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レファレンス協同データベース
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レファレンス事例詳細

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事例作成日
2025/11/18
登録日時
2026/01/27 18:04
更新日時
2026/03/04 14:42
提供館
名古屋市鶴舞中央図書館 (2210001)
管理番号
名古屋市瑞-2025-002
質問

解決

音読教室で読んだ『ある少年の正月の日記』(小川未明 著)のなかで、「ある少年」の弟が「やあやあ、コテツが、泣きおるわ。いま血をすわせてやるぞ......。」と言いながら、紙芝居のチャンバラの手まねをして駆けだすシーンがある。コテツとは何か、またこの部分の意味は何か。
回答
文中の「コテツ」は江戸時代前期の刀工長曾祢虎徹(ながそねこてつ)が作った刀のことと思われます。「虎徹」は切れ味の鋭い刀として有名で、新選組局長近藤勇も所持していたといわれています。「ある少年」の弟の言葉は、時代小説、講談などに登場する近藤勇の「虎徹」の切れ味を語る表現に由来しているものと考えられます。同様の表現として「今宵の虎徹は血に飢えている」なども知られているようです。
回答プロセス
瑞穂図書館担当の音読教室で『ある少年の正月の日記』(小川未明 著 初出:1932(昭和7)年1月3日)(青空文庫)(https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51754_63528.html)[2026年1月31日最終確認]をとりあげたところ、参加者から上記の質問があり、別の参加者から「コテツは「虎徹」という刀鍛冶がつくった刀で、近藤勇が持っていた」という情報をいただきました。

まず、「コテツ」が何かをしらべました。
・『平凡社 大百科事典 5』(資料1 p.988-989)の見出し語「こてつ(虎徹)」を確認したところ、「虎徹」は、「長曾祢興里(ながそねおきさと)(1605-77?)」と名のり「古鉄」「虎徹」と称する江戸時代を代表する刀工とわかりました。

以下の資料には近藤勇と虎徹について書かれていました。
・『日本名刀物語』(佐藤寒山著)(資料2 p.194-195)
 虎徹の刀を近藤勇が求めたが偽物であったという話が、ちまたにある話として紹介されています。
・『名刀虎徹』(小笠原信夫著)(資料3 p.154-156)
 近藤勇の虎徹の偽物説が紹介されていますが、「近藤勇の偽物の虎徹というものを見た人は誰もいない」とも述べられています。
・『いっしん虎徹』(山本兼一著、文春文庫)(資料4 p.502-503 )
 長曾祢虎徹の生涯を描いた小説です。巻末解説に「虎徹は新選組の局長・近藤勇の愛刀としても知られ、新選組の人気の広まりが、虎徹の知名度を高めたことも間違いあるまい。映像化された『鞍馬天狗』で、虎徹を手にした近藤が口にする「今宵の虎徹は血に飢えている」の台詞は、あまりに有名だろう」(末國善己 解説)との記述があります。
 『いっしん虎徹』(山本兼一著、角川文庫)(資料5)の巻末解説(細谷正充 解説)もウェブ上で閲覧できました(https://kadobun.jp/reviews/bunko/entry-95878.html)[2026年1月30日最終確認]。ここには、「かつて講談などで使われた、「今宵の虎徹は血に飢えている」」という近藤のセリフは、あまりにも有名である。」との記述があります。

次に、「虎徹」の切れ味について語る近藤勇の台詞が載っている作品がないかどうか調べました。

 「ある少年」の弟が紙芝居のチャンバラの手まねをして駆け出すことから、昭和初期の紙芝居にこの台詞があるのではと考えました。上記(資料4)の解説にある「鞍馬天狗」をヒントに、「『紙芝居大系 第5巻』(資料6)に掲載されている『疾風鞍馬天狗』(p.411-486)を調査しました。ここには近藤勇は登場しますが、この台詞は見つかりませんでした。

・『鞍馬天狗傑作選1 角兵衛獅子』(大佛次郎 著)(資料7 p.26)
 上記(資料7)に、類似の表現が見つかりました。「夜ごと愛刀の虎徹にその血をすすらせている新選組の隊長近藤勇」。
初出は講談社刊「少年倶楽部」昭和2(1927)年3月号~昭和3年5月号「角兵衛獅子 少年の為の鞍馬天狗」です。『ある少年の正月の日記』と時代が一致します。

