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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

提供館
(Library)
県立長野図書館 (2110021)管理番号
(Control number)
県立長野-21-121
事例作成日
(Creation date)
2021年09月12日登録日時
(Registration date)
2021年09月08日 13時40分更新日時
(Last update)
2021年09月17日 19時49分
質問
(Question)
下伊那郡阿南(あなん)町和合地区で、ひな祭りに土雛も一緒に飾る習慣について、いつごろから始まった習慣かわかるものはあるか。周辺に土雛を作った工房などはないことから、どこからか伝わった習慣なのか。
回答
(Answer)
この習慣について、いつごろから始まったかなどを明記した資料は確認できなかったが、次の資料を紹介した。
・『下伊那史 第8巻』 下伊那教育会編 下伊那郡誌編纂会 2006 【N243/18/8】p.1216の「ひな祭り」には、
    (-前略-)ひな人形が現在のようなきれいな内裏びなになったのは、室町時代に中国から胡粉をぬ
   る技術が渡って来てからで、それも一般の上流階級に広まったのは、江戸時代の中期からである。そ
   れ以前は人間の形代(かたしろ)(代理)としてのもので、紙や板で作った素朴で粗末なものであ
   り、毎年これを川に流したり、辻に捨てたりしていた。庶民にとってのひな人形は、ずっとこの押し
   びな・土びな・板びな・紙びなであった。(-後略-)
とあった。
また、事前調査事項にあったとおり、『阿南町誌 下巻』阿南町誌編纂委員会編 阿南町 1987【N243/141/2】p.916に、
    雛祭りは大下条・富草・和合では三月三日に行い、新野では四月三日に行う。嫁に来て初めての女
   の子が生まれると、里方でお内裏様を持ってきて飾る。今は段飾りが多くなったが以前は美濃焼のも
   のや松本雛をもらい、嫁に行くときには持たせてやった。旧くなったお内裏様は川へ流した。
    初嫁様はこの日訪問着を着て、姑に連れられて手土産を持ち親戚回りをする。昔は菱餅を持って行
   くと、行った先では御祝いに足袋などをくれて、嫁は里帰りをした。こうした親戚回りは今は行われ
   なくなった。(-後略-)
とある。
 また、同様の調査済資料の『長野県史 民俗編』では、和合での雛飾りの様子は不明だが、『長野県史 民俗編 第2巻(2)南信地方』
長野県編 長野県史刊行会 1988 【N209/11-3/2-2】p.322に
   おひな様売りが三月前に下伊那郡阿南町新野から来た。(和合)
とあった。また、p.546 には「ひなを飾る(和合)」とあり、p.548に新野の例として、
    初めて女の子が生まれると、里方でお内裏様を持ってくる。この人形を飾る。今は段飾りをもらう
   が、昔は瀬戸物びなや松本びなをもらった。ひなは大切にしておき、嫁に行くとき持たせてやる。こ
   の日、初嫁様は訪問着を着て親類まわりをした。しゅうとめに連れられてひし餅を持って歩いた。
   行った家では嫁に足袋などをくれた。親類まわりは一八年くらい前にやめてしまった。この日嫁は里
   帰りをする。(新野)
とあった。ここでは、瀬戸物とあるため、いわゆる土雛とは異なるかもしれないが、一種の土人形ととらえられるかもしれない。

・『日本人形玩具大辞典』 日本人形玩具学会 東京堂出版 2019 【759.03/ニホ】に、
  p.25 「犬山土人形」
  p.218-220 「土人形」「土雛」
  p.258-259 「名古屋の土人形」
  p.365-366 「三河の土人形」
などの項目があり、「土雛」のなかには、
    (-前略-)大蔵永常の『広益国産考』(一八四四)には「今尾州遠州辺の農家にては三月節句に土
   人形を求めて衣装雛と交へ飾れり。貧家にては土人形斗り飾れり。(以下略)」とある。当時の俳句
   や川柳にも土雛や土人形が詠まれており、(-後略-)
とあり、小林一茶の句がいくつか紹介されている。また、江戸時代後期には土雛が庶民の間に普及し飾られていたことが書かれていた。また、発掘調査では大名屋敷でも雛を含む土人形が発掘されているという記述もあった。
 この出典である「広益国産考」(大蔵永常著 1859年(安政6)に全8巻版行)の「雛」は巻之六 にあり、『日本農書全集 第14巻』 校註飯沼二郎 農文協 1988 【610.8/14/14】 に所収されている。p.271-292に該当する。全国の片田舎にも雛を飾る習慣があり、衣装雛を飾れない家では土雛を求めるので、現地で作れば安価で農家の収入にもなる旨の記述になっている。また、農文協の有料データベース「ルーラル電子図書館」でも閲覧することができる。
 なお、原本の画像は、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている。『広益国産考 巻之六』 大蔵永常著 前川文栄堂 (2-15コマ)【最終確認2021.9.12】

