レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/05/16
- 登録日時
- 2012/11/07 02:04
- 更新日時
- 2012/11/07 10:25
- 管理番号
- 横浜市中央2096
- 質問
-
解決
英国の小説の中で、英国の弁護士が「top silk’s junior」として初めて仕事をする、
という内容がありました。
法廷で弁護活動をする法廷弁護士(barrister)には大きく分類して二種類あり、
silkが勅撰弁護士でjuniorが勅撰弁護士に伴って法廷活動をする弁護士である
というところまではわかったのですが、top silkという表現がわかりません。
「top silk」が、肩書あるいは職制のようなものを示すのかがわかる資料はありますか。
- 回答
-
英国弁護士の職制について下記の資料を確認したところ、次の事項が分かりましたが
「top silk」という職位について記載のある資料は見つかりませんでした。
・Barrister(法廷弁護士)のうち優秀な一部のバリスターがQueen'sCounsel
(勅選弁護士)になれるということ
・Queen'sCounselが法廷で絹のガウンを着用することからSilkと呼ばれること
・以前は、Queeen'sCounselは一般のBarrister(Juniorと呼ばれる)を従えて
出廷しなければならなかったこと
調査した資料は次のとおりです。
1 下記の辞典類を確認いたしました。
(1)『英米法律語辞典』小山貞夫/編著 研究社 2011
P.1030「silk」の項目
[以下、本文より引用]
1.絹;絹の衣服
2.《勅選弁護士(King's[Queen's]Counsel)の着用する》絹のガウン
3.勅選弁護士(King's[Queen's]Counsel)
2 下記の図書資料を確認いたしました。
ご覧になった小説の時代背景が分からなかったため、近年の資料から古い資料
にもあたってみました。
それぞれイギリスの法制度や弁護士制度についてまとめられた資料です。
(1)『イギリス法律英語の基礎』杉浦保友/著 レクシスネクシスジャパン 2009
P.27「1.5イギリスの法曹 (1)弁護士 ②Barrister」
[以下、本文より引用]
10年以上の法廷弁論の実務経験のあるBarristerからQueen'sCounsel(Q.C.;
法廷で絹のガウンを着ることが許されるので「シルク」ともいわれる)が選任
されてきた。
(2)『イギリス憲法読本』新版 神戸史雄/著 丸善 2005
P.252「第4章 司法 第1節 司法機構 2法曹」
[以下、本文より引用]
③クィーンズ・カウンセル(QC:男王支配のときは、キングズ・カウンセルKC)
勅選弁護士と訳す。バリスタであって、特に経験・識見が優れている者が申請
して王の許状でこの資格を得る。申請すれば必ず得られる地位ではない。
-中略-絹のガウンをまとって法廷に出る。
(3)『裁判制度の国際比較』塚本重頼/著 中央大学出版部 1989
P.172「Ⅱ 諸国の裁判制度 三 ヨーロッパ州
第一 イングランドおよびウェールズ 九 弁護士 一 バリスター」
[以下、本文より引用]
(3)バリスターは実務経験一〇年を経過し、かつ、高い名声をえているときは、
申請により、大法官からQueen'sCounselに任ぜられる。-中略-QCは一般のバリ
スターと異なり、絹のガウンを着用する。また、法廷へ出頭する際、必ず若いバ
リスター(ジュニアという)を伴うことを義務づけられていたが、一九七六年こ
の慣行は廃止された。
(4)『諸外国の弁護士制度』第二東京弁護士会/編 日本評論社 1976
P.57「英国の弁護士制度 第二章 バリスター制度の現状 第五節 勅選弁護士」
[以下、本文より引用]
英国弁護士制度の一つの特色は同じバリスターの中に勅選弁護士Queen'sCounsel
と一般バリスター(Junior以下では「ジュニア」と言う)という二つのランクが
あることである。-中略-勅選弁護士になるための要件は特にないが、一般には
バリスターとしての経験年数一〇年以上を有し、ジュニアとして成功した者に対
し与えられる称号である。大法官が申請によりこの称号を与える。勅選弁護士に
なると絹のガウンを着用するので「シルク」とも呼ばれる。
(5)『各国弁護士制度の研究』三ヶ月章/等著 有信堂 1965
P.22「イギリスの弁護士制度 一 二元主義と法曹一元」
[以下、本文より引用]
-前略-バリスタは、学者的実務家とでもいうべき風格を備えている。特に、一〇
年以上バリスタの経験がある者から、全司法組織の長であるChancellor(大法官)
が優秀な者を十数名選んで推薦した結果任命されるQueen'sCounsel‐略称Q.C-に
はその感が強い。Q.C.になると、大先生であるから、法服も絹になるし-中略-実
務の面でも、pleadingその他の書面の起草をしてはならず、法廷にでるときは必ず
Q.C.でないバリスタ-junior barristerとよばれる-を従えて出廷せねばならない
とされている。
(6)『英国弁護士制度』J.R.V.マーチャント/著 塩谷恒太郎/訳 人文書林 1948
P.62 皇帝顧問(King'Counsel)に関する記載があります。注がついています。
[以下、本文より引用]
皇帝顧問(King'sCounsel)とは皇帝の弁護士として勅選せられたるバリスターに
して、BAR(法定内の仕切)内に席を占むべきものを云ふ。
いずれも、一部本文をご紹介いたしましたが、他にも関連する記述があるものもあります。
3 CiNii Articles(http://ci.nii.ac.jp/)で雑誌記事を検索しました。
下記の雑誌記事が該当しましたので、記事を確認いたしました。
いずれも、バリスター(法廷弁護士)とソリシター(事務弁護士)について述べられ
ていますが、Silkについての記載はありませんでした。
(1)『判例時報』No.1693 平成12年1月21日号
p.31~36「英国における裁判官任用制度及び弁護士養成制度等について」鈴木健太
(2)『ジュリスト』No.1021 1993年4月15日号
p.79~82「イギリスの弁護士制度」リチャード・プレイル
(3)『ジュリスト』No.1040 1994年3月1日号
p.106~108「イギリスの弁護士制度」益田洋介
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 司法.訴訟手続法 (327 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000113653