レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年11月18日
- 登録日時
- 2022/03/23 12:41
- 更新日時
- 2022/08/12 20:02
- 管理番号
- 県立長野-21-249
- 質問
-
未解決
海軍関係で使われていた無線通信機についての資料を探している。
昭和20(1945)年頃に使われていた「95式短4号送信機」又は「95式短5号送信機」の、図または写真が載っている紙媒体の資料が見たい。
- 回答
-
・文章による記述があるものが数点見つかったが、絵図や写真などの掲載された紙媒体の資料は確認できなかった。
・インターネット上のものだが、出典が明確な状態で写真を見ることができる資料として、アメリカ海軍の公式サイトである「Naval Histoly and Heritage Command」の「Online Reading Room」を確認した。
- 回答プロセス
-
1 ホームページの確認
質問者が該当無線機について見たというインターネット上のホームページを確認する。
・「日本帝国陸海軍無線開発史」という個人サイトの中に該当するものを確認。「8-3 短波送信機」というページに調査対象の無線機について解説しているものがある。 95式短5号については紙の資料を撮影したと思われる画像が掲載されているが、ページ下部に記載されているどの資料に由来するものなのか出典については明記されていない。
・参考文献の記述として以下を確認。
「本邦軍用無線技術の概観 大西 成美
日本無線史 第十巻 電波監理委員会
日本無線社史 55年の歩み
船の科学 シリーズ・日本の艦艇・商船の電気技術史 艦艇の無線兵器および電波兵器」
2 上記の資料の所蔵などを確認する。
(1)『日本無線史 第10巻 海軍無線史』 電波監理委員会編 電波監理委員会 1950【548/21/10】
・第三章 無線技術の研究と機器の造修 第十一節 短波送信機と指向式空中線(p.322)に「一一、九五式短三号、短四号、短五号送信機」という項目で記述あり。
「支那事変以来、艦船の短波通信は主として本機に依ったものである。
これらの送信機は主として電波安定性の見地から、
電力の大きな増幅段で電鍵操作を行っていたが、
間隙受信を容易ならしめるために、第一増幅器で電鍵操作を行うこととし、
これに伴う改装を現装兵器にも実施することになり、
この改造を施したものを九五式短三号、短四号、短五号送信機改一と呼ぶこととした」
「又波数変動(初期漂変その他)を更に少しからめる目的から、
原振管UX二〇二A(三極管)をUY八〇七(ビーム管)に換え、所要の改造を施したものを、
九五式短三号、短四号、短五号送信機改二と呼んだ」
写真は確認できなかった。
・第三章 無線技術の研究と機器の造修 第一節 総説(p.283)
生産社が分かる表があり、九五式短四号は「東京芝浦電気株式会社通信機製造所」と「日本無線電信電話株式会社三鷹工場」、九五式短五号は「安立電機株式会社麻布工場」と記載されている。付録第二 海軍無線兵器一覧表には「真空管式短波送信機」として掲載あり。改/改二の記載は確認できず、写真や図も確認できなかった。
・同じ『日本無線史』の第11巻【548/21/11】には「第二章 無線通信機器製造会社」の各節に会社の概要や開発機器についての記述がある。p.39に安達電気株式会社の記述あり、写真や図会は無し。
「(ニ)艦船用送信機
これらは海軍技術研究所、海軍艦政本部、軍需省等よりの受注に係り、昭和七年以降製作した。
海軍の各艦船及び基地に使用されたものである。
「(2)CC四A金物(九五式短四号送信機) 前記CC四を改造し電信のみに使用される。
昭和十年以後毎年製作された。」
「(3)CC五A金物(九五式短五号送信機) 主発振電力増幅式短波送信機で、
出力二五〇w、周波数範囲A1三・五Mc-一八Mcである。昭和十一年から製作された。」
p.43から日本無線株式会社(日本無線電信電話株式会社はこの会社の前身)、p.75から東京芝浦電気株式会社の記述がある個所になるが、対象の無線機に関する記述は確認できない。これらの記述から「CC四A金物」「CC五A金物」をデータベースやGoogleなどでのキーワードとして検索しても該当無し。
(2)「船の科学 シリーズ・日本の艦艇・商船の電気技術史 艦艇の無線兵器および電波兵器」
・雑誌『船の科学』は当館では未所蔵。
・国立国会デジタルコレクションで確認可能で該当する機種の記述は見られるが、写真や図の掲載は確認できなかった。
『船の科学』43(3)(497) 「日本の艦艇・商船の電気技術史-60-艦艇の無線兵器および電波兵器」
(3)「本邦軍用無線技術の概観」
