レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年04月27日
- 登録日時
- 2014/07/18 18:03
- 更新日時
- 2014/07/19 13:50
- 管理番号
- 所沢本-2014-014
- 質問
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解決
天満宮、天神社に祭ってある「牛」の由来について知りたい。
- 回答
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菅原道真と牛のかかわりは諸説あり、これという具体的な由来は、わかりませんでした。
調査して得られた、諸説は下記の通りです。
①承和12年乙牛6月25日すなわち丑年に菅公が生誕したというので、牛が天神に付会された。
②菅公が死去し、墓を築いて葬らんとして喪の車を引き出したが、途中で牛車が動かなくなったので、その場所に埋葬したが、そこがのちの大宰府天満宮である。
③「天満大自在天神」という神号から発生するもの。天満大自在天神というのは、菅丞相の霊なりとしており、仏教では大自在天神は白牛に乗るとされているので、天満大自在天神である菅神は当然に牛に乗るということから、天神に牛が仮託せられてきた。
④道真公のもう一つの神号「日本太政威徳天」も、密教の大威徳明王に由来されており、この明王のみが牛に騎乗する姿で表現されることから。
⑤うずくまってている牛の石像(石仏)には、諸病平癒の力があると考えられた。道真が牛車を引く牛を可愛がったという伝承によったものである。
⑥道真公が大宰府に落ちてゆく途中で、命を狙われた時、白牛に助けられたことから。
上記の説は、以下の資料に記載されています。
〇『天満宮 』竹内秀雄/著 吉川弘文館 1996年(説-①②③)
〇『学問の神さま 』かまくら出版 1994年(説-①②③)
〇『北野天神縁起を読む』竹居明男/編 吉川弘文館 2008年(説-①②③④)
〇『天神さまの起源』田中隆昭/監修 勉誠出版 2001年(説-②)
〇『動物信仰事典』芦田正次郎/著 北辰堂 1999年(説-⑤)
〇『神使になった動物たち』福田博通/文・写真 新協出版社 2012年 (説-①②⑥)
〇『神様になった動物たち』戸部民夫/著 大和書房 2013年(説-①②)
- 回答プロセス
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1所蔵資料の内容確認
〇『 動物信仰事典』芦田正次郎/著 北辰堂 1999年
P93に「うずくまってている牛の石像(石仏)には、諸病平癒の力があると考えられた。…この撫牛信仰は、現在では痛み所ばかりではなく、健やかにしたり強くしたい所を撫でるようになった。…これらの牛像は、天神社など菅原道真を祀る神社にあり、道真が牛車を引く牛を可愛がったという伝承によったものである。」との記載あり。
〇『天満宮 』竹内秀雄/著 吉川弘文館 1996年
P1~4「1天神と牛」に詳しい説の記述がある。
①承和12年乙牛6月25日すなわち丑年に菅公が生誕したというので、牛が天神に付会された…。
②『北野天神縁起』建久本に、「…御車たちまち道なかにととまりて肥満多力のつくし牛ひけともはたらかす、そのところをはしめて御墓所とさため…」(墓を築いて葬らんとして喪の 車を引き出したが、途中で牛車が動かなくなったので、その場所に埋葬した)
③「天満大自在天神」という神号から発生するもの…。天満大自在天神というのは、虎関師錬(こかんしれん)の著『元亨釈書』によると、「菅丞相の霊なり」と解説しており、仏教では大自在天神は白牛に乗るとされているので、天満大自在天神である菅神は当然 に牛に乗るということから、天神に牛が仮託せられてきた…。
P2に「白井宗因の著『神社啓蒙』(巻三)に、北野の牛についていわゆる神使、熊野の鴉・八幡の鳩とともに不明としているように、どうもその由緒は昔から分からなかったらしい」との記載あり。
〇『天神さまの起源』田中隆昭/監修 勉誠出版 2001年
P11「「てんじんさま」と親しまれている諸社には、…牛・鷽・梅・松などは天神の象徴として様々な伝承を生み、…」、P29に道真が死去し、埋葬しょうと牛車を進めるが、途中で牛がどうしても動かなくなり、仕方なくそこを墓所(安楽寺)とさだめ埋葬する『北野天神縁起』の図があり。
〇『学問の神さま 』かまくら出版 1994年
P53「牛と天神」に「…菅公の生まれが承和12年6月25日。つまり乙丑にあたっているから…菅公が大宰府で亡くなられた時、ご遺骨を運ぶ牛車が途中で動かなくなってしまった。…すなわち大宰府天満宮のはじまりとする説。農耕の神のシンボルとする説…しかし、そのルーツはどうやら「天満大自在天神」という神号にありそうです。…仏教では八臂三眼といって、八本の腕と三つの眼を持ち、白い牛に乗るとされている…」との記載あり。
〇『北野天神縁起を読む』竹居明男/編 吉川弘文館 2008年
