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レファレンス事例詳細(Detail of reference example)

提供館
(Library)
三重県立図書館 (2110033)管理番号
(Control number)
30002030
事例作成日
(Creation date)
20201006登録日時
(Registration date)
2021年03月21日 00時30分更新日時
(Last update)
2021年04月23日 09時12分
質問
(Question)
童話『シンデレラ』の中で登場する「ガラスの靴」についての相談です。絵本などにおいて、一般的にハイヒールの形で「ガラスの靴」は描かれていますが、靴の形状について記述のある資料が存在するのかしりたいです。また、絵にハイヒールが描かれるようになった、きっかけや時期があればしりたいです。よろしくお願いします。
回答
(Answer)
 『オックスフォード世界児童文学百科』等の事典でシンデレラの項や関連する項目を調べましたが、靴の形状に関する記述は見当たりません。またGoogleで「シンデレラ」「靴」「ヒール」等のキーワードを使って検索してみましたが、手がかりになる情報は見つかりませんでした。参考図書やネット検索のほかには合理的な調査方法がなく、靴の形状について記述のある資料が存在するのかについてはお答えすることができません。

 そこでシンデレラの原話ではどうなっているのかを調べてみました。なお、ご質問の「一般的なハイヒール」というのは「ヒールが高いパンプス(履き込みが浅い靴)」と解釈しました


1.「靴」と訳されている語は、原文ではどうなっているか

 現在日本で知られているシンデレラの話は、ペローによるものとグリムによるものの大きく2つに分けることができますが、ガラスの靴が登場するのはペローによるものです。※1

 ペローは1697年に『Histoires ou contes du temps passé avec des moralités』(『過ぎし日の物語または昔話集』)を出版しました。その中の1編に「Cendrillon ou La petite pantoufle de verre」(「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」)があり、これがシンデレラの話です。※2

 日本語では「靴」と訳されていますが、ペローは題名でも本文でも「pantoufle」(パントゥフル)という語を使っています。「サンドリヨン」が書かれた17世紀において、パントゥフルはかかとを覆う部分がない形状をした「室内履き」のことを指します(英語ではslipper)。※3

 「サンドリヨン」の本文中ではそのパントゥフルの具体的な形には言及されていませんが、この話にはペローが仕えたルイ14世の宮廷のモードが取り入れられていることから※4、サンドリヨンが履いていたパントゥフルの形状についても当時の靴の資料が参考になると考えられます。

 当時の宮廷では男女ともにヒールのある靴をはいており、リゴーによるルイ14世の肖像画でもヒールの高い靴を履いた姿が描かれています。

(「世界の美術館」 https://artoftheworld.jp/musee-du-louvre/1898/

 このことから「サンドリヨン」が初めて出版された当時にはヒールが高い靴が存在していたことが分かります。ただし現在のパンプスのように履き込みが浅いものではなかったようです。


※1 ハンフリー・カーペンターほか『オックスフォード世界児童文学百科』原書房 1999.2 
   pp367~371「シンデレラ」の項

※2 同上

※3 藤倉恵子「指小辞を手がかりに読む「サンドリヨン」(その2)」
   京都産業大学論集. 人文科学系列,43,59-96 (2011-03) p91註11
   京都産業大学学術リポジトリで閲覧可能  https://ksu.repo.nii.ac.jp/

※4 新倉 朗子/訳『完訳 ペロー童話集』(岩波書店 1982.7)p278


2.原話には挿絵はあるか?あるとしたら靴はどう描かれているか?

 1697年に出版されたペローの『過ぎし日の物語または昔話集』には全8編の話が収められていますが、各話の冒頭に1枚だけ挿絵が付いています。「サンドリヨン」の挿絵には、急いで去っていくサンドリヨンと、彼女が落とした靴を拾う王子が描かれています。はっきりとは分かりませんが、王子が手に持っている靴はヒールがないか、あったとしてもとても低いように見えます。この挿絵はフランス版のウィキソースで見ることができます。


ウィキソース(フランス版)

https://fr.wikisource.org/wiki/Histoires_ou_Contes_du_temps_pass%C3%A9_(1697)/Original/Texte_entier


 また、フランス国立図書館のアーカイブで1777年版の『過ぎし日の物語または昔話集』の挿絵を見ることができました。こちらもサンドリヨンが走り去る場面が描かれていますが、床に落ちた靴はヒールがあることがはっきり分かります。

 ただハイヒールと言えるほどの高さではなく、履き込みが深い形をしており現在のパンプスのような形状ではありません。


フランス国立図書館(BnF)

