レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/01/06
- 登録日時
- 2016/03/16 00:30
- 更新日時
- 2022/03/05 16:50
- 管理番号
- 千県中児童-2016-1
- 質問
-
解決
『モチモチの木』(斉藤隆介作 滝平二郎絵 岩崎書店)について、初版は月の形が違っているということで、絵の訂正が行われたと聞いた。朝日新聞にそのエピソードが掲載されたそうなので、該当記事を見たい。
また、他に間違い等で絵が訂正された絵本があれば知りたい。
- 回答
-
朝日新聞の記事を調査したところ、2013年4月24日付の朝刊35ページに該当記事がありました。
1971年に出版された『モチモチの木』の初版は、p23,29の月が三日月になっていますが、「丑三つ時に三日月が上るのはおかしい」と指摘があり、77年の改訂版では二十日の月に変更したと書かれています。当館では初版・改訂版のどちらも所蔵しておりますので、比較してご覧いただくことが可能です。
また、絵が訂正された絵本には以下のものが挙げられます。
(1)『ちのはなし』(堀内誠一ぶんとえ 福音館書店)
・p7の血管の図が現行版ではより正確に描かれている。
・初版p14,15の解説(正座して足がしびれる理由)は誤りであるとして現行版では削除されている。
(2)『ちいさなねこ』(石井桃子さく 横内襄え 福音館書店)
現行版の奥付ページに「前扉と第2場面を新しく描き下ろしの絵柄に変更しました」と説明がある。
・標題紙の猫が初版では白黒だが、現行版では絵が変わってカラーになっている。
・初版では4,5ページに猫が1匹ずつ描かれているが、現行版では5ページのみに描かれている。
(3)『しろくまちゃんのほっとけーき』(わかやまけん絵 こぐま社)
財団法人大阪国際児童文学館「しろくまちゃんのほっとけーき 解題」(日本のこどもの本100選 1946年~1979年) http://www.iiclo.or.jp/100books/1946/htm/frame076.htm によると、以下の変更点がある。
・3刷で、p12,13が空のフライパンからお皿にのったホットケーキに差し替えられた。
・26刷で、p21が洗い槽いっぱいの泡の絵から水としぶきが描かれた洗い槽の絵に変更され、文章も変わった。
(4)『はらぺこあおむし』(エリック=カールさく もりひさしやく 偕成社)
・1989年2月に改訂新版が出ている。おひさまの表情や果物の色、向きなど、全体的に絵が少しずつ変わっている。
・『Moe』2007年2月号にはらぺこあおむし特集があり、エリック・カールの言葉として以下のように書かれている。
「一度絵本が出てからも、もとの版画に近づけるよう、何度も刷りなおしたり、印刷の方法を吟味したりして、何度も作りかえています。ストーリー自体も最初と少し変わっているんですよ。だからとても似ているけど『はらぺこあおむし』は、およそ5タイプの絵本があるんですよ。初版のころと今の版を見比べると、色が鮮やかに変わっています。そしてよく見ると、絵も少し変わっているのに気づくと思います。あおむしの顔もね。」(p11,12)
(5)『やさいのおなか』(きうちかつさく・え 福音館書店)
・ペーパーバック版(1984年)に登場していたオクラが、現行のハードカバー版(1997年)では削除されている。裏表紙のオクラの部分はハードカバー版では「?」のマークになっている。
・ハードカバー版では登場する野菜の順番が変更され、最後に「ふしぎなかたち やさいのおなか」のページが追加されている。
(6)『おおかみと七ひきのこやぎ』(グリム[原作] フェリクス・ホフマンえ 福音館書店)
『絵本をみる眼』(松居直著 日本エディタースクール出版部)によると、原書のヤギの目に誤りがあったため、日本語版の出版前に絵を訂正したとの記述がある。
「動物のひとみは、ネコのように縦に切れているものと、ヤギのように横に切れているものとがある。ところがホフマン氏のヤギは、ネコと同様縦にひとみがかいてあった。……早速、原書の出版社へ質問の手紙を出し、このひとみをかき改めてもらえなければ日本での出版は不可能であると申し入れた。……やがて約束通りに訂正されたさし絵のフィルムが送られてきて、無事日本語版を出版することができた。」(p310)
なお、『翻訳絵本と海外児童文学との出会い』(松居直著 ミネルヴァ書房)には「編集部にいた獣医の資格を持つ水口健と、動物画家の薮内正幸より「絵に間違いがある」という指摘がありました。」とある(p119)。