・OPAC/NDLサーチ/J-STAGE/CiNii/信州ブックサーチ/Google検索では出版を確認できない。
・他の個人サイトでも出典として記述されているものを確認できるが「本邦軍用無線技術の概観 大西 成美」か「本邦軍用無線機技術の概観(著者;大西成美)」という表記のみで紙媒体で発行されているのかも確認できなかった。
(4)「日本無線社史 55年の歩み」
・OPAC/NDLサーチ/J-STAGE/CiNii/信州ブックサーチでは該当なし。
・Googleで検索を行うと「渋沢社史データベース」の検索結果として『日本無線55年の歩み : JRC』が候補に挙がる。こちらの書名であればNDLサーチ等で確認できるが、当館では未所蔵のもので確認できない。
3 Googleで機種名を検索
・「95式短4号送信機」
個人サイト「計測ミュージアム」がヒット。『軍用無線機概説』 石川俊彦 [1992] の画像が掲載されており、p.203に無線機の簡易的な説明が確認できるが写真等は無し。
・「95式短5号送信機」
『旧日本海軍の電波兵器開発過程を事例とした第2次大戦期日本の科学技術動員に関する分析』の文献資料一覧が掲載されたファイルがヒットする。「九五式短三,短四,短五号送信機並びに九七式特五号送信機改造に関する実験研究」という論文名が確認でき、researchmap上の「その2.文献資料一覧」から以下の記述を確認する。
「海軍技術研究所編『研究実験成績報告』 <史料調査会旧蔵→中央大学>」
「1925 年の海軍技術研究所改組に伴って,研究所全研究部の正式報告書として創刊.
全体の通し番号に加え,研究部ごとの番号もある.
後者の番号から研究部ごとの異なる名称もあった.
確認できたものには,造船研究部の「技研船報」,
航空研究部の「技研空報」,科学研究部の「技研科報」,
理学研究部の「技研理報」,材料研究部の「技研材報」,音響研究部の「技研音報」,
電気研究部の「技研電報」,化学研究部の「技研化報」がある.
所蔵分はその一部(詳細は調査中).
この内,電波兵器開発に関わる資料は『技研電報』となる.」
当館では所蔵がなく、国立国会デジタルコレクション等でも閲覧可能なものは確認できなかった。
4 国外で発行された資料
「本邦軍用無線技術の概観」をGoogleで検索した際にヒットした
「広島戦時通信技術資料館」というサイト内の「94式5号無線機」というページに「回路図については、米国の戦争省発行のJapanese Radio Set Model 94 Mark 5 Wireless Setに詳しく記述されており」という記述を確認したため国外で発行された資料についても調査する。
・「Japanese Radio Set Model 94 Mark 5 Wireless Set」で検索
「TME 227A JAPANESE RADIO COMMUNCATIONS EQUIPMENT」というタイトルが確認できるPDFファイルがヒット。
p.14から「MODEL 95 (Short-wave 1-kw xmtr)」に関する記述と写真がある。直訳すると『95式(短波1kw送信機)』だと思われるので、調査対象のいずれかである可能性が高い。その後には「MODEL 95 MARK 4 IMPROVEMENT 1 (Short-wave 500-watt xmtr)」のものもあり、訳は『95式4号改(短波500w送信機)』だと思われる。こちらも記述と写真あり。
置かれているサイト自体は公的なものではなく、資料に含まれる表記などからカルフォルニア大学が関係していると思われるが所蔵など詳細が確認できなかった。
・上記の形式に倣ってキーワードを「Japanese Radio Set Model 95 Mark 5 Wireless Se」と変え検索。
「Naval Histoly and Heritage Command」の「Online Reading Room」に『Japanese Radio Communications and Radio Intelligence CinCPOA 5-45』という資料の記述や写真が掲載されたページを確認。「Type 95 Mark IV Modification 1 Shortwave Transmitter.」という説明がついた写真があり、これは『日本無線史 第10巻 海軍無線史』において確認出来る「九五式短四号送信機改一」という機種と同じものだと思われる。
