超高齢社会を迎えた日本では、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると言われており、誰もが認知症になる可能性があります。いつかに備えて、認知症に関しての基礎知識を身に着け、相談窓口や利用できる制度等を知っておくことは、私たち一人一人の課題です。各自治体でも、認知症にやさしい社会づくりの取り組みが始まっています。
この調べ方案内では、認知症の基礎知識から、利用できる制度、介護施設等の調べ方、相談窓口や役立つウェブサイトなど、認知症に関する情報を幅広くご紹介します。
1 認知症を理解する
(1)認知症とは?
『認知症の予防と生活指導 インフォームドコンセントのための図説シリーズ』(遠藤英俊著 医薬ジャーナル社 2013)
医師が患者さんに説明するときに使用することを考えて作られた本。医師向けだが、図が多くわかりやすい。
『認知症疾患診療ガイドライン2017』(日本神経学会監修 「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会編集 医学書院 2017)
(注)診療ガイドラインとは、各学会などがそれぞれの病気について、科学的な根拠に基づいて作成した標準的な診療方法の書かれた資料のことです。ガイドラインに示されるのは一般的な診療方法であるため、必ずしも個々の患者の状況に当てはまるとは限りません。
《Minds版やさしい解説 認知症(第2版)》(
http://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0115/G0000592/0001 Minds)
信頼性の高い情報を提供している日本医療機能評価機構が運営する「Mindsガイドラインライブラリ」のウェブサイトから読むことができるもので、認知症とはどんな病気か、一般の方向けにやさしく解説している。
【知っておきたい 新オレンジプラン】
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えて2015年1月に厚生労働省により策定(2017年7月改訂)されました。新オレンジプランでは、「認知症の人の意志が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現することを目指して」7つの柱が示されました。「認知症の人にやさしい地域づくり」を推進していくため、この7つの柱に沿った取り組みが各地で行われています。
1 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
2 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
3 若年性認知症施策の強化
4 認知症の人の介護者への支援
5 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
6 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
7 認知症の人やその家族の視点の重視
《認知症施策について 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)》(
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236.html 厚生労働省)
【若年性認知症とは?】
65歳未満で発症した認知症を、若年性認知症といいます。働き盛りのうちに認知症になることで、経済的に困難な状況に陥る、家族の生活に影響が出るなど、負担が大きくなりがちです。受けられる制度や相談窓口などを調べる方法を知っておきましょう。
『本人・家族のための若年性認知症サポートブック』(小長谷陽子編著 中央法規出版 2010)
若年性認知症を理解するための医学的、心理的な面や認知症高齢者との違いにはじまり、サポート方法や制度、窓口の紹介、認知症の人のケアについてなどを詳しく解説した本。
《若年性認知症コールセンター》(
http://y-ninchisyotel.net/ 社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修 大府センター)
「若年性認知症について知る」「生活を支える制度や支援」「全国各地の集いや事業所等」「全国各地の専門相談窓口」などの項目別に、若年性認知症に関連する情報をまとめている。
トップページ〉資料集 には、若年性認知症に関するパンフレット類が豊富に公開されており、無料でダウンロードできる。電話相談では、若年性認知症に関する様々な相談について、専門的教育をうけた相談員が無料で対応する。相談:0800-100-2707 月~土10:00~15:00(年末年始・祝日除く)
《若年性認知症に関する取組について》(