「Illustrations de Histoires ou contes du temps pass? avec des moralit?s」

https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b2200095t/f2.item


3.シンデレラの絵本・挿絵について

 シンデレラの絵本や挿絵を網羅的に調べられる資料はなく、いつごろからハイヒールが描かれるようになったのか、そのきっかけは何かというご質問に対しても回答することができませんが、川田雅直『世界のシンデレラ』(PHPエディターズ・グループ PHP研究所(発売) 2019.6)が参考になります。

 著者である川田氏のシンデレラにまつわる絵本等のコレクションを紹介する本で、そのなかにシンデレラの靴の形状が分かる図版がいくつかありました。ざっと見たなかでは、「パンプス型のヒールがある靴」が描かれた図版のうち最も古いものは、1897年にアメリカで出版された絵本のものでした。ハイヒールとまでは言えませんが、ヒールがついた甲の浅い靴です。

 一方、その後に出版された絵本の図版において、パンプスでないものも確認できました。ある絵本でパンプス型の靴が描かれたからといって、以降のすべての絵本で同様に描かれたわけではないようです。



4.靴の歴史について

 実際にパンプスが登場した時期についても調べました。結論としては明確な答えは分かりませんでしたが、参考になる資料を見つけましたので紹介します。


市田京子「靴の歴史~ヒールの変遷から~」『かわとはきもの』No.154 2010.12

東京都立皮革技術センターHPから閲覧可能

http://www.hikaku.metro.tokyo.jp/Portals/0/images/shisho/shien/public/154_4.pdf



 市田氏の論考によると、ヒールは18世紀末から姿を消し、フラットソールの時期を経て19世紀半ばに再び戻ってきたそうで、1890年代には10cm近いハイヒールも登場しています。この論考はヒールのみに着目したもので、靴全体の形状には触れていないため、1890年代に登場したハイヒールがパンプス型かどうかは不明です。

この論考には日本はきもの博物館所蔵の靴の図版も掲載されており、「19世紀中頃から20世紀初期のヒールの変遷」として紹介されている靴の写真を見ると、1890年代末までの靴はいずれも履き込みが深くて甲が覆われているのですが、1900年頃のものとして示された靴はローヒールのパンプスです。この辺りがパンプスが登場した時期かもしれません。

先に1897年出版の絵本にパンプス型の靴が描かれていたことが確認できたことを考え合わせますと、1900年前後にパンプスが登場したことによって、シンデレラの靴にも「パンプス型のヒールが高い靴」が描かれ始めた可能性があります。しかし当館ではそれを裏付けられる資料は見つけられませんでした。

 


上記以外の参考文献

『フランスの子ども絵本史』石澤 小枝子ほか著(大阪大学出版会 2009.2)

『西洋コスチューム大全 普及版』 ジョン・ピーコック/著,[バベル・インターナショナル/訳] グラフィック社 2010.8

『ビジュアルでわかる世界ファッションの歴史5 くつ』ヘレン・レイノルズ/文,徳井 淑子/監修(ほるぷ出版 2015.2)

『西洋服飾史辞典』ルロワール著(臨川書店 1992)

『靴の事典』岸本 孝/著,市田 京子/監修(文園社 2000.5)
回答プロセス
(Answering process)
事前調査事項
(Preliminary research)
インターネットを使用して調べたり、持っている本を見たりしましたがいずれも形状についての記述はみつけられませんでした。
NDC 
参考資料
(Reference materials)
オックスフォード世界児童文学百科 ハンフリー・カーペンター/著 原書房 1999.2, ISBN 4-562-03104-2
ペロー童話集 完訳 [ペロー/著] 岩波書店 1982.7, ISBN 4-00-325131-8
世界のシンデレラ かわたまさなおコレクション 川田 雅直/著 PHPエディターズ・グループ 2019.6, ISBN 978-4-569-84289-9
フランスの子ども絵本史 石澤 小枝子/[ほか]著 大阪大学出版会 2009.2, ISBN 978-4-87259-262-7
ビジュアルでわかる世界ファッションの歴史 [5] ヘレン・レイノルズ/文 ほるぷ出版 2015.2, ISBN 978-4-593-58714-8
西洋コスチューム大全 古代エジプトから20世紀のファッションまで ジョン・ピーコック/著 グラフィック社 2010.8, ISBN 978-4-7661-2135-3
西洋服飾史辞典 ルロワール/著 臨川書店 [1992], ISBN 4-653-02257-7
靴の事典 下駄をはいた? 岸本 孝/著 文園社 2000.5, ISBN 4-89336-146-5
キーワード
(Keywords)
照会先
(Institution or person inquired for advice)
寄与者
(Contributor)
備考
(Notes)
調査種別
(Type of search)
内容種別
(Type of subject)
質問者区分
(Category of questioner)
登録番号
(Registration number)
1000295605解決/未解決
(Resolved / Unresolved)
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