調べ方マニュアル詳細
- 調べ方作成日
- 2007年04月13日
- 登録日時
- 2007/04/13 10:57
- 更新日時
- 2022/04/26 09:46
- 管理番号
- 国士HS002
- 調査テーマ
-
完成
日本産クモ類の調べ方。
- 調べ方
-
1.公刊されている図鑑が基本になりますが、日本産クモ類全種を網羅掲載している物は2015年6月現在、1点のみです。それもすでに出版より時間が経過していますので、その後の新種、新たな知見は掲載されていません。和名(標準和名)は変わることは稀ですが、学名は変わってしまう場合がかなりあります。したがって出版状況はともかく、できる限り最新のものを使用することが大事です。
本来は学会誌等が新種の記載や新知見を始めに掲載します。専門の研究者はそちらをあたりますが、それは網羅的ではありませんので、クモ類全体を調べるのには向いていません。それらがまとめられるまでは時間がかかりますので新しい書誌がない場合、博物館、大学等の研究者に直接たずねる方法もあります(下記参照)。
2.まず調べるクモの種を特定する(同定)ことが基本になりますが、それにはクモ本体を持っていること、あるいは同定のポイントがわかる鮮明な写真または映像を持っていることが前提になります。目撃情報や伝聞だけですと正確な同定はほぼ不可能で、推測すら難しい場合があります。種の同定ができなければ生活史、生態なども調べることはできません。これは研究者に直接問い合わせる場合も同じです。
3.したがってどのような場合でも図書館で図鑑類を使って名前を調べるということは不正確になりやすいので、それをふまえて案内する必要があります。
全国的に個体数多い普通種や特徴のある種に関しては、図鑑掲載の写真・図の照合だけで、比較的容易に同定できる場合もあります。
しかし外見上類似した種も多く、同定ポイントの掲載がない書誌を使うと専門の研究者でも同定できません。また同定ポイントの掲載があったとしても、クモ本体との照合は顕微鏡などを使用しないと、ほとんどの場合行うことはできません。
4.正確を期すなら、自然史系博物館、総合博物館の自然部門に問い合わせる方法が良いでしょう。ただ日本の博物館においてクモ類専門の学芸員、研究者がいるところは多くありませんので、案内する場合注意が必要です。
国立科学博物館動物研究部(つくば市)にはクモ類の専門研究官がいます。だたしそこにかかわらず外部からの同定依頼の回答までは時間がかかります。また依頼は標本等クモそのものを送ることが前提となります。
いずれの博物館に依頼する場合でも事前に調整を行うことが必要条件です。標本の仕様、依頼する数、結果を何に使用するかなど予め相談しておかなくてはなりません。標本の作り方によっては同定できないほどクモ本体が破損してしまうものもあります。またかならず時間的な余裕をもって依頼する事も必要です。
いきなり標本等を送付して依頼することは行うべきではありません。
5.学会、同好会への問い合わせする方法もあります。蛛形類(クモの他、ダニ、サソリなどを含む)の学会、日本蜘蛛学会(http://www.arachnology.jp/)。クモ類の同好会、東京蜘蛛談話会(http://homepage3.nifty.com/~hispider/tss1.htm)などがあります。
いずれもクモ類を研究する人が集まった団体ですが、日常的に外部からの同定依頼を引き受けているわけではないので、博物館への依頼と同じように事前に相談するべきでしょう。
-- 主なクモ類図鑑類の評価(2022.4現在) --
*青木淳一編.日本産土壌動物検索図説.東京,東海大学出版会,1991,p.606.
種の検索専用のため図のみ。クモ類以外昆虫、多足類などの土壌動物も掲載。専門的なため慣れていないと使用が困難。また検索可能な範囲は「科」まで。1999年の改訂版は主な種の写真も掲載。
*青木淳一編著.日本産土壌動物 分類のための図解検索.(秦野),東海大学出版部,2015,p.2022.