 次に講談を調べることにしました。
・『少年小説大系 別巻2 少年講談集』(資料8 p.166,639)
 名古屋市図書館OPACで「近藤勇」「講談」を掛け合わせて検索したところ、上記の資料(資料8)に『近藤勇 大日本雄弁会講談社編』が掲載されていることがわかりました。
資料を確認したところ、「虎徹は斬れるぞ。しばらく血にうえて、凄みが加わったようじゃ。今夜は十分になめさせてくれるわ」(p.166)という台詞がありました。この作品は昭和6年12月5日発行の『少年講談 第二巻』に掲載されたものであり、こちらも『ある少年の正月の日記』と時代が一致します。巻末の解題には、「新選組に対する関心は、維新から六十年を経た昭和初年になってやっとたかまった。(中略)時代小説や映画によって新選組は改めて脚光を浴びていた」(p.639)との記述があります。

『ある少年の正月の日記』が発表された昭和初期までに、同様の表現を用いた作品があるか、国立国会図書館デジタルコレクションでも調べてみました。「虎徹 近藤勇」「近藤勇 講談」などをキーワードに検索をし、ログインなしで閲覧可能な範囲でヒットしたもののなかから、以下をあげます。
『鬼梶原 後編』(https://dl.ndl.go.jp/pid/885656)(85コマめ)(明治44年) 「勇が鮮血をしたたかに塗った此の剣は」
『近藤勇:創作講談』(https://dl.ndl.go.jp/pid/919144)(20コマめ)(大正14年) 「今夜は十分に血を塗ってください」

さらに、国立国会図書館デジタルコレクションで「今宵の虎徹」をキーワードに検索したところ、一番古いもので『キネマ旬報(240)』(1926)(昭和2年)がヒットし、検索結果のなかに「今宵の虎徹は血に飢えてる」という文字が見られました。国立国会図書館内限定公開のため、内容は確認できませんでした。 https://dl.ndl.go.jp/pid/7904504 [2026年1月30日最終確認]

以上のことから、、昭和初期の「ある少年」の弟にとって、新選組は関心をひく題材だったことと推察されます。
事前調査事項
NDC
  • 金工芸 (756)
  • 小説.物語 (913)
参考資料
  • 平凡社大百科事典 5. 平凡社, 1984.
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I10111101767365
      (資料1 p.988-989)
  • 佐藤寒山 著. 日本名刀物語. 河出書房新社, 2019.
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029720982
    ,  ISBN 978-4-309-22771-9   (資料2 p.194-195)
  • 小笠原信夫 著. 名刀虎徹. 文藝春秋, 2013. (文春新書 ; 917)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I024418477
    ,  ISBN 978-4-16-660917-8   (資料3 p.154-156)
  • 山本兼一 著. いっしん虎徹. 文藝春秋, 2009. (文春文庫 ; や38-2)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010585015
    ,  ISBN 978-4-16-773502-9   (資料4 p.502-503)
  • 山本兼一 [著]. いっしん虎徹. KADOKAWA, 2024. (角川文庫 ; 時-や56-2)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033461903
    ,  ISBN 978-4-04-115014-6   (資料5)
  • 紙芝居大系 街頭紙芝居編 第5巻. 大空社, 1994.
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002388678
    ,  ISBN 4-87236-922-X   (資料6)
  • 大佛次郎 著. 角兵衛獅子. 文藝春秋, 2007. (鞍馬天狗傑作選 ; 1)
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009124703
    ,  ISBN 978-4-16-326380-9   (資料7 p.26)
  • 少年小説大系 別巻 2. 三一書房, 1995.
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002410247
    ,  ISBN 4-380-95547-8   (資料8 p.166,639)
キーワード
  • 虎徹
  • 近藤勇
照会先
寄与者
備考
調査種別
文献紹介 事実調査
内容種別
人物 言葉
質問者区分
社会人
登録番号
1000379841
転記用URL
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000379841 コピーしました。
アクセス数 75
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