・『ふる里の土雛』 新井智一著・刊 1989 【759.9/34】 巻頭写真p.13-17, p.38-41
    中部地方の産地の人形の写真、産地ごとの特徴について書かれている。
・『全国郷土人形図鑑』 足立孔著 工芸出版 1982 【759.9/アト】p.103-136
    中部地方の産地とそれぞれの人形の写真、三河土人形についての解説がある。
・『ふるさと玩具(おもちゃ)図鑑』 井上重義著 平凡社 2011 【759.9/イシ】
  p.64-65 岐阜県  高山人形 市原人形
  p.70-74 愛知県 名古屋人形 大浜人形 乙川人形 起人形
・『おもちゃのふるさと図鑑』平田嘉一著 東寺庵文庫 1985 【759.9/31】
  全国の郷土玩具について、県別の記述になるが、土人形を取り上げるケースが多々見受けられる。

 『阿南町誌 上巻』の交通の箇所を見ていくと、天竜川による通船と、下条街道が多用された可能性が考えられる。『阿南町誌 下巻』の芸能では、三河万歳も冬季によく訪れていたようで、保存されている土雛の系統によっては、名古屋や岐阜県の系統と三河地方の系統とでどの経路が取られたのかも見えてくるかもしれない。
今回調査した資料には、流布について明言したものはなかったので、今後の研究を待つことになると思われる。
回答プロセス
(Answering process)
1 事前調査済みの資料のうち、県史、町誌を確認して、概略をとらえる。

2 地域資料をかなり丁寧に調査されているため、雑誌文献を調査する。当館の郷土史研究の雑誌の記事検索を「土雛」「土びな」「雛人形」「土人形」などで検索する。

3 全国的な土人形についての資料(NDC分類759)を見ていく。各地域によっての特色が紹介されているため、現存している土雛の産地特定のための手掛かりの一つとして紹介することにする。問い合わせにもあったが、地域的に近い愛知県、岐阜県の産地を中心に紹介した。

4 『日本人形玩具大辞典』に引用されていた大蔵永常著『広益国産考』の原文を確認する。国立国会図書館デジタルコレクションのほか活字翻刻、現代語注のついた『日本農書全集 第14巻』を紹介する。

<調査済み資料>
・『阿南町の民俗 振興山村緊急調査』 長野県下伊那郡阿南町教育委員会 1971【N382/24】
    p.232-  交通・運搬についての総論が記されている。
・『中野土びな物語』 高橋達男編 北信ローカル出版センター 1990 【N759/33】
・『中野の土人形』改訂版 小古井嘉幸編 日本土人形資料館 1994 【N759/9a】
    中野市に伝わる土人形の系統が伏見系と三河系があることから、両者の特徴の記述がある。また、
   p.28-30に人形の産地の地図がある。
・小古井義幸著「中野土人形の生い立ち」 『高井』第58号 1982.1 p.32-39
・『江戸時代の土人形』 遠谷茂著 里文出版 2009 【759.9/エシ】
   岩手県の花巻土人形の写真が主の資料。
・『図説日本の人形史』 山田徳兵衛編 東京堂出版 1991 【759.02/ヤト】
・『下伊那地方の中世末より近世への推移』 平沢清人著 平沢清人君論文刊行会 1969 【N243/68】
事前調査事項
(Preliminary research)
『阿南町誌 下巻』阿南町誌編纂委員会編 阿南町 1987
NDC
年中行事.祭礼  (386 10版)
人形.玩具  (759 10版)
参考資料
(Reference materials)
下伊那郡教育会/編 , 下伊那郡教育会. 下伊那史 : 江戸中期,後期 第8巻. 下伊那誌編纂会.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059132637-00  (【N243/18/8】p.1216)
日本人形玩具学会 編 , 日本人形玩具学会. 日本人形玩具大辞典. 東京堂出版, 2019.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029742344-00 , ISBN 9784490109092 (【759.03/ニホ】)
日本農書全集 第14巻. 農山漁村文化協会, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001398713-00  (【610.8/14/14】p.271-292)
阿南町町誌編纂委員会/編 , 阿南町町誌編纂委員会 , 阿南町町誌編纂委員会. 阿南町誌 下巻. 阿南町, 1987-10.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059270662-00  (【N243/141/2】p.916)
阿南町町誌編纂委員会/編 , 阿南町町誌編纂委員会 , 阿南町町誌編纂委員会. 阿南町誌 上巻. 阿南町, 1987-10.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059270661-00  (【N243/141/1】)
長野県/編 , 長野県 , 長野県. 長野県史 民俗編 第2巻(2)南信地方. 長野県史刊行会.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059103916-00  (【N209/11-3/2-2】p.322)
キーワード
(Keywords)
ひな祭り
雛人形
土雛
土人形
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
文献紹介 事実調査
内容種別
(Type of subject)
郷土
質問者区分
(Category of questioner)
図書館
登録番号
(Registration number)
1000304419解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
未解決
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