レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2025年10月05日
- 登録日時
- 2026/01/30 14:23
- 更新日時
- 2026/03/04 14:43
- 管理番号
- 名古屋市緑₋2025₋001
- 質問
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解決
あゆち潟の海岸線の変遷が分かる文献を探している。
- 回答
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あゆち潟は、漢字にすると「年魚市潟」と書きます。『角川日本地名大辞典』p.116に、奈良期から見られる地名で万葉集の歌に詠まれており、「比定地は伊勢湾に面する愛知郡の低湿地帯・沿岸部」で所説一致すると書かれています。
また、『海と列島文化8』p.236には、熱田の岬から名和(なわ)(東海市北部)にかけての湾内に遠浅で広がっていた南北約6キロメートル、東西約3キロメートルの干潟と書かれています。p.238には、「図141 アユチの古墳分布」があり、古墳造営当時6世紀前半の「アユチ潟」の海岸線がわかります。
①『あゆち潟の考古学』②『あゆち潟の古代』という名古屋市博物館の企画展図録には、①はp.5に弥生時代の海岸線図、②はp.8-9に江戸時代以前の海岸線を加色によってあらわした明治24年測図の地形図の複製が掲載されています。
『地図が語る今昔』の本文p.2に「名古屋市における縄文・弥生・古墳遺跡の分布図」があり、「海岸線は弥生時代の中期(推定)を示す。」とあります。この図には、現在の名古屋港も書き入れられており、比較することができます。
江戸時代から明治時代の初頭にかけて主に現在の南区の新田干拓が進められ、31の新田の開発とともにあゆち潟は埋め立てられていきました。新田干拓による海岸線の変遷を知ることができる資料に『南区の新田干拓の歴史』があり、巻頭に図があります。「尾張国絵図」(1647年)は新田開発が進む以前の絵図です。「尾張志付図(愛知郡)」(1844年)は尾張藩士の絵師小田切春江による絵図で、江戸末期1856年までに開発された28の新田が書き込まれています。さらに「南区の新田」①②には現在の都市計画図らしき地図に「新田名と新田の境界」が書き込まれており、地図に続く資料「南区の新田年表」によって、埋め立てによる海岸線の変遷の参考になります。
明治40年に熱田全町および隣接する村の新田が名古屋市へ編入されたことに伴い、熱田港が名古屋港に改称され、近代的な港にするための築港工事が行われていきました。2007年に名古屋港開港100周年を迎え、記念誌『名古屋港開港100年史』が発行されており、図版や写真が多く掲載されています。『名古屋築港誌』は、「熱田灣築港図」や、昭和16年に完成した「第四期工事」図など詳細な港の地図が掲載されています。
- 回答プロセス
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1.『角川日本地名大辞典』で「あゆち潟」を調べました。p.116に、あゆち潟は漢字で「年魚市潟」と書き、「伊勢湾に面する愛知郡の低湿地帯・沿岸部」と比定され、諸説は一致しているが具体的には明らかでないと記述がありました。したがって、名古屋市で現在の伊勢湾に面する南区を中心に調査を実施しました。
2.「年魚市潟」で所蔵資料の検索をすると、『名古屋市見晴台考古資料館研究紀要 17号』に「伊藤厚史:古墳時代年魚市潟の港津を考える」がありました。p.92に「図8 年魚市潟の古墳分布(『伊勢と熊野の海』より)」があり、古墳時代と思われる海岸線が確認できました。元の資料『伊勢と熊野の海』を検索すると、所蔵していることがわかりました。アユチ潟とは、熱田の岬から名和(なわ)(東海市北部)にかけての湾内に遠浅で広がっていた南北約6キロメートル、東西約3キロメートルの干潟、と具体的に書かれていました。(p.236)また、p.238に前述の資料に転載されたと思われる地図「図141 アユチの古墳分布」がありました。地図の年代は、文脈から古墳造営当時6世紀前半であることがわかります。
3.「あゆち潟」で所蔵資料の検索をすると、①『あゆち潟の考古学』②『あゆち潟の古代』という名古屋市博物館の企画展図録があり、①はp.5に弥生時代の地図、②はp.8-9に江戸時代以前の海岸線を加色によってあらわした明治24年測図の地形図の複製が掲載されていました。
4.「名古屋市南区-歴史」で検索し、資料をピックアップしました。
・『地図が語る今昔』という地図に特化した資料が見つかりました。本文p.2に「名古屋市における縄文・弥生・古墳遺跡の分布図」があり、「海岸線は弥生時代の中期(推定)を示す。」とあります。この図には、現在の名古屋港も書き入れられており、比較することができます。『南区誌 区制七十年の歩み』p.5の弥生時代の地図を転載したものと思われます。
・『南区の歴史』は、参考になる海岸線の地図はありませんでした。しかし、著者の三渡俊一郎の著作を検索すると、名古屋郷土文化会の機関誌『郷土文化』の第42巻第3号(通巻151号)に「尾張平野海岸線の変化について」という論文がありました。p.8-14「四 歴史時代の海岸線」の章は史料に基づき詳細な記述があり、p.13に「図3 尾張平野の推定海岸線」があり、弥生・奈良・鎌倉時代の推定海岸線が見られますが、広範囲で小さな地図のため詳細ではありません。
・『南区の新田干拓の歴史』で新田開発による海岸線の変遷がわかります。江戸時代から明治時代の初頭にかけて主に現在南区の新田干拓が進められ、31の新田の開発とともにあゆち潟は埋め立てられていきました。巻頭に地図があります。