1999年版の第2版。上記書誌と同じくクモ類以外も掲載。内容は同じく専門的。
*馬場友希・谷川明男.クモハンドブック.東京,文一総合出版,2015,p.111.
フィールド観察用、大きさ18x11cmで携帯可能。野外で使用する目的のため、掲載種は普通種を中心に100種と少な目だが全種、生態写真による。野外用であるがクモの同定ポイントである生殖器の写真も掲載され、採集後に同定することもできる。巻頭にクモ類の解説もあり平易で使いやすいが、本文解説はやや専門的。
*千国安之輔.写真・日本クモ類大図鑑.東京,偕成社,1989,p.308.
生態写真ではなく、クモの個体と同定ポイントとの写真による図鑑。掲載種の同定ポイントがほぼ全種記さている。クモ本体と同定ポイントが同じ頁に、解説は巻末に掲載。解説は著者の居住地(長野)の知見となっているものがある。現在(2021)は分類、学名、標準和名が変更されている種類がある。
(2008.7 改訂版 分類の新知見、最新の学名への変更、初版掲載の不明種の確定など)
*池田博明.クモ生理生態事典.大井町(神奈川県),著者自刊,1988,p.173.
図、写真はない。クモの生理、生態について過去の論文、短報の要旨を種ごとにまとめたもの。改訂版2010は著者のHP上にて公開中(http://homepage3.nifty.com/~hispider/)。
*池田博明他編.クモ基本60.東京,東京蜘蛛談話会,2015.p.143
ポケットサイズよりやや大判(A5判) 野外観察用 関東地方の一定のポイントにて記録率の高い60種を集めたもの。基本種と同じ見開きに関連種を掲載しているため、実際の掲載は60種以上ある。
クモは一部を除き、鮮明な生態写真で示され、観察のポイント、雄雌の出現期、習性など 字数に比較して情報量は多い。内容はやや専門的。
習性等の記載は記録者名が付記されている。ただし出典の詳細は掲載されていない。同定に必要なポイントの図示などは最小限のため、それには向いていない。あくまで野外観察時に簡易な種の特定を行うためのもの。
*松本誠治ほか.学研の図鑑 クモ.東京,学習研究社,1976,p.160.
クモは図と生態写真。児童向けの入門図鑑。全国の分布、形態や系統まで平易に解説されている。採集方法、飼育方法なども掲載。
*小野展嗣編著.日本産クモ類.(秦野),東海大学出版会,2009,p.738.
出版当時、日本で記録されているクモ類64科約1,500種全てを掲載。同定のポイントとなる図は判明しているものは全種掲載されている。生態や本体の写真は主な種類のみ。現在でも正確な種の同定に使用できるこれ以上の書誌はないが、専門的。
*小野展嗣・緒方清人.日本産クモ類生態図鑑:自然史と多様性.平塚市,東海大学出版会,2018,p.713
2018年現在、記載されているクモ類1659種の内、857種のカラー生態写真の掲載。雌雄だけでなく、全てではないが卵、幼虫(本文表現)、生息場所の写真もある。写真と解説文は巻前後の分離形式、巻末には参考文献表。
生態がテーマの図鑑のため、画合わせ的に種類の特定はできるが、正確な同定に利用するのは難しい。
*斉藤三郎.原色蜘蛛類図説.東京,北隆館,1959,p.194.
クモは図による。記載種は標準和名、学名とも大幅に変わっているものが多く、図鑑としては利用しない方がよい。過去の知見等を調べることに利用できる程度。
*新海明,安藤昭久,谷川明男.県別クモ類分布図.ver.2022,作成者自刊,2022.(CD-ROM)
作成時点での根拠となる文献が確認されている日本産クモ類1,670種全ての目録と1,006種の写真を収録。都道府県別の分布状況も表示できる。文献目録も収録。同定ポイントの記載ない種もあるので同定使用には注意が必要。
(ver.2006 より製作が始まり、ほぼ毎年更新されているが製作されないこともある)
*新海栄一.日本のクモ.東京,文一総合出版,2006,p.335.
