レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年07月17日
- 登録日時
- 2021/07/28 15:21
- 更新日時
- 2021/07/28 15:21
- 管理番号
- R1004454-73
- 質問
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解決
グリーン車の名称の由来について知りたい。
- 回答
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〇グリーン車について
・『日本大百科全書 7』小学館 1986.1 ISBN4-09-526007-6
*p669「グリーン車」とは、「日本国有鉄道の旅客業車のうち、リクライニングシートなど特別な設備をした座席車」のこと。運賃・料金の等級制度を廃止した1969年(昭和44年)5月以降、従来の一等車の設備を踏襲した。グリーン車の出入口付近には、四つ葉のクローバーをデザインした「グリーン・マーク」が表示されている。
・『鉄道用語辞典』高橋政士/編 講談社 2017.11 ISBN978-4-06-220769-0
*国鉄とJRで使用されていた語句を中心に、鉄道関連の専門用語~雑学的な用語まで9750語を収録。国鉄では車内設備と運賃により三段階に分けた三等級制を採用。1960年(昭和35年)に二等級制になり、二等車は一等車へ、三等車は二等車へ呼び名が変更した。1964年(昭和44年)から等級制が廃止され、モノクラス制(同額運賃で別途料金を収受する方式)が導入された。これにより一等車がグリーン車となった。二等車→一等車→グリーン車となったことから、等級の車体記号の一等・二等・三等に応じてイ・ロ・ハで等級を示していた三等級制の名残で、グリーン車を表す車両識別記号はイロハの「ロ」で表記される。
p201「グリーン車」について、「語源は二等級制時代の一等車車体帯がグリーン(淡緑色1号)に由来し、後に帯が消された」との記載あり。
→P266「三等級制」・P267「三等車」・P555「二等級制」・p556「二等車」・P514「等級制」・P716「モノクラス制」
・『国鉄の基礎知識』所澤秀樹/著 創元社 2011.6 ISBN978-4-422-24066-4
*1945年(昭和20年)~1986年(昭和62年)までの鉄道黎明期から民営化に至る国鉄のあゆみについて年代別に解説。
P164「昭和四四年(一九六九)国鉄再建に向けて」の「等級制運賃からモノクラス制へ」、P166「おなじみの“緑の四葉マーク”が登場」にて、1964年(昭和44年)5月10日の旅客運賃・料金の改定に伴い、明治以降の等級制運賃が廃止され、モノクラス制(等級別に設定された運賃を従来の二等運賃の料金に一本化して特別車両料金を徴収する形式)へ移行した。旧二等車を「普通車」へ、旧一等座席車を特別車両の「グリーン車」とした。P169グリーン車の「グリーン」とは、「二等級時代(昭和三五~四四年)の一等車の車体側面窓下に塗装されていた淡緑色(淡緑6号)の等級帯の色に由来する」との記載あり。グリーン車となった特別車両の外観は、乗降用ドアの横の一等車を表す「1」が取り払われ、グリーン車を表す「緑の四葉マーク」が貼られた(P165モノクラス制によりグリーン車となった二等級制時代の一等車の白黒写真の掲載あり)。
・『グリーン車50年の世界』 交通新聞社 2019.4 ISBN978-4-330-95219-2
*P46「グリーン車の誕生とその背景」にて、1969年(昭和44年)1月21日付けの『交通新聞』に「『グリーン車』現1等車の愛称きまる」の記事の中で、グリーン車の「グリーン」は「安全と快適さを表わすイメージに通じる」と掲載された。グリーン車を示すマークについては、国鉄の車両設計事務所でデザインされ、四つ葉のクローバーを連想させる図案で、旅客営業の担当者は「“幸運”にもめぐりあえます」という意味も含まれているとしている。 また、グリーン=緑は「緑信号になったら安全に横断歩道を渡れる」という安全・安心のイメージに通じているものであった。また、一等車の識別として急行や普通列車用の一等車の窓下に淡緑色の帯が入っていたことに起因していたとする説もあり。等級帯の色は三等級制では一等(白)・二等(青)・三等(赤)で切符の色も同じ。塗色の合理化により1940年(昭和15年)2月以降、三等(赤)が廃止。一等(白)は終戦後、占領軍に接収されたため、戦後復活した時には一等はクリーム色(黄色)の帯となった。二等車(のちの一等車・グリーン車)の青は二等級制に移行した1961年(昭和36年)7月以降に、帯色が淡緑色に変更された。グリーンは信号機にも使われる光の三原色と呼ばれるもので、ユーザーインターフェイス(情報をやり取りする方法)として好適の色とされており、等級帯の色に使用されていなかったのが緑だったことから淡緑色が採用され、それがグリーンという言葉へと繋がったのではないかという説についても記載あり。
