邦楽について調べる資料をご紹介します。
◆参考図書
邦楽は、ジャンルごとに非常に専門化されています。邦楽の歴史、音楽の特色、楽器、代表曲、人名などを総合的に調べる場合、まず『日本音楽大事典』(平凡社)をひいてみると良いでしょう。また邦楽は、能・狂言、歌舞伎、文楽などのように演劇と結びついている事も多いので、演劇関係のコーナーも覗いてみましょう。
さらに専門的な事柄を調べる場合には、雅楽、能・狂言、声明、三味線音楽など、それぞれ専門の事典類、書籍が役に立ちます。
★印のついた事典は上演時間を調べることができます。
*演劇百科大事典. 早稲田大学演劇博物館. 平凡社, 1960~1962. 全6巻. (W15-717~W15-722)[参 700]
演劇に関する総合的事典。
日本の演劇、すなわち雅楽、能、歌舞伎、新劇、民俗芸能などを中心に、古今東西の演劇関係の事項を1万4,000の大・小項目のもとに解説している。これには映画・テレビ等の演劇、芸能も含まれている。
付録に世界演劇年表、芸能系譜、県別民俗芸能暦、能狂言現行曲目表、および五十音順・難訓・ABC順の各索引がある。
*雅楽事典. 東儀信太郎ほか執筆. 音楽之友社, 1989, 349p. (WS00-130) [参 768.2]
雅楽に関する総合的な事典。
「雅楽概説」に続き、「雅楽一般」、「楽器・奏法」、「舞具・装束」、「管絃曲・舞楽曲」、「歌曲」、「舞名目」、「人名・家系名」、「文献名・雅楽演奏団体」の8章、そして「索引」からなる。
語彙は、『教訓抄』『楽家録』という雅楽の2大楽書と呼ばれる古文献を中心に、約1800項目を選び、関連項目ごとに前記の8つの章に分類、各章内は五十音順に配列している。
古文献は平易な現代語になおして引用し、五線譜の楽譜や図版を加えるなど、一般的にもわかりやすい事典となっている。
なお本書は、代表執筆者の東儀新太郎執筆による『雅楽(管絃・舞楽)用語集覧』(「国立劇場雅楽公演解説書」昭和47年2月~50年10月)をもとに、大幅に増補・加筆し、新たに編集したものである。
*図説雅楽入門事典. 遠藤徹ほか. 柏書房, 2006, 247p. (WS02-175) [参 768.2]
「人と歴史編」「鑑賞編」の2部構成をとっており、雅楽に関する入門的な事項が網羅されている。
「人と歴史編」では、雅楽が形づくられ、受け継がれてきた歴史を、雅楽の源流、日本への伝来の時代から現代まで、多くの図版や写真でたどっている。著名な古典文学に描かれた雅楽や、有形・無形の文化遺産などにも触れることによって、雅楽の歴史が実感できるよう配慮されている。
「鑑賞編」は、幅広い視野で雅楽を知るためのガイドブックとして、舞、衣装、楽器、楽曲解説などの項目に分け、系統的に雅楽を解説している。
付録として、CDの一覧、主な参考文献リスト、人名索引・事項索引がある。
なお、本文中の漢字には、原則としてすべて振り仮名がつけられている。
*箏と箏曲を知る事典. 宮崎まゆみ. 東京堂出版, 2009, 449p. (WR05-525) [参 768.12]
筝について、あるいは筝曲について、全体を概観できるように意図されている事典。
第一部では筝曲を「宮廷筝曲」「筑紫筝曲」「当道(とうどう)筝曲」に分けて解説、第二部では筝の楽器としての変遷、装飾デザイン、筝職人などについて解説。
巻末には筝曲史、日本・西洋音楽史を比較対照できる総合略年表と、五十音順による索引などが付されている。
*日本音楽基本用語辞典. 音楽之友社編. 音楽之友社, 2007, 189p. (WR05-899) [参 768]
雅楽からアイヌ音楽まで、基本的な用語をジャンル別に解説した辞典。
最初に一般的用語の解説があり、続いて、雅楽、仏教音楽、琵琶楽、能・狂言、三味線音楽、歌舞伎囃子、地歌、筝曲、尺八音楽、民謡、民俗芸能、沖縄・奄美の音楽、アイヌ音楽のジャンルに分け、解説されている。
巻末には用語索引を付し、見出し語を五十音順で検索できるように編纂されている。
*日本音楽大事典. 平野健次ほか監修. 平凡社, 1989, 1034, 112p. (WS00-126) [参 768]
日本音楽の総合的な事典。
全体は「事項編」「人名編」「曲名編」の3部分からなり、巻末に総索引を置く。「事項編」は、「総記」、「楽器」、「古代・中世音楽」、「近世・近代音楽」に分けられ、歴史的な流れの中で関連事項を総合的に把握できるようになっている。「引く事典」であると同時に 「読む事典」の性格も持つ。
