レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年03月22日
- 登録日時
- 2020/09/22 16:25
- 更新日時
- 2020/09/22 16:54
- 管理番号
- 千県中千葉-2020-01
- 質問
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解決
新潟県の県民性を表す言葉に、「あばら骨が一本足りない」という言い回しがある。インターネットで検索すると、千葉県の房州(安房近辺)の人を表す言葉としても使われているのを発見した。インターネット上の情報では信頼できないため、紙媒体でこの表現が載っている資料はあるか。
「あばら骨が一本足りない」とは、細かいことは気にしない、おおらか、というような意味らしい。
- 回答
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【資料1~5】に関連する記述がありました。舟方唄をもじって県民性に当てはめた言葉のようです。
【資料1】『ぼくらの千葉県 郷土の地理と歴史』(ポプラ社の県別シリーズ 29 樋口誠太郎編著 ポプラ社 1981)
p30-31「また、「房州舟だよアバラが足りん、アバラどころか木(気)が足りん」というたとえがあるが、房州舟とは、県南の房州は割合に波がおだやかなので、船の竜骨(荒波に耐えるように丈夫にするためのアバラ状の骨組)が少なくてすむことと、アバラどころか木(気力)が足らんというのは、恵まれた環境に育ったために、社会生活上の「がんばり」や「気迫」が足りないということである。」
【資料2】『房総の民唄をたずねて わが愛する山野の声』(田村実著 崙書房 1974)
p111「【題名】房州舟かよ 【歌詞】房州舟かよ 阿婆木が足らぬ 阿婆木所か 気が足らぬ。」
解説では「更に房総者は肋骨不足の人間だとあらぬ事を言っている」とも書かれています。
【資料2】の「阿婆木」は、表記は異なりますが、樹木の名前のようです。
『動植物名よみかた辞典』(日外アソシエーツ編 日外アソシエーツ 1991)※総称や古名を含む動植物の読み方辞典
p4-5 「阿波木」「阿波岐」とも次の意味で記載されている。
「ミズキ科の常緑低木、(中略)アオキの別称」、「黐木【もちのき】、橿木【かしのき】などの総称」
【資料3】徳田晴彦「岳陽語法」(『方言』第五巻二号 春陽堂書店 1974)
p46歌詞の一部として「房州者かいあばらが足れぬ あばらどころか気が足れぬ」と書かれています。
【資料4】『万有百科大事典 5 日本歴史』(小学館 1978)
p44安房人国記「房州者かよ、あばら(肋骨)が足りぬ」
【資料5】『館山市 暮らしの便利帳』(館山市 2017年版 2017.10)
p1館山市マスコットキャラクターのダッペエの紹介に「性格 おおらかで適当。房州育ちであばら骨が1本足りない」とあります。
- 回答プロセス
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当館蔵書検索システムで資料種別「千葉県資料」、全項目に「県民性」と入力して検索し、ヒットした資料にあばら骨が一本足りない旨の記載はなし。
事前調査事項にある地方新聞の手がかりを得るためGoogleで「県民性 あばら骨」「安房 あばら骨」などのキーワードで検索するも、手がかりは得られなかった。
新潟県で同様の言葉が使われるとの情報から、新潟県立図書館のレファレンス事例「「アバラ骨が一本足りない(抜けている)」という言葉について記述のある資料はないか。」(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000072881)を閲覧したが、千葉県のことは書かれていない。
千葉県資料室の書架C318(市町村行政)、C20(千葉県史)、C29(地誌)にあたり、【資料1】、【資料5】に記載あり。
菜の花ライブラリー(http://www.library.pref.chiba.lg.jp/nanohana/index.html)で「県民性」と検索し、染谷四男也「県民性と郷土民謡」(『房総展望』10巻5号 102号 1956.5)p2-3がヒット。内容を見ると、【資料2】にまとめられているとある。
【資料2】の「阿婆木」は舟のあばら状の骨組み部分に使われる樹木と思われる。
『動植物名よみかた辞典』(日外アソシエーツ編 日外アソシエーツ 1991)※総称や古名を含む動植物の読み方辞典
p4-5 「阿波木」「阿波岐」
『千葉県の諸職 千葉県諸職関係民俗文化財調査報告書』(千葉県教育委員会編集 千葉県文化財保護協会 1986)p248-249
『手仕事の匠たち 千葉職人紀行』(清野文男写真・文 崙書房出版 1991)p188-189
『日本国語大辞典 第1巻 あ-いろこ』(小学館国語辞典編集部編 小学館 2000)p687
『古語大鑑 第1巻 あ~お』(築島裕編集委員会代表 東京大学出版会 2011)p71「あはき 檍」
Googlebooksで「千葉 肋骨が一本足りない」と検索すると、【資料4】がヒットした。さらに同サイトで「あばらが足」で検索し、【資料3】を得た。
(インターネット最終アクセス:2020年9月20日)
- 事前調査事項
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・インターネットで見つけたのは安房の地方新聞の記事だと思うが、紙名などの情報は控えていなかった。
・『千葉県の歴史 別編民俗1 総論』(千葉県 1999)と『千葉県の歴史 別編民俗2 各論』(千葉県 2002)には記載がなかった。
- NDC
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- 社会学 (361 9版)
- 関東地方 (213 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『ぼくらの千葉県 郷土の地理と歴史 ポプラ社の県別シリーズ 29』(樋口誠太郎編著 ポプラ社 1981)(9200109658)
- 【資料2】『房総の民唄をたずねて わが愛する山野の声』(田村実著 崙書房 1974)(9200294986)
- 【資料3】徳田晴彦「岳陽語法」(『方言』第五巻二号 春陽堂書店 1974)
- 【資料4】『万有百科大事典 5 日本歴史』(小学館 1978)(9102881468)
- 【資料5】『館山市 暮らしの便利帳』(館山市 2017年版 2017.10)(0503913604)
- キーワード
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- 千葉県(チバケン)
- 県民性(ケンミンセイ)
- 舟方歌(フナカタウタ)
- あばら骨(アバラボネ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000287407