・雑誌『鉄道ジャーナル 2018/11』鉄道ジャーナル社 2018.11.01
*「特集 グリーン車半世紀」。P38「グリーン車という名前」にて、公式名称ではなく対外的な愛称として特別車両を「グリーン車」と呼ぶ。呼び名の由来として、1968年(昭和43年)5月10日の運賃・料金改定以前(等級制)に使用されていた一等乗車券や一等車の帯が緑色だったことや、日本では緑色が好感が持たれていることからすんなり受け入れられて現在に至っているとの解説あり。ただ愛称で呼ぶことになった公式な経緯は不明。グリーン車の「四つ葉のクローバーのマーク」は、国鉄の特急ヘッドマーク等もデザインした国鉄内部のデザイナー・黒岩保美(くろいわやすよし)氏の名作。グリーン車の乗車券の色は、旧一等乗車券と同じ緑色で、グリーン車は一等車時代と同じ薄緑色(国鉄色名称で淡緑6号)の側面窓下帯が使用された。帯は1978年(昭和53年)10月に経費削減のため2色塗り等が廃止されたことを受けて、車体の等級を示す帯であるグリーン車の側面の緑帯も描かれなくなった。「フランスなどでは緑帯の客車が黄帯の客車より下等とされた時代もあった」。※国鉄時代のグリーン車の白黒・カラー写真多数あり。
・『国鉄色車両ガイドブック』広田尚敬/写真 誠文堂新光社 2021.2 ISBN978-4-416-62024-3
*1956年に作成された「国鉄車両関係色見本帳」を基に、1940年代以前・1950年代以降の国鉄車両の写真と使用されていた色について年代順に解説されている。「国鉄色(こくてつしょく)」とは、国鉄の正式用語ではなく鉄道ファンによって生み出された用語。国鉄が民営化されるまで国有鉄道の車両外部の塗装の色の呼び名。巻末の「国鉄色一覧・インデックス」のP218に「淡緑1号」は「薄緑色」で「気動車、近代化改装後の客車、近郊・通勤形電車などの客室張り」、「淡緑6号」は「若葉色」で「2等客車の飾り帯」との解説あり。
・『鉄道切符ガイドブック』澤村光一郎/著 ミリオン出版 2017.8 ISBN978-4-8130-2268-8
*国鉄や私鉄の約1300点の鉄道切符をカラーで掲載。国鉄の制度や切符の様式の変遷が分かる。「第2章 国鉄硬券・乗車券」にてp26「3等級時代 昭和35年6月30日まで」、p29「2等級時代 昭和35年7月1日~昭和44年5月9日」、p31「モノクラス時代 昭和44年5月10日~昭和62年3月31日」のカラーの鉄道切符の掲載・解説あり。p58モノクラス時代のグリーン券にて前期と後期の切符の様式の変遷をたどれ、グリーン券は初期のみ青色で発行されていたが、すぐに緑に変わったとの記載あり。
〇国鉄時代のグリーン車の車両写真について
・『国鉄車両形式集 3』広田尚敬/写真 山と溪谷社 2007.7 ISBN978-4-635-06823-9
*国鉄の車両を記録した形式写真集(図面・外観と内観の写真・解説)。P18「サロ183形」、P20「サロ183形 1000代」、P34「サロ185形」、P36「サロ185形 200代」、P38「クロ157形」、P50「サロ189形 サロ189形 100代」、P78「サロ165形」(グリーンの帯があるグリーン車はP36・P38・P78)。
・『国鉄車両形式集 4』広田尚敬/写真 山と溪谷社 2007.7 ISBN978-4-635-06824-6
*P32「サロ110形」、P34「サロ110形 350代 400代」、P36「サロ110形 500代 1000代」(1000代はブルー)、P38「サロ110」形 1200代」、P40「サロ110形 1300代 1350代」、P42「サロ111形 サロ113形」(サロ111形はグリーン)、P126「サロ211形」、P128「サロ210形」(グリーンの帯があるグリーン車はP32・P34・P36)。
〇黒岩保美(くろいわやすよし)について
・雑誌『鉄道ファン 2018/10』交友社 2018.10.01
*P104「没後20年 工業デザイナー 黒岩保美」の特集あり。運輸省鉄道総局所属の鉄旅客車のデザインを手がける工業デザイナーとして、1969年(昭和44年)に知名度の高い国鉄グリーン車のマークデザインを手がける。P105モノクラス制へ移行し従来の二等車がグリーン車へと呼び名が改められた際に、「四つ葉のクローバーをモチーフにした黒岩のデザイン案が車体の側面などに掲出された」とのこと(四つ葉のクローバーのマークのカラー写真掲載あり)。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
-
- 電車--日本
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000302296