レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/07/09
- 登録日時
- 2021/08/03 00:30
- 更新日時
- 2021/09/24 11:04
- 管理番号
- 9945774
- 質問
-
未解決
両頭愛染明王にあげる経典を知りたい(以前、両頭愛染明王の経典というもののコピーを見た)。
- 回答
-
以下の資料を確認しましたが、両頭愛染明王にあげる経典は見当たりませんでした。
資料1~5によると、両頭愛染明王の典拠となる経典はないとされています。
「両頭愛染法」という修法についての次第書は残されているということですが(資料4)、あげる経典に関する情報は確認できませんでした。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。
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資料1:密教辞典編纂会 編『密教大辞典 第5巻 (ホーン) 改訂増補版 密教大辞典再刊委員会(種智院大学密教学会内)増訂』法蔵館、1969【HM2-1】
* p.2280「リョウズアイゼン 兩頭愛染」の項に、「一身兩頭の愛染明王、此明王の敬愛和合の本誓を表さんがために、口傳に依りて作りたる形像にして、經軌に本據なし。」とあります。「両頭愛染明王」が口伝によることは、『密教辞典』【HM2-16】の「愛染明王」の項(pp.1-2)にも記載されています。
* p.2179「ヤクジン 厄神」の項に、「經軌の說に非ず」とあります。
資料2:内田啓一「両頭愛染王の図像と変遷─愛染明王と不動明王─」(津田徹英 編『図像学 1 (イメージの成立と伝承 (密教・垂迹)) (仏教美術論集 ; 2)』竹林舎、2012.5、pp.237-251【K233-J14】)
* 両頭愛染について、「典拠となる経典・儀軌はみあたらない。」(p.237)、「偽経さえも成立することもなく(中略)典拠とすることもできず、せず、口伝という形で継承され、成立している」(p.246)等の記載があります。
資料3:編纂: 国訳秘密儀軌編纂局『新纂仏像図鑑 上』第一書房、1972【HM114-21】
* p.202掲載の図像「兩頭愛染明王」(252)について、p.204に「經軌の内に其の所說なく、古來口傳として之れを傳え」との記載があります。
資料4:鍵和田 聖子 「両頭愛染曼荼羅の成立に関する一考察 : 金胎不二の図像的表現を中心に (龍谷大学における第六十二回学術大会紀要(2))」(『印度學佛教學研究』60(2)=126:2012.3 pp.615-618【Z9-55】)
* 両頭愛染曼荼羅について、「中国伝来の儀軌類にはなく、行者の創作と考えられ」(p.615)との記載があります。
* p.617に高野山持明院蔵『両頭愛染法』が高野山大学図書館で保管されていること、同書が「両頭愛染法」という修法についての次第書であることが記載されています。
* J-STAGE( https://doi.org/10.4259/ibk.60.2_615 )で全文の閲覧が可能です。
*(参考)筆者により、両頭愛染に関する最も古い時代の記述とされる実運『玄秘抄』は、以下に収録されています。
高楠順次郎 編『大正新脩大蔵経 第七十八巻』大正一切経刊行会、昭和7【183-D18-T】◎
SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018版(SAT 2018)( https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2018/master30.php )にて本文閲覧ができます。
資料4の論文(p.615)の記載より、78巻390頁を参照すればよいことがわかるため、データベースの「検索結果」のタブにて「Vol」に「78」、「page」に「390」を入力した上で「Jump」ボタンを押下すると、右側に本文情報が表示されます。
資料5:鎌田茂雄 [ほか]編『大蔵経全解説大事典』雄山閣出版、1998.8【HM2-G27】
* pp.907-1006「付編③大蔵経と仏教美術(大蔵経図像部出典一覧表)」のpp.980-981「愛染明王」の項に「両頭愛染曼荼羅(中尊・両頭愛染明王)」が掲載されています。愛染明王には「出典」の欄に【経典・論疏等】【儀軌・修法作法等】が挙げられていますが、両頭愛染曼荼羅の項では出典として記載されているものはありません。
[主な調査済み資料およびウェブサイト]
国文学研究資料館 日本古典籍総合目録データベース( http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/G0001401KTG )
* 「全項目」の項に、例えば「両頭 愛染」と入力して検索すると、『両頭愛染明王法』等の9件の資料があることや所在に関する情報等を確認できます。そのうちの1件である「両頭愛染王」( http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_4386383 )については、【著作詳細】画面の下部「image」ボタンから、真福寺大須文庫所蔵の画像閲覧が可能なページ( 新日本古典籍総合データベース https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100142083/viewer )へ遷移できます。
鍵和田聖子『東密と台密の相互影響から見た受容と研鑽の展開』
* 資料4の著者による博士論文で、第五章第三節一項「金沢文庫蔵書に見られる両頭愛染に関する次第類」とあり、金沢文庫( https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm )の所蔵資料について解説がなされています。
* 本文は、龍谷大学機関リポジトリにて閲覧可能です。
https://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/TD00022029