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0609/ninchisyosesaku/jakunen.html 埼玉県福祉部 地域包括ケア課)
県内の相談窓口のほか、セミナーなどの情報も。若年性認知症に関するパンフレットもダウンロードできる。
(2)認知症の予防
『まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防 軽度認知障害(MCI)でくい止める本』(朝田隆監修 講談社 2014)
『認知症を楽しく予防しよう! 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士からの提案』(飯山準一監修 久保高明[ほか]著 医学と看護社 2017)
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士それぞれの観点から認知症予防を提案する本。前半部分は、それぞれの立場から認知症について解説し、後半は体操やゲームなどのメニューが豊富に紹介されている。
【回想法とは?】
認知症の現場でも活用されている「回想法」。回想法は、1960年代にアメリカの精神科医であるバトラ-が提唱した、高齢者を対象とした心理療法です。過去を思い出し、思い出を語ることで脳が活性化したり、元気になる効果が注目され、介護施設をはじめ様々なところで取り入れられています。
『Q&Aでわかる回想法ハンドブック 「よい聴き手」であり続けるために』(野村豊子[ほか]編 中央法規出版 2011)
『認知症と回想法』(黒川由紀子著 金剛出版 2014)
『認知症予防のための回想法 看護・介護に活かすアプローチ』(鈴木正典編著 日本看護協会出版会 2013)
2 病院を探す
(1)認知症疾患医療センターを探す
認知症に関する相談や診療、情報提供の拠点として設けられているのが認知症疾患医療センターです。認知症に関する一定の要件を満たす医療機関に対して、都道府県や指定都市によって指定されています。平成31年1月現在、埼玉県内の認知症疾患医療センターは10か所。県のウェブサイトから確認できます。
《認知症疾患医療センター》(
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/nintisyosennta.html 埼玉県保健医療部 疾病対策課 精神保健担当)
(2)専門医を調べる
認知症の専門医は、日本認知症学会、日本老年精神医学会がそれぞれ認定しています。日本認知症学会のウェブサイトでは、会員の中で、認知症診療において十分な経験と知識を有し、審査に合格した医師会員を、認知症学会専門医として公開しています。
《日本認知症学会》(
http://dementia.umin.jp/ 日本認知症学会)
会員の中で、認知症診療において十分な経験と知識を有し、審査に合格した医師を、認知症学会専門医としてウェブサイト上で公開している。
(3)もの忘れ外来のある病院を調べる
近年では認知症の専門の外来として、「もの忘れ外来」「認知症外来」などを開設している病院が増えています。
《公益社団法人 認知症の人と家族の会》(
http://www.alzheimer.or.jp/ Alzheimer's Association Japan)
ホーム 〉認知症を知る 〉全国もの忘れ外来一覧
「家族の会」が独自に調べた全国の「もの忘れ外来」「認知症外来」の一覧、認知症疾患医療センタ一の一覧が見られる。
【まずは、かかりつけ医を受診するという方法も】
専門医を訪ねるのは少し気が重い・・・そんな時には、まずはかかりつけ医に相談してみるという方法も。認知症医療とケアの現場でも、かかりつけ医の役割の重要性が高まっています。
『ともに歩む認知症医療とケア』(大場敏明[ほか]著 現代書林 2015)
『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ 続・「ともに歩む認知症医療とケア」』(大場敏明[ほか]著 現代書林 2017)
3 利用できる制度
患者さんを支える家族のみならず、いつか認知症になるかもしれない私たち自分自身のためにも、利用できる制度を知っておくことは大切なことです。
【知って便利な 認知症ケアパス】
地域ごとに、「いつ」「どこで」「どのような」認知症に関する医療・介護サービスを受けることができるのかをまとめたものです。各地域のケアパスについては、各市町村のウェブサイトでも公開されています。詳しくは、各市町村役場や地域包括支援センターへお問い合わせください。
「6 役立つウェブサイト」で紹介している「地域包括ケアシステム応援サイト スマイル埼玉」では、各市町村の状況を検索することもできます。
(1)福祉・医療の制度
『認知症で使えるサービスしくみお金のことがわかる本』(田中元著 自由国民社 2018)