P102 「コラム 天神さんと牛」に「…その由来については古来から諸説あった中で、一般的には、道真の生誕した承和12年(845)が乙丑にあたる…天満宮鎮座以前に「北野」の地にはすでに「雷公」が祀られていた事実があり、これは天神の神格の一つ「火雷天神」にかかわる。…牛は、この場合神に供えられる聖なる動物であった。…神号として最も普及した「天満大自在天神」は三目八臂で白牛に乗る姿で表現される、…もう一つの神号「日本太政威徳天」も、密教の大威徳明王に由来されており、…この明王のみが牛に騎乗する姿で表現される…結局、主要な神号のいずれにも牛が関連しいてるわけで、…」との記載あり。
〇『神使になった動物たち』 福田博通/文・写真 新協出版社 2012年
P12~14「菅原道真と牛」の項に下記のような伝承の記載があります。
①道真公の誕生日(承和12(845)年6月25日)や死去日(延喜3(903)年2月25日)が丑の日だった。
②道真公が大宰府に落ちてゆく途中で、命を狙われた時、白牛に助けられた。
③「車に牛に引かせて、牛の行くままに任せ、牛の止まった所に葬ってくれ」との道真公の遺言に従って墓所(大宰府天満宮)は定められた。
△『狛犬事典 』上杉千郷/著 戎光祥出版 2001年
P274に「神の使いとして有名なものは、天満宮のの牛であるが、めずらしいものに「撫牛」がある。天満神社の境内にある牛の像を撫でて祈願すると、願いがかなうといわれている。岩津天満宮(岡崎市)では、ちいさな陶器の牛を願いを込めて撫でて奉納する信仰がある。」との記載あり。
2 未所蔵資料
〇『神様になった動物たち』戸部民夫/著 大和書房 2013年(埼玉県川越市立図書館他/所蔵 相互貸借可)
P62~68「天満宮には欠かせない神使 牛」に「結びつきの理由について、天満宮の由緒書などによれば、天神様の菅原道真生まれた承和12年(845)が丑年であったためとあります。あるいは、道真が延喜3年(903)大宰府で亡くなったとき「ウシの行くところにとどめよ」との遺言に従い牛車に遺体を乗せて、ウシがとどまったところに埋葬したという伝承から、ウシが神使とされたとあります。」との記載あり。
△『菅原道真事典』 神社と神道研究会編 勉誠出版 2004年(埼玉県立熊谷図書館他/所蔵 貸出不可のため、内容未確認)
P15「牛」
3 該当事項の記載がなかった資料
×『民間信仰辞典』桜井徳太郎/編 東京堂出版 1980年
×『狛犬かがみ』たくきよしみつ/文・写真 バナナブックス 2006年
×『天神様菅原道真公 』石田文吉 /発行 1990年
×『日本の神々 1 』谷川健一/編 白水社 1984年
×『日本の神々 5 』谷川健一/編 白水社 1986年
×『天神への道 菅原道真』松本徹/著 試論社 2014年
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175 9版)
- 民間信仰.迷信[俗信] (387 9版)
- 参考資料
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上杉千郷 著 , 上杉, 千郷, 1923-. 狛犬事典. 戎光祥出版, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003043818-00 , ISBN 4900901202 -
芦田正次郎 著 , 芦田, 正次郎, 1926-. 動物信仰事典. 北辰堂, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002773015-00 , ISBN 4892872296 -
竹内秀雄 著 , 竹内, 秀雄, 1909-1991. 天満宮. 吉川弘文館, 1996. (日本歴史叢書 新装版)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002497565-00 , ISBN 4642066365 -
学問の神さま : わかりやすい天神信仰. かまくら出版, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002383044-00 , ISBN 4795289603 -
竹居明男 編 , 竹居, 明男, 1950-. 北野天神縁起を読む. 吉川弘文館, 2008. (歴史と古典)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009683811-00 , ISBN 9784642071543 -
福田博通 文・写真 , 福田, 博通. 神使になった動物たち : 神使像図鑑. 新協出版社, 2012.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023886696-00 , ISBN 9784876478132
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上杉千郷 著 , 上杉, 千郷, 1923-. 狛犬事典. 戎光祥出版, 2001.
- キーワード
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- 天満宮
- 撫牛
- 牛
- 菅原道真
- 北野天神縁起
- 大宰府天満宮
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000156507