レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/01/06
- 登録日時
- 2022/03/31 00:30
- 更新日時
- 2022/03/31 14:32
- 管理番号
- 滋2021-0021
- 質問
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解決
ミステリー小説のトリックについて、世界で一番初めに「叙述トリック」を用いたミステリー小説を作った作家は誰か。またその作品名も知りたい。
また、日本で「叙述トリック」が広まるきっかけとなった、ミステリー小説の作家名・作品名も合わせて知りたい。
- 回答
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1.世界初の「叙述トリック」の作品
『海外ミステリー事典』の叙述トリックの項によると、スウェーデンの作家ドゥーセの『スミルノ博士の日記』が最初とされています。
2.日本で叙述トリックが広まるきっかけとなった作品
『日本ミステリー事典』の叙述トリックの項では、早くに叙述トリックを使った有名な作品としてクリスティの『アクロイド殺人事件』をあげ、「しかし同時に、このトリックはアンフェアであるという議論も起り、世界的に大きな反響を巻き起こした。」とあります。
『アガサ・クリスティー百科事典』では、この作品の日本における翻訳について、戦前すでに翻訳されていた[昭和4年・松本恵子訳・平凡社]が、江戸川乱歩が1951年に「クリスティーに脱帽」(『江戸川乱歩全集 19 続・幻影城』に収録)という評論を発表し、『アクロイド殺し』を代表作として絶賛したことにより、日本でのクリスティ人気が確実なものとなり、その後多くのクリスティ作品が翻訳・出版されたとしています。
なお、質問の「日本で「叙述トリック」が広まるきっかけ」が「叙述トリック」を使った作品であれば、『日本ミステリー事典』によると、「必ずしもトリックとまではいえないにしても、語り口に斬新な工夫をしたものに都筑道夫の『やぶにらみの時計』(1961)、『誘拐作戦』(1962)があり、トリックとして取り入れたものに小泉喜美子の『弁護側の証人』(1963)、斎藤栄の『紅の幻影』(1969)などがある。」と、紹介しています。
これらの作品は、日本で叙述トリックが使われた早い例と言えますが、特定の作品がきっかけとなったかどうかは確認できませんでした。
また、作家・評論家の笠井潔は、評論『探偵小説と叙述トリック』において、探偵小説形式の創始者といわれるエドガー・アラン・ポオに『お前が犯人だ』という叙述トリック小説があり、ドゥーゼやクリスティが出発点ではないと述べています。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 英米文学 (930 8版)
- 参考資料
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- 海外ミステリー事典 権田萬治∥監修 新潮社 2000年 R-9093-コ p.152
- 日本ミステリー事典 権田萬治∥監修 新保博久∥監修 新潮社 2000年 2-9103-コ p.159-160
- アガサ・クリスティー百科事典 数藤康雄∥編 早川書房 2004年 G-HM-1 p.76-77
- 江戸川乱歩全集 19 続・幻影城 江戸川乱歩∥著 講談社 1979年 2-9136-エ p.194-199
- 探偵小説と叙述トリック 笠井潔∥著 東京創元社 2011.4 3-9023-カ p.33
- 推理小説雑学事典 慶応義塾大学推理小説同好会∥著 広済堂出版 1976年 2-9083-ケ
- キーワード
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- ミステリー小説
- トリック
- 叙述トリック
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- ※『推理小説雑学事典』には、「読者を手玉にとるどんでん返しの妙」という項目では、「このトリックを最初に考えだしたのは、ノルウェーの作家ヴァン・ドゥーゼといわれている。」との記述があるが、他の事典ではドゥーセはスウェーデンの作家とされています。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000314355