クモは生態写真。和名、学名は最新のものによる。約560種のクモのほとんどが雌雄両方の写真がある。やや大振りな図書であるが、フィールド図鑑であるので図などの同定ポイントの掲載はない。参考文献表付き。ただし一部写真と種名の誤植、巻末の和名索引に若干のもれがある。
2017.2 増補改訂版 初版の誤植等が修正され、種類数20種追加、写真の差替えが行われた。また「環境別に見られるクモ」「網型からの識別」の項等が追加された。 ページ数はp.407
*新海栄一,高野伸二.フィールド図鑑 クモ.東京,東海大学出版会,1984,p.204.
クモは生態写真。同定ポイントの掲載はない。観察会など野外で使用するためのもの。正確な同定の為のものではなく野外観察の手引き用。ビニール素材の表紙で観察等、野外持ち歩きを考慮した装丁の唯一の書誌。
*新海栄一,高野伸二.クモ基本50.東京,森林書房,1987,p.128.
クモは生態写真。図などの同定ポイントの記載はない。身近な50種に絞り込んだ図鑑で、見開きの左1頁を写真にとり、他方を解説にした構成。写真が大きく見やすい。春・夏・秋・一年中の出現期別による4部構成。観察会など野外用。別項目だてのハエトリグモの生態写真が充実。
*吉田 哉.日本産ヒメグモ科総説.東京,日本蜘蛛学会,2003,p.223
ヒメグモ科の総説。発行当時、日本で記録されていたヒメグモ科のクモ35属122種すべてを解説。モノクロ図538点、カラー写真68点掲載。分類学上の説明にも言及し、図鑑というより研究書。掲載の種の検索表付き。専門知識が必要だが、種の同定ができる。出版後20年が経っているがヒメグモ科の研究書でこれ以上のものはない。
*須黒達巳.ハエトリグモハンドブック.東京,文一総合出版,2017,p.144.
ハエトリグモ科のクモに特化した書誌 発行当時の既知種105の内103種の雌雄を掲載。すべて白背景の生体拡大写真による見分け方のポイント、また実物大のシルエット図も付記。生息環境、生息地別からも検索ができるようになっている。同定困難種は別途簡易検索表付き。ハンドブックながらかなり正確な同定が可能。ハエトリグモに関しては使いやすさ、情報量とも発行時現在ではベストの図鑑。増補改訂版有り。
*谷川明男.沖縄クモ図鑑.東京,文葉社,2003,p.95.
クモは生態写真。沖縄を中心とした南西諸島のクモ類図鑑。この地方特産種の掲載がある唯一の図鑑。写真集に近い構成。産地のデータなど豊富だが、図などの同定ポイントの掲載はなく同定は困難。沖縄県産クモ目録付き。
*八木沼健夫.原色日本蜘蛛類大図鑑.大阪,保育社,1960,p.186.
クモは図による。同定のポイントは図であるが記載数は多くない。古い書誌なので和名、学名の変更が多い。文献目録付き。同定に使用するのは困難であるが、初版は新種の記載記事がありクモ類資料としては重要。増補改訂版1968あり。
*八木沼健夫.原色日本クモ類図鑑.大阪,保育社,1986,p.305.
クモは図による。同定のポイントは図による。分類、標準和名、学名の変更あり。同定ポイントは記載種の全種が掲載されているわけでない。またそれはクモの図と別々に記載。同定に使用するのはやや難。
-- その他参考文献 --
*谷川明男2000.日本産クモ類目録2000年版.Kishidaia,78:79-144.