鍵和田 聖子 「両頭愛染及び人形杵に関する次第類の比較と台密における受容」(『密教図像』(35):2016.12 pp.1-14,図巻頭1p【Z11-1223】)
* pp.3-7「二 、両頭愛染に関する次第類の分析」:金沢文庫と高野山の次第についての記載があります。
円空学会 編『円空研究 1』人間の科学社、1972【HM175-26】
* pp.56-119「写真特集 荒子観音」:p.57に、浄海雑記巻三に円空の奥書のある「両頭愛染法」という書物が残されていたとの記録があるが、同書は未発見との記載があります。
同様の記載は、棚橋一晃 著『奇僧円空 (人間の科学叢書)』【KB87-15】p.214にもみられます。
円空学会 編『円空研究 7(別巻 2) 新装普及版』人間の科学新社、2005.1【KB87-H11】
* 「円空年表試案」(pp.153-156)の1676年の項に「「両頭愛染法」を書写し、荒子観音寺に遺す。」との記載があります(p.154)。
京都国立博物館, 愛知県美術館, 東京国立博物館, 和歌山県立博物館 編『空海と高野山 = Kūkai and Mount Kōya : 弘法大師入唐一二〇〇年記念 第5版』NHK大阪放送局、2004.4【K16-L948】
* 重要文化財の「両頭愛染曼荼羅図」について、p.181に図版、p.296に解説が掲載されており、『覚禅鈔』によると両頭愛染が円仁請来であるとの記載があります。
* 両頭愛染が円仁請来であるとの記載は、『日本の国宝 3 (朝日百科)』【K81-G23】p.218にもみられます。
『大正新脩大蔵経 図像 第5巻』大正新脩大蔵経刊行会、1975【183-D18】
* 『覚禅鈔』巻80(pp.226-238)の「愛染法 上」、『覚禅鈔』(pp.238-260)の巻81「愛染法 下」を収録しています。「愛染法 下」には、「圖像No.285」として「愛染王(二面二臂像)」の図像があり、解説はpp.254-256に掲載されています。
大正新脩大藏經図像データベース( https://dzkimgs.l.u-tokyo.ac.jp/SATi/images.php )
* 第5巻の「圖像No.285」とその解説を閲覧可能です。第5巻を選択後、Indexをクリックし、Item listのボタンをクリックすると表示される中から「p.287:覺禪鈔」をクリックするとNo.285の図像、「p.286:覺禪鈔」をクリックすると解説のp.254が表示されます。
* 第12巻を選択後、IndexのTable of contentsで「厄神明王像(愛染不動合體)(兵庫武藤金太氏藏本)」を選択すると「厄神明王像」の図像を閲覧できます。
仏書刊行会 編纂『大日本仏教全書 第49冊 (覚禅鈔 第5)』名著普及会、1978.7【HM5-3】
* pp.1-26『覚禅鈔』「愛染 上」、pp.27-57『覚禅鈔』「愛染 下」が収録されています。p.54には、両頭で、右足で左足を踏んでいる図像が掲載されています。
『日本歴史地名大系 第29巻 1 (兵庫県の地名 1)』平凡社、1999.10【GB11-44】
* pp.279-280「門戸村」
武庫郡教育会 編纂『武庫郡誌』中央印刷・出版部、1973【GC172-54】◎
* pp.312-313「第二項 松泰山東光寺」
藤江寿美恵「厄除けと除厄法」(田中久夫 編『不動信仰 (民衆宗教史叢書 ; 第25巻)』雄山閣出版、1993.8、pp.193-227【HM85-E67】)
* pp.216-223の「三 不動明王と愛染明王」において、「一 東光寺(門戸厄神)の厄神明王」(pp.216-219)、「二 両頭愛染明王」(pp.219-221)、「三 不動法と愛染法」(pp.221-223)があります。「二 両頭愛染明王」において、『溪嵐拾葉集』の「佛母愛染明王最勝真言法」、『覚禅鈔』、『五十巻鈔』の「愛染王事」が参照されています。
高楠順次郎 編『大正新脩大蔵経 第七十六巻 』大正一切経刊行会、昭和6【183-D18-T】◎
* pp.615-617に『溪嵐拾葉集』巻第三十三中の「佛母愛染明王最勝真言法」が掲載されています。
* SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018版(SAT 2018)にて参照可能。
真言宗全書刊行会 編『真言宗全書 第31巻』真言宗全書刊行会、1935【188.5-Si467-S】◎
* p.923に『五十巻鈔』第四十八中の「愛染王事」が掲載されています。
豊島修 著『熊野信仰史研究と庶民信仰史論』清文堂出版、2005.4【HM241-H36】
* pp.169-185「第八章 摂津地域の霊場寺院と庶民信仰-鉢多羅山若王子釈迦院の厄神信仰」
中野展子 編著『唱えればかなう真言事典』国書刊行会、2019.8【HM141-M5】
有賀要延 編著『平成新編ダラニ大辞典』国書刊行会、1992.9【HM2-E48】
井阪 康二「儀礼(通過儀礼・年中行事)--時間の民俗 (特集 日本民俗学研究動向-2-(1992~1996))」(『日本民俗学』日本民俗学会 編 (通号 214)、1998.5、pp.30-42【Z8-260】)
菅原信海 編『神仏習合思想の展開』 汲古書院、1996.1【HK33-G12】
* pp.359-393水上文義著「伝・良助親王撰『与願金剛地蔵菩薩秘記』小考」
成田山仏教図書館蔵書検索( https://opac.jp.net/Opac/search.htm?s=oyVbDPKKwWKi9uAvgDYo-mDoANj )
ウェブサイトの最終アクセスは2021年7月9日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・高野山に問い合わせたところ、「鎌倉時代が起源なので、特に決まりが無いので愛染真言と、お不動真言を唱えるとよい」との事。
・兵庫県西宮市にある門戸厄神に聞いたところ「無い」と言われた(「厄神明王」と、「両頭愛染明王」は同じもの。)。
- NDC
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- 各宗 (188 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000302662