レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014/6/28
- 登録日時
- 2014/11/20 00:30
- 更新日時
- 2021/04/15 12:40
- 管理番号
- D140617174053
- 質問
-
未解決
古活字本などで「小林蔵書」「金合文庫」の両蔵書印を見かけるが、「小林蔵書」の小林氏は誰で、「金合文庫」とは何か。この2者は関係あるのか。
- 回答
-
「小林蔵書」や「金合文庫」について明らかにした文献は見当りませんでした。
以下に調査過程をお示しします。
両方のキーワードで蔵書印譜や落款事典(下記1・2)を一通り見ましたが、該当の記述は見当たりませんでした。
また、「金合」が号である場合を考え、前近代を含め、号から検索できる人名事典(下記3)を見ましたが、見当たりませんでした。『大漢和辞典』(諸橋轍次著)を参照しても「金合」という熟語は見当たらないので、やはり固有名であると思われます。
そのほか、特別コレクションのディレクトリ、書物収集家名簿、売立目録の目録(下記4~6)も見ましたが、適合するものは見つかりませんでした。
そこで探し方を変えて、「金合文庫」の印影がある図書(下記7)から来歴を調べるため、著作名から取引情報がわかるツール(下記8)を調査しましたが、これも明確にはわかりませんでした。
参考までに申し添えますと、当館所蔵の『保暦間記(ほうりゃくかんき)』が昭和31年に売り出されたことが『弘文荘待賈古書目. 第27号』(下記9)から分かりました。ただし、この注記には印記が全部列挙されていないため、押印の時期を推定するには至りませんでした。
当館デジタルコレクションで『保暦間記』の受入れ印を見ると「15.11.21」とあるので、平成15年以前に「金合文庫」「小林蔵書」が押印されたことは 確実です。この本を当館で貴重書に指定する際、「金合文庫」「小林蔵書」についても調査しましたが、誰の蔵書印かは判明しませんでした。
また、当館所蔵の『長恨歌傳』は「高木家蔵」の蔵書印があり、この印は蔵書印データベース(下記10)や『一古書肆の思い出』(下記11)より「高木文庫旧蔵本」であることはほぼ確実です。『一古書肆の思い出』(下記11)に、この本の取引には「万字屋書店小林秀雄」なる人物が関わったとあり、「小林蔵書」 と苗字が一致します。そこで、万字屋書店の出版物(下記12)も見ましたが、編集兼発行人が「小林一夫」であることしかわかりませんでした。
1) 蔵書印譜
・渡辺守邦, 後藤憲二 編. 新編蔵書印譜. 青裳堂書店, 2001.1【UM57-G15】
・渡辺守邦, 島原泰雄 共編. 蔵書印提要. 青裳堂書店, 1985.3【UM57-17】
・中野三敏 編. 近代蔵書印譜. 青裳堂書店, 1984-2007【UM57-16ほか】
2)落款事典
・中野雅宗 編著. 日本書画鑑定大事典. 全10巻 国書刊行会, 2006-2013【KC637-L25ほか】
3)人名事典
・長澤孝三 編 ; 長澤規矩也 監修. 漢文學者總覽. 改訂増補. 汲古書院, 2011.10【H2-J8】
・国学院大学日本文化研究所 編. 和学者総覧. 汲古書院, 1990.3【H2-E2】
4)特別コレクションのディレクトリ
・国立国会図書館参考書誌部 編. 全国特殊コレクション要覧. 改訂版. 国立国会図書館, 1977.1【UL2-10】
・マティアス・コッホ [著]. 日本の大学所蔵特殊文庫解題目録. Iudicium Verlag, 2004【UP111-H96】
5)書物収集家名簿 ※収集領域や文庫名、庵号がわかるもののみ
・千里相識. 書物関係雑誌細目集覧. 第1巻. 日本古書通信社, 1974. pp.185-232 【UM1-2】※昭和10年の名簿。
・日本蒐書家名簿. 昭和13年版. 日本古書通信社, 昭13【730-192】 ※人名索引がないため東京府の部分のみ閲覧。
6)売立目録の目録
・都守淳夫 編著. 売立目録の書誌と全国所在一覧. 勉誠出版, 2001.11【K1-G13】
・柴田光彦 編. 反町茂雄収集古書販売目録精選集. 第1巻. ゆまに書房, 2000.8【UP27-G8】
・古書販売目録 検索システム(千代田区立図書館)(http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/wo/khm/)
