「青中紙」が何のことかわかる資料はみつからなかった。また、用法や見た目の特徴などから「青中紙」と言えそうなものはいくつかあるが、断定できる記述のある資料を見つけることはできなかった。
【参考文献】
①『幕末・維新のかりや かりやにおける庶民のくらし』(A23/70/)
②『刈谷町庄屋留帳 第20巻』(A234.4/カリ/20)
③『愛知県史 資料編29 近代』(A201/アイ/シリ-29)
④『刈谷市史 第7巻 資料 近代』(A234.4/カリ/7)
⑤『刈谷町庄屋留帳解説 第11巻より第20巻まで 11』(A23/172/)
⑥『染織事典 日本の伝統染織のすべて』(753.0/ナカ/)
⑦『日本史色彩事典』(757.3/マル/)
⑧『和紙つくりの歴史と技法』(585.6/クメ/B)
⑨『紙の大百科』(585/ビ/)
⑩『和紙のすばらしさ 日本・韓国・中国への製紙行脚』(585.6/ハン/B)
⑪『和紙文化研究事典』(585.6/クメ/B)
⑫『尾張藩紙漉文化史 御用紙漉職・辰巳家を中心として』(A585/コウ/)
⑬『藩札 江戸時代の紙幣と生活』(A337/タチ/)
⑭『国史大辞典 3 か』(210.0/コ/)
⑮『刃物大全 文明とともにあり続ける道具を知る』(581.7/ハモ/B)
《追記》参考情報
『東海の言葉辞典』(A80/12/)
p3「あおなか」の項に、・・・中等の青色をした、すきかえしの鼻紙。・・・
と記述あり
- 回答プロセス
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(1)対象資料を確認
①『幕末・維新のかりや かりやにおける庶民のくらし』(A23/70/)
➡明治7年の刈谷町の物産と出荷量・出荷額をあらわした表で、「青中紙 600東」と書いてある。
(2)「東」という単位を含め、誤植の可能性を考え、①の資料の記述より元の資料である②『刈谷町庄屋留帳 第20巻』(A234.4/カリ/20)の明治7年付近を探す。
➡明治8年の章に対象資料と一致するものを発見。「600東」ではなく、「600束」とわかる。
・②は翻刻された資料のため、さらに元の資料を調べる。
➡p1より、原本は全158冊で、刈谷市中央図書館にあること、一次資料タイトルは「御触状留帳」であることが分かる。当館所蔵なし。中身 の確認できず。
(3)『愛知県史』をブラウジング
➡③『愛知県史 資料編29 近代』(A201/アイ/シリ-29)…p4「愛知郡特有物産表(抄)」より
明治12年時点の上名古屋村(現:名古屋市西区)で、士族階級の者が「青中紙」を生産していたことが分かる。
これにより、「青中紙」というものは誤植ではなく、何かのものを指す言葉である可能性が高くなる。
(4)①の表に「物産品」と書かれていたことから、なんらかの刈谷の物産品であると推測し、明治期の刈谷の産業について書かれている資料を探す。
・業務システムにて「刈谷市史」で検索
➡④『刈谷市史 第7巻 資料 近代』(A234.4/カリ/7)…p350今川村に「紺屋」があったことが分かる。
(今川村は第九大区七小区。対象の表は第九大区六小区のものであるため、付近の村である)
・業務システムにて「刈谷町庄屋留帳」で検索
➡⑤『刈谷町庄屋留帳解説 第11巻より第20巻まで 11』(A23/172/)
➡p70…明治4年に「田畑勝手作り」が許可され、三草(藍・麻・紅花)が作られるようになった。
p84…明治7年の「物産品届け」と明治8年の「物産調べ」によると、「刈谷町には工業について見るべきものはなく…」とあり、「青中紙」は工業系のものではない可能性が高いことがわかった。
(5)(4)より「青中紙」が藍など染織に関わるものである可能性を考え、753(染織工芸)のコーナーをブラウジング
➡⑥『染織事典 日本の伝統染織のすべて』(753.0/ナカ/)…p11よりインジゴチンを「青藍」ということがわかる。
(6)色の名前から調べる。分類757(デザイン)のコーナーをブラウジング
➡⑦『日本史色彩事典』(757.3/マル/)…p115より以下のことが分かる。
・「中色」が明治期の中藍に相当し、江戸期の色であること
・「縹色(花田色)」が帛(きぬ)の青白色のものであり、ツキクサ(ツユクサ)で染めたことに由来すること。
・「青和幣(あおにぎて)」が青色の和幣のことを指すこと。
※和幣…榊の枝に掛けて神前にささげる麻や楮(こうぞ)で織った布。のちには絹や紙も用いた。
(7)「紙」(製紙工業)の棚をブラウジング
➡⑧『和紙つくりの歴史と技法』(585.6/クメ/B)より以下のことが分かる。
・p91… 平安期に写経用紙が黄・黄褐・茶・赤・青の色付きであった。
・p138…製紙は農民の農閑期の稼ぎとして行われていた。
