資料館には、明治5年の博物館の創設以来、収集、蓄積してきた貴重な資料が数多く所蔵されています。資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、2009年7月~2014年12月まで資料館内に展示コーナーを設置し、25回に渡って種類別にご紹介をしました。
第13回は前回につづき美術全集の展示をいたします。
第13回 美術全集 (続)
資料館では、通史型の美術全集をはじめ、時代や地域別、絵画、彫刻、工芸などの分野を限ったもの、美術館や社寺等の所蔵者別など各種の美術全集を所蔵しています。第12回では、明治期の日本美術の全集が、写真や印刷技術の発達や、日本の美術史学の成立に関わって誕生したことに触れました。
日本美術の全集としては、大正期に文部省編纂の「日本国宝全集」(全84輯)の刊行が始まり、戦後の1952年には国立博物館や文化財保護委員会の編纂する「国宝図録」、「日本美術全集」などが刊行されています。
西洋美術の全集については、明治後期に「西洋美術資料」のような図版集の刊行が始まりましたが、大正期にかけ西洋美術の受容が進んで一般の関心も高まるなか、平凡社から「世界美術全集」というタイトルの最初の全集が刊行され、広く普及をしました。
1950年代には当時の「現代美術」の全集が刊行されるようになり、60年代以降になると、「日本美術体系」(講談社 全11巻)、「原色日本の美術」(小学館 全30巻)、「日本美術全集」(学習研究社 全25巻)など、各出版社の一大文化事業としての刊行が切れ目なく行われ、各社が競合していわゆる美術全集の隆盛の時期を迎えました。しかし、社会情勢の変化から90年代の「日本美術全集」(講談社 全26巻)、「世界大美術全集 西洋編・東洋編」(小学館 全28巻・18巻)の刊行以後、新規の美術全集の刊行はありません。
美術全集は、制作された当時の最新研究や印刷技術が反映された魅力ある刊行物だと言えますが、個人や家庭で作品を鑑賞したり知識を得るための手段としては重厚長大であり、今後は手軽な入門書や雑誌形式のもの、あるいはDVD等の他のメディアやwebでの鑑賞などに席を譲ることになるのかも知れません。しかし反面、図書館等では「美術作品レファレンス事典」のようなツールを利用することにより、既存の美術全集の収録作品についてのアプローチがより便利になっています。今後も活用されることを期待しています。
今回は、昭和期以後の美術全集をとりあげて展示します。
<展示期間>
2011年5月9日~2011年6月29日
<展示資料>
1 『世界美術全集 第7巻』
東京 平凡社, 昭和2年(1927)12月 (当館請求番号:108-21)
2 『現代世界美術全集 第11巻』 座右宝刊行会編
東京 河出書房, 昭和29年(1954)6月 (当館請求番号:108-B32)
3 『世界美術大系 第12巻』 吉沢忠編
東京 講談社, 昭和39年(1964)7月 (当館請求番号:108-B54)