認知症の基礎知識から制度や相談窓口、医療や介護のサービス、地域での取り組み、お金や権利擁護のことまで、患者さん、家族が知っておきたい情報をテーマごとにわかりやすくまとめた本。
『図解福祉の法律と手続きがわかる事典 4訂版』(若林美佳監修 三修社 2018)
(2)知っておきたい暮らしを支えるためのサポート制度
〈あんしんサポートねっと 福祉サービス利用援助事業〉
物忘れなどのある高齢者・知的障害・精神障害のある方などが、安心して生活が送れるように、福祉サービス利用援助、日常生活上の手続き援助、日常的金銭管理、書類等預かりサービスなどの援助を行っている。契約するまでの相談は無料だが、契約後の援助には料金が必要。相談・申込窓口は、各市町村の社会福祉協議会。
《埼玉県社会福祉協議会》(
http://www.fukushi-saitama.or.jp/site/perf/kenri/self-support.html 社会福祉法人 埼玉県社会福祉協議会)から、制度の詳しい内容や各市町村の社会福祉協議会の連絡先が確認できる。
〈成年後見制度〉
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方を保護し、財産管理など法律的な支援をする制度。
『よくわかる成年後見制度活用ブック 精神障害や認知症などのある人の意思決定支援のために』(日本精神保健福祉士協会監修 岩崎香[ほか]編 中央法規出版 2018)
《法務省ウェブサイト 成年後見制度~成年後見登記制度》(
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html 法務省)
制度の詳しい説明の他、わかりやすいパンフレットのダウンロードもできる。
《公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート》(
https://www.legal-support.or.jp/ リーガルサポート)
成年後見の具体的な手続きなどを分かりやすく解説。具体的な相談をしたい時の相談窓口を県別に検索することができる。埼玉支部では電話相談を行っている。(埼玉支部電話相談は、事務局において相談内容の概要を聴取したのち、司法書士(リーガルサポート埼玉支部会員)から相談者へ電話連絡の流れになる。)
埼玉支部事務局 048-845-8551 月曜~金曜日10時~12時、13時~16時(祝日・お盆・年末年始除く)
4 サポート方法・介護
(1)ケアに関すること
『認知症の人の「想い」からつくるケア 在宅ケア・介護施設・療養型病院編』(井藤英喜監修 伊東美緒編著 インターメディカ 2017)
『新しい認知症ケア 完全図解 介護編』(三好春樹著 講談社 2012)
出版はやや古いものの、見開き、イラストつきで、ケア・介護に関する情報がわかりやすくまとまった本。問題と思われる行動への対応のヒント、本人の気持ちを考えた接し方など具体的で参考になる。
『認知症ケアガイドブック』(日本看護協会編 照林社 2016)
日本看護協会が、認知症ケアにかかわるすべての看護職に向け、基礎基本を学べるガイドブックとして作り上げたもの。図表を用いたわかりやすい記述、細かい項目立てで、実践的な内容となっている。
【ユマニチュード (Humanitude)とは?】
認知症ケアの効果的な技法として注目を集める「ユマニチュード」。ユマニチュードとは、「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語の造語です。ユマニチュードでは、「ケアする人」と「ケアをうける人」の信頼関係(コミュニケーション)に重きを置いています。
『ユマニチュード入門』(本田美和子[ほか]著 医学書院 2014)
カラーイラストと簡潔な文章で、ユマニチュードの考え方が易しく解説された本。
『家族のためのユマニチュード “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア』(イヴ・ジネスト[ほか]著 誠文堂新光社 2018)
(2)介護サービス事業所・施設を探す
《介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(
http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/ 厚生労働省)
全国のデイサービス施設・介護施設などの介護サービス事業所と、地域包括支援センターが検索できる。
《さいたま介護ねっと》(
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0603/kaigo-net/index.html 埼玉県 福祉部地域包括ケア課 高齢者福祉課)
トップページ〉サービス利用者の方へ〉介護サービス施設・事業所をさがす!