・p153…障子紙に「中折紙」「諸口紙」「備中紙」を使用することが多い。
➡⑨『紙の大百科』(585/ビ/)
p90
・一枚漉きの「単箋」より厚く、単箋を二枚重ねて漉いた厚手の紙「二層紙」とも違う、表面が毛羽立った「青六匹」があることがわかる。
➡⑩『和紙のすばらしさ 日本・韓国・中国への製紙行脚』(585.6/ハン/B)
p76~
・「青花紙」滋賀県近江地方産の特殊な紙
・「青色紙」とくに上質の青色の紙
・「中紙」第2の中等級の紙につけた名
p81~
・「色紙」文字どおり色を付けた紙の意であるが、色のついていない種類の紙もある。
・色紙は単独の種類のもので、他の色を付けた紙と混同してはならない。
・色紙の30-40色の中には黒色と白色も含むが、この50年間に色紙の色は標準化された。
➡⑪『和紙文化研究事典』(585.6/クメ/B)
p60-61で「青」の付く紙を調べる
・「青紙」青色に染めた紙。染料は青花(ツユクサ)。標紙の青紙と同じもの。平安期には、青き紙、青き色紙、青き薄紙などと記され、和歌の料紙となっている。紺紙ともいい、近世には青土佐の別称でもあった。
・「青国栖(あおくず)」国栖紙を青く染めたもの。
・「青摺紙(あおすりのかみ)」1.山藍で文様を摺りつけ染めた紙 2.青い蝋紙のこと
・「青土佐」厚くて紺色に染めた紙で紺土佐ともいう。色のやや薄いものを青土佐といって紺土佐と区別することもある。近世初期から土佐でつくられ、のちに大阪、京都でもつくられたが、壁面の腰張り用として需要が多かった。
・「青波森下」青波は岐阜県山県市美山町の大字。
・「青花紙」露草の花の絞り汁で染めた紙。近江山田郷が特産地。
・「青表紙」藍で淡い青色に染めた表紙。
・「青本」表紙の色から名付けられた江戸中期の通俗絵入りの小型読物(草双紙)。
➡『尾張藩紙漉文化史 御用紙漉職・辰巳家を中心として』(A585/コウ/)
p372
・藩札はいずれも短冊形であり、厚い和紙を使用、額面別に白・赤・黄・茶・青などの色に分けていたことがわかる。
(8)「藩札」をキーワードに、337(貨幣)の棚をブラウジング
➡⑬『藩札 江戸時代の紙幣と生活』(A337/タチ/)
p11…藩札は短冊形、原料は楮、色は白が基本で青や黄色もあることがわかる。
p18…刈谷藩でも藩札が発行されていたことを確認。
(9)③の中で、上名古屋村で「青中紙」が生産されていたことから、名古屋の郷土史で「青中紙」に関する記述を探す。
→『新修名古屋市史 第4巻』(A250/シン/4)、『新修名古屋市史 第5巻』(A250/シン/5)…記述なし
『西区の歴史』(A251.2/ヤマ/)…記述なし
その他、本館所蔵の幕末から明治期の名古屋の産業に関する資料に、「青中紙」の記述は見当たらなかった。
(10)事典類で「青中紙」を探す
・百科事典(全種類)で「青中紙」「中紙」を引く→記載なし
・『日本史大事典』(210.0/ヘイ/1)で「青中紙」を引く→記載なし
・『国史大辞典』1(210.0/コ/)、『国史大辞典』10(210.0/コク/)で「青中紙」「中紙」を引く→記載なし
・『国史大辞典 索引』にて「青・中・紙」の付く言葉を探す
➡『国史大辞典 3 か』(210.0/コ/)
p51「懐紙」
一般に重ね折りにして懐中に入れ、平常の雑事に用いる紙を指す。陸奥紙、檀紙、杉原紙、薄様が通例で、薄様は青帖紙、紅帖紙のように
染色紙を一色あるいは数種の色交えの重ね紙として用い、下絵を描く場合もあった。和歌懐紙は、中世以降料紙として檀紙を用いるのが
通例となり、女子は薄様となった。
(11)レファレンス協同データベースにて「青中紙」で検索
➡「青紙」「白紙」に関するレファレンスがヒット
・記述資料の⑮『刃物大全 文明とともにあり続ける道具を知る』(581.7/ハモ/B)より、玉鋼に「青紙」「白紙」という用語があることが分かる。
(12)インターネットにて「青中紙」で検索
➡「青紙(玉鋼)」「青花紙」がヒット
インターネットにて「中紙」で検索
➡「グリーティングカードの中紙」「中質紙」「中性紙」「カーボン紙の2枚目」など似た語は出てきたが、「青中紙」そのものについてはヒットなし
- 事前調査事項
- NDC
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- パルプ.製紙工業 (585 9版)
- デザイン.装飾美術 (757 9版)
- 染織工芸 (753 9版)
- 参考資料
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- 刈谷市教育委員会/編. 幕末・維新のかりや かりやにおける庶民のくらし. 刈谷市教育委員会, 1969.
- 刈谷市教育委員会/編. 刈谷町庄屋留帳 第20巻. 刈谷市, 1988.