『ちのはなし』『ちいさなねこ』、『はらぺこあおむし』『やさいのおなか』については、当館で初版を所蔵しておりますので、閲覧が可能です。
- 回答プロセス
-
新聞記事検索データベース「聞蔵」(朝日新聞社)を「モチモチの木」で検索すると、「幻のきりえ見つかる 「モチモチの木」原画」という見出しの記事が見つかった。
改訂された絵本として回答に挙げた資料については職員が概ね知っていたため、更に情報を得るためにインターネットで調査した。
Googleを「ちのはなし 改訂」で検索。個人のブログ「最近絵本にはまっているんです・・・ 180冊目 実は改訂されていたんです・・・”ちのはなし”」(http://koorom.exblog.jp/8427116/)で、『ちのはなし』の改訂箇所がわかった。また、1978年3月号の「絵本のたのしみ」(普及版こどものとも折り込みふろく)の裏表紙に「ちのはなし」についてのおわびが掲載されていることがわかった(当館では欠号のため所蔵なし)。なお、1978年12月号の「絵本のたのしみ」の裏表紙には『ちのはなし』の改訂版ができたとのお知らせがある(所蔵あり)。
レファレンス協同データベースを「しろくまちゃんのほっとけーき」「はらぺこあおむし」でそれぞれ検索。改訂についての情報を得た。( https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000164815、
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000088858)
Googleを「おおかみと七ひきのこやぎ 絵 書き直し」で検索。個人のブログ「クリマ文庫 また絵本大学♪前編」(http://plaza.rakuten.co.jp/kurinokiyama/diary/200810190000/)で、松居直氏が絵の改訂に言及していることがわかり、松居氏の著書を調査した。
初版・現行版のどちらも所蔵があるものについては、現物を確認した。
(2021年12月追記)
汐崎順子「『やさいのおなか』~ひみつがいっぱい!」(『子どもの図書館』児童図書館研究会 2021.11)p9-11
『やさいのおなか』からオクラが消えた理由について、捜索したが判明せず、著者にメールで問い合わせた経緯が書かれている。
「問題の「オクラ」がなくなった理由については、きうちさん自身がまだ明らかにしていないのだという」
また、このメールのやりとりについては著者のきうちかつ氏が自身のブログで公表している。
にぃふぁぃゆー「読者からの問い合わせ(2021年8月24日)」(http://yasainoonaka.blogspot.com/2021/08/blog-post.html)
(インターネットの最終アクセス:2021年12月14日)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 児童文学研究 (909 9版)
- 参考資料
-
- 『モチモチの木』(斉藤隆介作 滝平二郎絵 岩崎書店)(9600372386)
- 『ちのはなし』(堀内誠一ぶんとえ 福音館書店)(9600360213)
- 「普及版こどものとも」折り込みふろく「絵本のたのしみ」(福音館書店 1978年12月号)(0502085379)
- 『ちいさなねこ』(石井桃子さく 横内襄え 福音館書店)(9600834927)
- 『しろくまちゃんのホットケーキ』(わかやまけん絵 こぐま社)(0600489696)
- 『はらぺこあおむし』(エリック=カールさく もりひさしやく 偕成社)(9600040564)
- 「「はらぺこあおむし」とエリック・カール」(『Moe』白泉社 2007年2月号 通巻328号 p6-35)(0502029585)
- 『やさいのおなか』(きうちかつさく・え 福音館書店)(9600652951)
- 『絵本をみる眼』(松居直著 日本エディタースクール出版部)(0105825930)
- 『翻訳絵本と海外児童文学との出会い』(松居直著 ミネルヴァ書房)(0106466846)
- キーワード
-
- 絵本(えほん)
- 滝平二郎(タキダイラジロウ)
- 改訂(カイテイ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000189343