レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年01月18日
- 登録日時
- 2022/06/28 09:47
- 更新日時
- 2022/06/28 10:00
- 管理番号
- 福島一般3264
- 質問
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解決
薬師寺東塔をフェノロサ・アーネストが「凍れる」音楽と表現した意味。
- 回答
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当館で所蔵しております資料の中で、「フェノロサが薬師寺東塔を「凍れる音楽」と表現したことについて以下の4点の資料に言及が見られましたのでご案内いたします。
①『よみがえる白鳳の美 国宝薬師寺東塔解体大修理全記録』 加藤 朝胤ほか/著 東京 朝日新聞出版 2021.2
p.3 薬師寺管主である著者が昭和55年9月オーストリアの音楽家を案内した際に「(略)明治時代に訪れたアメリカ人のフェノロサは、東塔を見て各層にとりつく裳階屋根と大屋根が重なる特異な姿と、塔上の水煙に舞う飛天の流麗さから、音楽が凍ったようで『凍れる音楽』と讃えてくれました。」と説明しました。(略)」
②『フェノロサ 日本文化の宣揚に捧げた一生 上』 山口静一/著
東京 三省堂 1982.4
p.388 「(略)十九世紀中葉まで芸術は表象芸術-詩、絵画、彫刻-と非表象芸術-音楽、建築-とに大別されていたこと、これが最近ウィリアム・モリスによって提唱された新しい装飾美術の想像を契機に見直され、詩歌、音楽、絵画、彫刻、建築、装飾の六芸術はすべてその中に非表象的な美的要素を具有するという考え方が一般的になっている、とフェノロサは考察する。(前者を解説するくだりに彼は建築を称して「音楽の凍りて形に現はれたるもの」としている。薬師寺東塔を「凍れる音楽」と名付けたのはフェノロサだといわれるが、あるいはこの時に薬師寺を例に引いたのかもしれない。ちなみに「凍れる音楽」の美称を呈したのはドイツの哲学者シェリングであった。)(略)」
③「國文学解釈と教材の研究」 第47巻,第8号,通巻685号,2002.7 學燈社/[編] 東京 學燈社
p.108~ 「建築と音楽-比喩から比例へ」五十嵐 太郎/著の中で
「(略)文学的な比喩は多い。例えば、凍れる音楽。ドイツのシュレーゲル、シュリング、ゲーテらが、この比喩を使い、人口に膾炙することになった。日本ではフェノロサが薬師寺の東塔を「凍れる音楽」と形容したことが知られている。なるほど、薬師寺の塔のシルエットはリズミカルに凹凸を繰り返す。ちなみに、当時の美術批評家である黒田鵬心も、『日本美術史講話』(1914)で、薬師寺の塔を「氷れる音楽」と賞賛している。順番から言うと、黒田の方がフェノロサよりも早いようだ。(略)ただし、S.K.ランガーによれば、すでに古代ギリシアの詩人シモニデスが建築は凍結した音楽であると語ったらしい。(略)」
④『美学事始 芸術学の日本近代』 神林 恒道/著
東京 勁草書房 2002.9
p.64~65 「4 鴎外とシェリングと美学-明治美学史への試み-」の項で
「奈良の西ノ京にそびえる薬師寺の東塔は、いつの頃からか「凍れる音楽」とも讃えられ、日本で最も美しい塔のひとつに数えられてきた。大空に伸び上がる、ときには六層にも見える裳層をつけた優美な三重塔の姿にリズミカルな運動を感じ、その頂を飾る見事な水煙の透かし彫りに天女の奏でる妙なるメロディーを聴くのは、わたしばかりではあるまい。(略)「凍れる音楽」という表現は、シェリング独自の発想であるという説とFr・シュレーゲルから得てきたものである説とがある。いずれにしろ、この表現は薬師寺の東塔にのみ捧げられたものではなく、ロマン主義の時代に広くすでに知られていた言葉であったことを知るべきであろう。(略)さて問題は、だれがいつこのシェリングの言葉を東塔を讃える言葉として用いたのかということである。(略)フェノロサの言葉ではないかという通説が従来からある。(略)」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000317724