-
愛知県史編さん委員会 編集 , 愛知県史編さん委員会. 愛知県史 資料編 29 近代 6 工業 1. 愛知県, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077266915-00 -
刈谷市史編さん編集委員会 編 , 刈谷市. 刈谷市史 第7巻 (資料 近代). 刈谷市, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002117006-00 - 刈谷市教育委員会/編. 刈谷町庄屋留帳解説 第11巻より第20巻まで. 刈谷市, 1988.
-
中江克己 編 , 中江, 克己, 1935-. 染織事典 : 日本の伝統染織のすべて. 泰流社, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001893052-00 , ISBN 4884706137 -
丸山伸彦 編 , 丸山, 伸彦, 1957-. 日本史色彩事典. 吉川弘文館, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023576438-00 , ISBN 9784642014670 -
久米康生著 , 久米, 康生. 和紙つくりの歴史と技法. 岩田書院, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I009132425-00 , ISBN 9784872945034 -
ダード・ハンター 著 , 久米康生 訳 , Hunter, Dard, 1883-1966 , 久米, 康生, 1921-2015. 和紙のすばらしさ : 日本・韓国・中国への製紙行脚. 勉誠出版, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010561941-00 , ISBN 9784585032472 -
久米康生 著 , 久米, 康生, 1921-2015. 和紙文化研究事典. 法政大学出版局, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024016182-00 , ISBN 9784588321276 -
河野徳吉 著 , 河野, 徳吉, 1926-. 尾張藩紙漉文化史 : 御用紙漉職・辰巳家を中心として. 中日出版社, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007813366-00 , ISBN 4885192536 -
橘敏夫 著 , 橘, 敏夫, 1956- , 愛知大学綜合郷土研究所. 藩札 : 江戸時代の紙幣と生活. あるむ, 2013. (愛知大学綜合郷土研究所ブックレット ; 22)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024392524-00 , ISBN 9784863330641 -
国史大辞典編集委員会/編 , 国史大辞典編集委員会. 国史大辞典 3. 吉川弘文館, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005705931-00 , ISBN 464200503X -
紙の大百科. 美術出版社, 2001. (新デザインガイド)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002975362-00 , ISBN 4568502276 -
刃物大全 : 文明とともにあり続ける道具を知る. ワールドフォトプレス, 2013. (ワールド・ムック ; 965)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024137908-00 , ISBN 9784846529659
- キーワード
-
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- 染織(センショク)
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- 照会先
- 寄与者
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- 愛知県立大学学術研究情報センター 今井田様
- 国立国会図書館レファレンス協同データベース事業サポーター 寺尾隆様
- 《追記部》
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000324142