東京蜘蛛談話会誌「Kishidaia」掲載された目録。この時点で最新の標準和名、学名による総目録。過去の記録を網羅してあり、また疑義のある種についても掲載しそれには問題点を付記。
- NDC
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- 節足動物 (485 9版)
- 参考資料
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- 青木淳一編.日本産土壌動物検索図説.東京,東海大学出版会,1991,p.201. , ISBN 4486011562
- 千国安之輔.写真・ 日本クモ類大図鑑.東京,偕成社,1989,p.308. , ISBN 4030032001 (2008.7 改訂版 有り)
- 池田博明.クモ生理生態事典.大井町(神奈川県),著者自刊,1988,p.173. (2018.12現在 改訂版2017仮版公開中 著者のHP上にて公開(http://spider.art.coocan.jp/studycenter/Dic11.html) 2017年版は他に編者2名(桑田隆生、新海明))
- 松本誠治ほか.学研の図鑑 クモ.東京,学習研究社,1976,p.160. (児童向け。)
- 斉藤三郎.原色蜘蛛類図説.東京,北隆館,1959,p.194. (記載内容が古く、図鑑としては使用しない方がよい。)
- 新海明,安藤昭久,谷川明男.県別クモ類分布図.ver.2022,作成者自刊,2022.(CD-ROM) (自主製作CD-ROM 不定期で更新版が出る)
- 新海栄一.日本のクモ.東京,文一総合出版,2006,p.335. , ISBN 4829901748 (2017.2 増補改訂版 有り)
- 新海栄一,高野伸二.フィールド図鑑 クモ.東京,東海大学出版会,1984,p.204. , ISBN 9784486008057 (日本最初のクモ類のフィールド図鑑。発行後30年のため、若干データ等が古くなっているが野外観察用としては十分使用できる。)
- 新海栄一,高野伸二.クモ基本50.東京,森林書房,1987,p.128. , ISBN 9784915194412
- 谷川明男.沖縄クモ図鑑・めずらしい沖縄のクモ217種.東京,文葉社,2003,p.95. , ISBN 9784998090793
- 八木沼健夫.原色日本蜘蛛類大図鑑.大阪,保育社,1960,p.186. (1968.6 増補改訂版 有り)
- 八木沼健夫.原色日本クモ類図鑑.大阪,保育社,1986,p.305. , ISBN 9784586300747
- 谷川明男2000.日本産クモ類目録2000年版.Kishidaia,78:79-144. (雑誌掲載)
- 小野展嗣編著.日本産クモ類.(秦野),東海大学出版会,2009,p.738. , ISBN 9784486017912
- 馬場友希・谷川明男.クモハンドブック.東京,文一総合出版,2015,p.111. , ISBN 9784829981283
- 青木淳一編.日本産土壌動物 分類のための図解検索.(秦野),東海大学出版部,2015,p.2022.(2冊) , ISBN 9784486019459 (第2版)
- 池田博明他編.クモ基本60.東京,東京蜘蛛談話会,2015.p.143 , ISBN 9784990827304 (改訂オンライン版有り。(http://spider.art.coocan.jp/index.html))
- 新海栄一.日本のクモ.東京,文一総合出版,2017,p.407. , ISBN 9784829984055 (前述 2006.11 発行の増補改訂版)
- 須黒達巳.ハエトリグモハンドブック.東京,文一総合出版,2017,p.144. , ISBN 9784829981498 (2022.4 増補改訂版 p.152 有り)
- 小野展嗣・緒方清人.日本産クモ類生態図鑑:自然史と多様性.平塚市,東海大学出版部,2018,p.713 , ISBN 9784486021575
- 馬場友希・鈴木佑弥・谷川明男.クモの巣ハンドブック.東京,文一総合出版,2021.p.112 , ISBN 9784829981689 (野外観察でクモの巣から、そのクモの種類がわかるように持ち運びできるようにしたハンディ版の図鑑。)
- 新海明・谷川明男.クモの巣図鑑.東京,偕成社,2013.p119 , ISBN 9784035279907 (身近に見られる約40種類の巣と、その巣をつくったクモを解説を合わせて記載。人家周辺に生息する種類から森林性の種類まで広く掲載されています。)
- 吉田 哉.日本産ヒメグモ科総説.東京,日本蜘蛛学会,2003.p.223 , ISBN 4990144988
- キーワード
-
- クモ
- 蜘蛛
- 日本産
- 備考
- 登録番号
- 2000002030