・「History Hub」にてキーワード「Technical Manual」の検索から「Seeking Technical Manuals with WWII Building Designations and Codes」を確認し、その内容から「United States Army Technical Manuals: A Resource Guide and Inventory」にこの資料についての手掛かりがないかを見るが「11-227」の項目は「Signal Communication Directory German Radio Communication Equipment」であり日本に関係した記述がない。
5 その他
自館OPAC/NDLサーチ/国立国会デジタルコレクション/CiNii/MagazinePlus/レファレンス協同データベースで、複数のキーワードでの検索を試したが図や写真の掲載がある資料は確認出来なかった。
*使用したキーワード*
「軍 無線」「大西成美」「無線兵器」「軍用無線」「短四号」「短五号」「電波兵器」
「95式」「94式」「CC四A金物」「CC五A金物」など
<その他調査済み資料>
国立国会図書館 リサーチ・ナビ「近代日本軍事関係文献目録」
『帝国日本の気象観測ネットワーク3 水路部・海軍気象部』
山本晴彦著 農林統計出版 2017【451.2/ヤハ/3】
『船舶無線』 荒川大太郎 誠文堂新光社 1943 【548/3】
『帝国日本の技術者たち』 沢井実著 吉川弘文館 2015 【502.1/サミ】
『日本無線史 第13巻 無線関係条約法令及び年表』 電波監理委員会編・刊 1950【548/21/13】
『国家総動員史 下巻』 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1986【391/29/12】
『大日本帝国陸海軍 軍装と装備 明治・大正・昭和』 渡辺辰雄ほか著 1973【390/75】
『通信工学大鑑〔6〕無線編』 電気通信学会編 電気書院 1948【547/1/6】
『戦後の通信工業』 日本電気通信工業連合会編 日本電気通信工業連合会 1959【547/20】
『東芝百年史』 東京芝浦電気[編] 東京芝浦電気 1977【540/50】
『警察資料年鑑 1967年版 図版』 警察資料通信社編・刊 1967【317.7/26/1】
『日本の警察』 日本の警察編纂会編 警察制度調査会 1968【317.7/29】
『日本陸軍兵器沿革史』 吉永義尊著 1996【396/56】
『日本軍事技術史』 林克也著 青木書店 1957【559/8】
『東京電氣株式會社五十年史』東京芝浦電氣株式會社マツダ支社編輯 東京芝浦電氣 1940【540.9/17】
『トヨタ技術 = Toyota engineering』4(3)
『列国新兵器整備一覧』
『決戦産業人読本』大日本電気会, 日本電気新報 共編 日本電気新報出版部 1944
『月刊フェスク』(通号 204)日本の通信技術発達史 日本陸海軍の秘密電波兵器(1)
『月刊フェスク』(通号 205)日本の通信技術発達史 日本陸海軍の秘密電波兵器(2)
『月刊フェスク』(通号 206)日本の通信技術発達史 日本陸海軍の秘密電波兵器(最終回)
『電波時報』11(9)(157) アマチュアの夢
『軍事と技術』(11月號)(83)携帶用同時送受無線電話器の考案
『軍事と技術』(5月號)(149)今次事變に於ける無線通信の利用
『軍事と技術』(5月號)(197)無線兵器設計の趨勢
『船の科学』43(8)(502) [47]日本の艦艇の電気技術史その後--海軍無線・電波技術小史
『船の科学』43(10)(504) [47]日本の艦艇の電気技術史その後--海軍無線・電波技術小史-2-
『船の科学』43(12)(506) [47]日本の艦艇の電気技術史その後--日本海軍無線・電波技術小史-3-
『船の科学』44(3)(509) [47]日本の艦艇の電気技術史その後--日本海軍無線・電波技術小史-4-
『船の科学』44(6)(512) [47]日本艦艇の電気技術史その後--日本海軍無線・電波技術小史-5-
『科学戦争』
『機械化』(6月號)(19) 電氣と電氣通信兵器特輯
『機密兵器の全貌』
『芝浦製作所六十五年史』 東京芝浦電気株式会社 [編] 東京芝浦電気 1940
『東京芝浦電気株式会社八十五年史』 東京芝浦電気株式会社総合企画部社史編纂室編 東京芝浦電気 1963
アジア歴史資料センターの資料検索
- 事前調査事項
- NDC
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- 通信工学.電気通信 (547 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 海軍
- 無線機
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000313948