「尾張国絵図」(1647年)は新田開発が進む以前の絵図です。
「尾張志付図(愛知郡)」(1844年)は尾張藩士の絵師小田切春江による絵図で、江戸末期1856年までに開発された28の新田が書き込まれています。
「南区の新田」①②には現在の都市計画図らしき地図に「新田名と新田の境界」が書き込まれており、地図に続く資料「南区の新田年表」によって、埋め立てによる海岸線の変遷の参考になります。
5.名古屋港の歴史を調べました。
「名古屋港」で検索し、築港史に関連する資料をピックアップしました。
・『名古屋港開港100年史』 1907年に開港した名古屋港が2007年に100周年を迎えて発行された記念誌。図版や写真が多く掲載されていました。
・『名古屋築港誌』 執筆者は明治33年(1900)に愛知県の土木技師として着任し、以来40年にわたり名古屋港築港事業の完遂に取り組んだ奥田助七郎による執筆。「熱田灣築港図」や、「第一期工事」から「第五期工事」の計画図など詳細な行政資料をもとに編まれています。前出の『名古屋港開港100年史』によると、昭和16年に第4期工事が完成していますが、太平洋戦争勃発により、以降の計画は戦後新たに策定されていきました。
・『名古屋港史-建設編-』 図版資料はありませんでした。
6.地学の分野の資料を探しました。ブラウジングで探した『自然のしくみ(地形・地質)』p.20に地図「濃尾平野の海岸線の変遷(桑原氏による)」があり、Ⅰ弥生時代・Ⅱ古墳時代・Ⅲ江戸時代の海岸線が一つの地図に記されていて比較することができました。しかし、広範囲の小さな地図のため、詳細な地図ではありませんでした。
- 事前調査事項
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質問者は緑区に関する文献を事前に調査。
- NDC
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- 中部地方 (215 9版)
- 日本 (291 9版)
- 地形学 (454 9版)
- 参考資料
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名古屋市見晴台考古資料館 編. 名古屋市見晴台考古資料館研究紀要 17号 2023年. 名古屋市見晴台考古資料館, 2023.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000108188-i33303552 -
網野善彦 [ほか]編. 海と列島文化 第8巻. 小学館, 1992.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002152849 , ISBN 4-09-627008-3 -
小川金雄 編集. 地図が語る今昔 : 名古屋市南区 : 水と風と流木 伊勢湾台風. 小川金雄, 2000.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111182732221 -
愛知県環境部/編. 自然のしくみ(地形・地質) : 自然保護読本. 愛知県, 1980.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23211009210104412 -
名古屋市南区役所 編集. 南区誌 区制七十年の歩み. 名古屋市南区役所, 1998. p. 5
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1970867909867551793 [2026年1月29日確認] -
名古屋市博物館 編集. あゆち潟の考古学. 名古屋市博物館, 1994. p. 3₋5
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002386313 [2026年1月29日確認] -
名古屋市博物館 編集. あゆち潟の古代. 名古屋市博物館, 1998. p. 8~9
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002695060 [2026年1月29日確認] -
名古屋港開港百年史編さん委員会 編. 名古屋港開港100年史. 名古屋港管理組合, 2008.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009346425 -
奥田助七郎 著. 名古屋築港誌. 名古屋港管理組合, 1953.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000924861 -
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典23. 角川書店, 1989. p. 116
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001965951 [2026年1月29日確認] , ISBN 4-04-001230-5
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名古屋市見晴台考古資料館 編. 名古屋市見晴台考古資料館研究紀要 17号 2023年. 名古屋市見晴台考古資料館, 2023.
- キーワード
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- 地形・地質
- 河川・港湾
- あゆち潟
- 年魚市潟
- 考古学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000379946