指定事業所・施設一覧、地域密着型サービス事業所一覧などのダウンロードのほか、上記「介護サービス情報公表システム」をこちらのページからも検索することができる。
《サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム》(
https://www.satsuki-jutaku.jp/index.php 一般社団法人 高齢者住宅協会)
「サービス付き高齢者向け住宅」とは、高齢者単身・夫婦世帯が安心して居住できる住宅のこと。バリアフリー構造で、医療関係者や福祉の専門家等のケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐している。ウェブサイトからは、施設情報や住宅ごとの詳しい運営情報などを地域・サービスから確認できる。
5 相談窓口、話を聴く
(1)相談する
《認知症疾患医療センター》(
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/nintisyosennta.html 埼玉県保健医療部 疾病対策課 精神保健担当)
(注)認知症疾患医療センターについての説明は、「2 病院を探す」をごらんください。
《公益社団法人 認知症の人と家族の会》(
http://www.alzheimer.or.jp/)
全国47都道府県に支部があり、「介護家族のつどい」「本人・若年のつどい」「男性介護者のつどい」などのつどいや、電話相談を実施している。ウェブサイトからは認知症に関する様々な情報を入手できる。
電話相談:0120-294-456 10:00~15:00(土日祝、夏季・年末年始除く)
(2)体験談を聴く
《認定NPO法人 健康と病いの語り》(
https://www.dipex-j.org/ ディペックス・ジャパン)
「病気の診断を受けた人やその家族が、同じような経験をした人たちの「語り」に触れて、 病気と向き合う勇気と知恵を身につけるために作られたウェブサイト。「認知症の語り」からは、認知症の人とその家族の生の声を映像・音声・テキストで読むことができる。
【つながろう!認知症カフェ】
認知症の人や家族、地域の人など、誰もが集うことのできる「認知症カフェ」。オレンジカフェとも呼ばれています。地域での開催状況は、まずはお近くの地域包括ケアセンターや市町村役所にお問い合わせを。
「6 役立つウェブサイト」で紹介している「地域包括ケア応援サイト スマイル埼玉」では、各市町村の状況を検索することもできます。
『ようこそ、認知症カフェへ 未来をつくる地域包括ケアのかたち』(武地一著 ミネルヴァ書房 2017)
6 役立つウェブサイト
《地域包括ケアシステム応援サイト スマイル埼玉》(
https://www.pref.saitama.lg.jp/houkatsukea/index.html 埼玉県福祉部 地域包括ケア課 地域包括ケア担当)
「地域包括ケアシステム」とは、高齢になっても住み慣れた地域で生活できるよう、地域の人々と行政、医療や介護、福祉の専門家が協力しあって行う地域づくりのこと。このウェブサイトでは、市町村や取組項目から、各地域の地域包括ケアに関する取り組みを検索することができる。
(認知症に絞った情報を探すには、 トップページ〉認知症総合支援について から調べることができる。)
《WAM NET(ワムネット)》(
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/whatwamnet/PC_OPEN_whatWamnet_Top.html 独立行政法人 福祉医療機構)
福祉・保健・医療に関する制度・施策やその取り組み状況などに関する情報をわかりやすく提供するウェブサイト。
《NHKハートネット 福祉情報総合サイト》(
https://www.nhk.or.jp/heart-net/ 日本放送協会)
障害や病のある人、「生きづらさ」を抱えている人、支える家族や共感する人たちのための総合情報サイト。
NHKの福祉に関する番組の放送スケジュール、関連記事や動画、相談窓口などを見ることができる。
トップページ〉テーマ別情報・窓口〉認知症 から、認知症に関する様々な情報を入手することができる。
【認知症にやさしい図書館】
「認知症にやさしい図書館」としての取り組みを行う図書館が増えてきています。筑波大学図書館情報メディア系の下記ウェブサイトからは、「認知症にやさしい図書館ガイドライン」をダウンロードすることができます。
《超高齢社会と図書館研究会》(
http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~donkai.saori.fw/a-lib 筑波大学図書館情報メディア系・知的コミュニティ基盤研究センター呑海研究室)
ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2019年1月18日。