平凡社刊『音楽事典』(1954-1957)、『音楽大事典』(1981-1983)の日本・東洋関係の項目をもとに、全面的に増補・改訂された。
なお本書の「曲名編」のみを独立させ、改訂した『邦楽曲名事典』(WS01-261)(後出)もある。
*日本古典音楽文献解題. 岸辺成雄博士古稀記念出版委員会編. 講談社, 1987, 7, 560p. (U04-676) [参 768]
日本の古典音楽に関係する古文献、古資料、及び明治以降の研究書、学術的レコードアルバム等の文献解題。
現代の刊行・制作物は、昭和59年7月31日までに発行・発売のものに限っている。各文献、資料の内容、特色、成立、刊行、体裁等を記す。
音楽のジャンルは、雅楽、仏教音楽、琵琶楽、能・狂言、箏曲・地唄・尺八、三味線音楽など、日本の古典音楽全般を網羅する。また「研究の手引」として、各ジャンルの研究史、主要な文献の紹介など、そして巻末には、ジャンル別の項目索引がある。
なお本書は、東京大学名誉教授岸辺成雄氏の古稀記念として出版され、同氏の年譜と業績目録を付す。
*能・狂言事典. 西野春雄ほか編集委員. 平凡社, 1987, 505p. (W18-159) [参 700]
能・狂言に関する事典。「曲名篇」(Ⅰ能曲名、Ⅱ狂言曲名)、「事項篇」(Ⅰ歴史・資料・役、Ⅱ技法・演出、Ⅲ舞台・道具類)、「人名篇」(Ⅰ人名、Ⅱ現代人名)、付表、索引からなる。
「曲名篇」では、現在上演されている能作品すべてと、明治以後の新作能の代表的作品、狂言の代表的作品約170番と若干の新作狂言について、作者、登場人物、あらすじなどを解説する。
「事項篇」は、能・狂言の歴史にかかわる事項と、演技・演出にかかわる事項とに分けられている。
「人名篇」は、能の成立期から現代までの役者のほか、研究・評論にかかわった人物、外国人も含む。
*★能楽ハンドブック. 小林保治編. 三省堂, 1993, 285p. (WR02-033) [参 773]
能には固有の約束ごとや舞台上の慣習が非常に多いが、あたりまえすぎる事柄は、能の研究書や解説書にも、くわしくはのべられていない。その欠をおぎない、能を100%わかるための案内書として、この事典は編集されている。
第一部は、「能への招待」として、芸術的性格や舞台展開について述べられている。第二部は曲目編で、主な曲目について、作者・能の種類・簡単な内容・上演時間・典拠が記載されている。第三部は事項・用語編。第四部は、年表、参考文献、能楽堂一覧など。巻末に索引あり。
*仏教音楽辞典. 天納傳中ほか編著. 法蔵館, 1995, 508, 60p. (WS01-328) [参 768.28]
仏教音楽に関する辞典。
本編は「伝統儀式音楽編」、「現代仏教音楽編」に分けられ、付録として、「声明詞章出典一覧」、「仏教関係論著・解説・目録一覧」、「仏教音楽レコード・CD関係一覧」、および総索引からなる。さらに、「仏教音楽の世界」と題するoリジナルCDが付録として付いている。
「伝統儀式音楽編」では声明を中心とする伝統的な仏教音楽を扱い、人物・曲名・章句・法要・楽理・奏法・楽器・装束などを解説。
「現代仏教音楽編」では明治期以降にヨーロッパ音楽の影響を受けて作曲された作品を扱い、曲名・作曲者名などの他に、関係機関(団体)・著作なども採りあげている。
*邦楽曲名事典. 平凡社, 1994, 256, 51p. (WS01-261) [参 768]
日本音楽全般の曲名事典。
古代から中世、近世、現代までの日本音楽(おもに現在演奏されている曲)について、音楽の種類、曲の成立、内容、特色などを解説する。
巻末には、各曲の異称・別称を含めた曲名索引、作曲者などの人名索引の他、曲名の最初の一文字から検索できる漢字画数索引がある。
『日本音楽大事典』(平凡社刊)の「曲名編」を改訂し、一巻本として独立させたもの。
*邦楽舞踊辞典. 渥美清太郎編. 冨山房, 1956, 32, 108, 459p. (U00-130)
日本舞踊曲と邦楽曲の辞典。
初版は昭和13年で、本書はその増補改訂版。冒頭に舞踊曲、邦楽曲の概説と五十音順の索引がある。
本編は、曲名の通称をローマ字で表記し、アルファベット順に配列。各曲ごとに作品の成立、曲の内容と特色などを解説する。採り上げられているジャンルは、長唄、常磐津、富本、清元、新内、一中、河東、荻江、薗八、端唄、うた沢、小唄、地唄、箏曲、尺八、謡曲、民謡、義太夫。 本書が出版された時点で演奏が伝えられていた邦楽曲だけに限定している。
古い本であるが、類書があまりないこともあり、現在でもよく用いられている。