7)「金合文庫」の印影がある図書3点
・仏日契嵩 編. 傳法正宗記. 12巻. [延暦寺], 寛永7[刊] ※駒沢大学所蔵
・唐陳鴻 撰. 長恨歌傳. [元和2 (1616)] 【WA7-247】
・小瀬道甫. 保暦間記. [元和・寛永年間]【WA7-248】
8)著作名から取引情報がわかるツール
・弘文荘待賈古書目総索引. 増訂版. 八木書店, 1998.12【UP27-G6】
・東京美術倶楽部百年史編纂委員会 編. 美術商の百年. 東京美術倶楽部, 2006.2【K251-H31】
9)弘文荘待賈古書目. 第27号. 弘文荘, 1956【025.8-Ko474k】の12ページに「「尚古斎」「耕雨珍蔵」以下の朱印。」とあります。
10)蔵書印データベース(国文学研究資料館)(http://base1.nijl.ac.jp/~collectors_seal/)
11)反町茂雄 著. 一古書肆の思い出. 4. 平凡社, 1999【UE111-G36】pp.207-208
12)文学を主とする明治大正文献在庫書誌. 万字屋書店, 1958【910.31-M179m】
※これは『萬字屋古書目録』として出版されたもので、古書販売目録 検索システムを参照すると49件ほど(連合目録含む)の所蔵が確認できます。
書誌事項末尾【 】内は当館請求記号です。
ウェブサイトの最終参照は2014年6月23日です。
(2020年12月2日 追記)-----------
当該事例にコメントをいただきましたので、情報を追記します。
2つの印のある国立国会図書館所蔵資料として、回答中に挙げた『長恨歌傳』【WA7-247】、『保暦間記』【WA7-248】のほか、『教誡新學比丘行護律儀』【WA7-285】があります。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301836/2
また、改めて確認したところ、
12)文学を主とする明治大正文献在庫書誌. 万字屋書店, 1958【910.31-M179m】
のp.5(7コマ)に、万字屋書店の代表取締役が「小林秀雄」との記載があることがわかりました。
(2021年4月15日 追記)------------
国文学研究資料館の蔵書印データベースによると、「小林蔵書」「金合文庫」の印主は小林俊雄ということです。
http://dbrec.nijl.ac.jp/CSDB_76220
http://dbrec.nijl.ac.jp/CSDB_76219
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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既知は
NDL書誌情報ニュースレター2012年3号(通号22号)
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2012_3/article_05.html
『國立國會圖書館所臧古活字版圖録』記載無し
『弘文莊古活字版目録』記載無し
NDL-OPAC、サーチ、リサーチナビ:注記に印記で数件出てくるのみ、レファ協DB
CiNii ブックス&アーティクルズ 手掛かり無し
『日本の蔵書印』小野則秋、昭和29年初版
『人と蔵書と蔵書印』国立国会図書館(雄松堂 2002年)
国文学研究資料館 蔵書印データベースhttp://base1.nijl.ac.jp/~collectors_seal/
「小林蔵書」6件、「金合文庫」0件
『日本書誌学之研究』
p.「十七 文庫史」
p.62 「十八 蔵書印に関する問題」
Google「蒐書」×「小林」⇒「蒐書家として著名な東洋史学者 小林高四郎氏(1905-1987)」
小林高四郎『漁書のすさび』西田書店 1986 日本古書通信に寄稿した文章をまとめたもの。
慶応義塾大学図書館『和漢貴重書目録』2009年 「収集・旧蔵者リスト」
Google「印記」×「小林蔵書」より
・小林参三郎氏(1863-1926) 大部分が高野山大学図書館に所蔵とのこと
高野山大学図書館のサイトでは、蔵書印を見ることが出来ないため、未確認
・信州大学 近世日本山岳関係データベースより 小林義正氏 ⇒画像あり、蔵書印が違う
以上です。これ以上、思いつきませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000163090