レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 埼玉県立久喜図書館 (2110009) | 管理番号 (Control number) | 埼熊-2012-089 | ||||||
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事例作成日 (Creation date) | 2012年03月29日 | 登録日時 (Registration date) | 2012年07月07日 10時55分 | 更新日時 (Last update) | 2017年05月18日 12時14分 | ||||
質問 (Question) | コンクリート(セメント)の歴史について知りたい。紀元前3世紀頃ローマで使われていたが、ローマ帝国衰退とともに一時姿を消した。その後いつどこで復活し、人間の生活にかかわるようになっていったのか。種類や成分等についての情報は不要。 | ||||||||
回答 (Answer) | セメントの歴史は古く、資料によっては9000年前のイスラエルに遡るとするものもあった。また、古代ローマにおいてはよく活用されてたが、その後18世紀の産業革命期に至るまでは大きな技術的進歩や活用の場がなかったことが、各種資料に記されている。長期にわたる停滞の理由としては、「ヨーロッパではコンクリートのような堅牢な素材による建造物ではなく、細かな加工が施しやすい石造物による構造物が求められた」、あるいは「コンクリートが当時の教会建築になじまなかった」といったことがあげられている。関連の記述のあった、資料を紹介した。 1『コンクリートの文明誌』(小林一輔著 岩波書店 2004) 古代から現代に至るコンクリートの歴史が詳細な記載あり。 p1-47「すべての道はローマより発す」の章に、古代都市国家、特に古代ローマのコンクリート技術について記述あり。 p50-「二千年の闇を抜けて」の章に、「西ローマ帝国が滅亡してから十九世紀初頭までの1300年間、かつてローマの属州であった国々でコンクリートによる大規模な建造物がつくられた形跡は見あたらない。」と記述あり。その理由として、「コンクリートが当時の教会建築になじまなかった」ことを挙げ、建築様式が石造物に変化していったことを主因としている。 2『コンクリートなんでも小事典:固まるしくみから、強さの秘密まで(ブルーバックスB-1624)』(土木学会関西支部編 井上晋他著 講談社 2008) p28-45「コンクリートのルーツをたどる」の章に、8節にわたる記述あり。 p28- コンクリート使用の起源は遺跡の発掘や調査によって更新されているとし、イスラエルのイフタフ(約9000年前)、中国の大地湾遺跡(約5000年前)、古代ローマ等のコンクリート遺跡を紹介している。 p42- 18世紀の産業革命期にジョン・スミートンがエディストーン灯台の建設にコンクリートを使用し、1824年にジョセフ・アスプディンが「人造石製造法の改良」という特許で「ポルトランドセメント」という名称を使ったという記述あり。 3『セメントの常識』(セメント協会 1992) p3-6「セメント・コンクリート小史」の項にセメントに関する歴史的記述あり。セメント工業の発展を示すものとして、「ポルトランドセメントの製造開始は、イギリス1825年、フランス1848年、ドイツ1850年、アメリカ1871年、日本1875年です。」という記述も見られる。 4『セメントの科学:ポルトランドセメントの製造と硬化(JME材料科学)』(大門正機編訳 内田老鶴圃 1989) p3-4 古代からポルトランドセメント発明(19世紀初め)までの歴史について記述あり。ローマ帝国以降の停滞期については、「その後は、断続的にセメントが使われたり忘れられたりする期間が続いた。」と記述あり。 | ||||||||
回答プロセス (Answering process) | その他、セメントの歴史について簡単な記述のあった資料 『ガラス・セメント(目黒学徒叢書)』(福島正著 目黒書店 1947) p42-44「概観 セメントの歴史」の節に、18世紀中期以降のセメント工業に関して記述あり。 『セメントの材料化学』(荒井康夫著 大日本図書 1990) p2-3 歴史的概要のほか、第二次大戦後のセメント需要の増加について「第2次世界大戦後は、国土の再建、経済の急成長によりセメントの需要は急増し」と記述あり。 『コンクリート総覧』(笠井芳夫編著 技術書院 1998) p3〈セメントの語源と歴史〉の項あり。セメントの起源と現在に近いセメントに関する簡単な記述あり。 『コンクリート工学ハンドブック』(朝倉書店 2009) p3 セメントに関する〈概説〉の項あり。セメントの起源と現在に近いセメントに関する簡単な記述あり。 『最新コンクリート技術選書 別巻 コンクリートの歴史』(山海堂 1984) 「設計編」「材料・施工編」の2編に分かれ、各編のまえがき(巻頭各2ページずつ)にそれぞれの歴史的概要あり。 『仕事がひろがるコンクリートの話』(安藤哲也著 セメントジャーナル社 2008) p10-12 〈誰がセメントを作ったか〉の項に、簡略な歴史的記述あり。 百科事典類による調査 『世界大百科事典 16』(平凡社 2007) p2-4〈セメント〉の項に、「ローマ時代には耐水性の向上のため火山灰を混ぜることが行われた。(中略)産業革命とともにセメントの研究が盛んになり」とあり。 『日本大百科全書 13』(小学館 1987) p667-668〈セメント〉の項に、「ローマ時代から18世紀中葉までの約2000年間はセメントは消石灰の時代であり、なんらの進歩もみられなかったが、1756年に至り、イギリスの石造灯台エディストンEddystoneの建造に際して、スミートンが粘土を含む石灰石を焼いたものをセメントとして使用し成功したのが、今日一般にセメントとよばれる水硬性セメントの最初であったといわれている。(略)」とあり。 『窯業工学ハンドブック』(窯業協会編 技報堂 1966) p1498-1500〈発達史〉の項あり。ローマのセメントについても記述があるが、内容は概ね他資料と同様。 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典3』(フランク・B.ギブニ-編 ティビ-エス・ブリタニカ 1984) p1026 〈セメント〉の項に、「ローマ人は今日のセメントに似た結合剤を発見、使用していた。現在用いられている普通ポルトランドセメントは1824年にイギリスで発明され」と記述あり。 『舶来事物起原事典』(富田仁著 名著普及会 1989) p201-203〈セメント〉の項あり。ローマ時代の記述あるが、「一時姿を消した」記述なし。「ローマ時代には道路、城壁、水道のみならず住居、殿堂にまでセメントやコンクリートの使用を試みるようになった。同時に、その使用に関する技術が進歩していった。」とあり。 その他調査済資料は以下のとおり 『ブリタニカ国際大百科事典 11』(フランク・B.ギブニ-編 ティビ-エス・ブリタニカ 1984) 『愛と戦いのイギリス文化史 1951-2010年』(慶応義塾大学出版会 2011) 『イタリア史 新版世界各国史 15』(山川出版社 2008) 『ローマ人の物語 15 ローマ世界の終焉』 (塩野七生著 新潮社 2006) 『図解コンクリート事典』(小林一輔〔ほか〕共編 オーム社 2001) 『建築構法 S造とRC造 その発想の原点から施工まで』(小畠克朗・谷口英武著 建築技術 1993) 『コンクリートの話』(一木保夫著 偕成社 1942) | ||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | |||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) |
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照会先 (Institution or person inquired for advice) | |||||||||
寄与者 (Contributor) | |||||||||
備考 (Notes) | |||||||||
調査種別 (Type of search) | 事実調査 | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | 個人 | |||||
登録番号 (Registration number) | 1000108291 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |