レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2022/03/30 10:37
- 更新日時
- 2023/02/07 10:47
- 管理番号
- 北九2022八幡08一般
- 質問
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解決
建築などで見られる猪の目は、いつの時代からあるのか書かれている資料を知りたい。
- 回答
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以下の資料を提供しました。
『日本国語大辞典 縮刷版』
『古建築の細部意匠』
『中国建築の日本建築に及ぼせる影響』
『寺社建築の鑑賞基礎知識』
- 回答プロセス
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まず当館にある辞典から調べました。
『日本国語大辞典 縮刷版』では「猪目」についての項目がありました。
用例文で太平記、義経記等があり、その時代からこの形があったことがわかります。
そして「猪目懸魚」の項目では、建築で、猪目を掘った懸魚とありました。
また、この辞典で「太平記」を調べると 不明だが応安年間(1368~75)に成立かと書かれています。
「義経記」は成立年代不詳とありました。
『岩波日本古典文学辞典』では「太平記」は成立年代未詳とあり、応安年間(1368~75)頃に一旦まとめられたと思われると書かれています。
「義経記」は成立年代未詳だが、室町中期頃の成立かと書かれています。
『建築大辞典』の「猪の目懸魚」の項目でも、主として社殿・和様建築に用いられることから、日本建築や寺社建築についての本を調べました。
『古建築の細部意匠』に猪の目懸魚の記述がありました。「鎌倉以降ずっと見られるが平安以前の懸魚の実例なく、直接の資料はないが、前述の天寿国曼荼羅繍帳の鐘楼の例でも猪の目らしく表現されているので、最も古くからの懸魚の形と考えられる」とあります。
また、寺や神社等の猪の目懸魚の図があり、鎌倉時代に作られた峯定寺本堂逗子は現存最古の例であると書かれています。
グーグルで「天寿国曼荼羅繍帳」を調べると中宮寺のHPに日本最古の刺繍遺品として天寿国曼荼羅繍帳の記述があり、622年に作られたことがわかります。
『中国建築の日本建築に及ぼせる影響』では、猪の目のない懸魚は室町以前には極めて稀であると書かれています。
猪の目は平安時代の鳳凰堂金具にもあり、正倉院御物の忍冬文を以て形成した器具にもあるとあります。
『寺社建築の鑑賞基礎知識』には、懸魚の項目で、猪目懸魚は最も古くあったと思われるとありました。
香川県の本山寺本堂(1300年)逗子は、左右の切り込み(渦)の幅が広く巻き込みの浅いものが古いとあり、江戸時代の特徴も書かれています。
また、南北朝時代に建立された不退寺本堂の猪目懸魚や1699年の加茂神社本殿の猪目懸魚は、写真付きで紹介されています。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 『日本国語大辞典 縮刷版 第1巻 あ〜うのん』日本大辞典刊行会/編 小学館 1979 ((当館請求記号R813/ニ/1 当館資料番号0320442387 P10005))
- 『日本国語大辞典 縮刷版 第6巻 しよた〜たくん』日本大辞典刊行会/編 小学館 1980 ((当館請求記号R813/ニ/6 当館資料番号0320442437 P1338))
- 『日本国語大辞典 縮刷版 第3巻 かつま〜くるん』日本大辞典刊行会/編 小学館 1980 ((当館請求記号R813/ニ/3 当館資料番号0320442403 P530))
- 『岩波日本古典文学辞典』久保田 淳/編集 岩波書店 2007.2 , ISBN 978-4-00-080310-6 ((当館請求記号R910.2/ク 当館資料番号0312192081 P220,91))
- 『建築大辞典 第2版』彰国社/編 彰国社 1993.6 , ISBN 4-395-10015-5 ((当館請求記号R520.3/シ/ 当館資料番号0310205943 P95))
- 『古建築の細部意匠 訂正3版』近藤 豊/著 大河出版 1972.6 529/コ ((請求記号529/コ 資料番号0411144884 P98))
- 中宮寺 http://www.chuguji.jp/oldest-embroidery/
- 『中国建築の日本建築に及ぼせる影響』飯田 須賀斯/著 相模書房 1953.10 ((請求記号521/イ 資料番号0110713047 P236))
- 『寺社建築の鑑賞基礎知識』浜島 正士/著 至文堂 1992.10 , ISBN 4-7843-0113-5 ((請求記号521.8/ハ 資料番号0310175765 P193-194))
- キーワード
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- 猪の目
- 日本建築
- 寺社建築
- 懸魚
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000314304