レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年8月6日
- 登録日時
- 2014/09/04 13:50
- 更新日時
- 2015/10/30 11:15
- 管理番号
- 2014-030
- 質問
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解決
①『宇治拾遺物語』128話(『今昔物語集』25-9が同話)に描かれる、
水中の「道(浅瀬)」を渡るような戦術・兵法が中世(1000~1300年頃)に見られるか。
史実・物語は問わないが、日本で伝わっていた話を探している。
②上記128話で、源頼信が「平忠常の乱」において浅瀬の存在を知っていたのは
「家の伝え」であるとされているが、どのような形で伝わっていたのか知りたい。
- 回答
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①「馬で水中を渡る」戦術については複数の記述がありましたが、特に「道(浅瀬)」には限らないようです。
②「家の伝え」について述べている資料を紹介いたします。
詳しくは回答プロセスをご覧ください。
- 回答プロセス
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①「馬で水中を渡る」戦術について
1.「馬術」に関する資料に以下の記述あり。
・日本乗馬協会編『日本馬術史』第1巻(覆刻:大日本騎道会昭和16年刊の複製)原書房, 1980
p.353~ 「第一節 水馬」頼信が浅瀬を渡ったことに触れており、“敵前水馬を決行して偉功を奏した好戦例である”と記載されている。
その後数ページに渡って、合戦に水馬が用いられた例の記載あり。
・伊澤信一著『馬の知識 : 愛馬必携』牧書房 , 1944
p.181~「水馬」として「宇治川の戦、屋島の合戦、藤戸渡、近江湖水渡、その他水馬術によって戦ったことは史上に明かである。」とあり。
・帝国競馬協会編『日本馬政史』第1巻(昭和3年刊の複製)原書房, 1981
p.441~「宇治川先陣物語」として、平家物語に記されている“馬上宇治川渡の件”を挙げている。
・『国史大辞典』
→「水馬」に、”まず馬を水中に乗り入れ、馬の脚の立たなくなったところで騎手は馬から下りて馬側につき添い泳がせ、馬の脚の立つところで再び騎乗するのを原則とする"とあり。
2.佐々木盛綱の戦術
・『源平盛衰記』巻第四十一の「盛綱藤戸を渡す、児島合戦附海佐介海を渡す事」
→ 佐々木盛綱が藤戸の海路を馬に乗りながら渡った際の話が記されている。
・佐々木氏の系譜』田中政三著 大津 : 弘文堂書店 , 1981(『近江源氏』2巻)
p.108~「第十二章 騎馬で海を渡った盛綱」「第十三章 宇治川の先陣四郎高綱」が記載されている。
②「家の伝え」について
・森公章「源頼信と河内源氏の展開過程」『東洋大学文学部紀要. 史学科篇』39号, p. 1-50
https://toyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=6823&item_no=1&page_id=13&block_id=17 [参照:2014-09-01]
p.30~31 ”頼信自身が常陸の地に足を踏み入れたのはこれが初めてであったかもしれない。但し、将門の乱の際には「未練兵道」(『将門記』)と評された祖父経基も一応は坂東に足跡を残しており、父満仲には常陸介の経歴も知られるので(『尊卑分脈』)、「家ノ伝」として統治・軍事に有用な情報が蓄積されていた可能性は認めてよかろう”
・『河内源氏 : 頼朝を生んだ武士本流』元木泰雄著 東京 : 中央公論新社 , 2011
p.25~ 頼信が忠常を攻めた際の「家ノ伝」について述べられている。
・石岡久夫編『日本兵法史』下巻 雄山閣 , 1972
第十三章「源家古法の成立と伝統」
→ 頼信の名前有り。「源家古法伝書」として、大江元綱 伝『家伝兵法』『口授兵法』『口授兵法末篇兵談』『口授兵法末篇問答』、秦武元 著述『軍監十書』『応仁引付』『五段瀬越七芝之書』、楠正豊 編述『続訓閲集』『秘符略』、大江元氏 著『発動集』、古伝『古訓閲集』『闘戦経』が紹介されているが、いずれも所蔵が無く、内容までは確認できず。
※その他資料
以下の文献に頼信が浅瀬を渡って忠常を攻めたという話が記載されているが、全て『今昔物語集』を参照している。
・野口実著『武門源氏の血脈:為義から義経まで』中央公論新社 , 2012
・佐藤和夫著『日本水軍史』原書房 , 1985
・佐藤和夫著『海と水軍の日本史』原書房 , 1995
・中井良太郎著『日本古戦史の眞價』洛陽書院 , 1941
・網野善彦、石井進編『都市鎌倉と坂東の海に暮らす』(『中世の風景を読む』第二巻), 1994
・千葉県郷土史研究連絡協議会編『論集千葉氏研究の諸問題』(『郷土研叢書』1), 1977
・中村金水 著[他]『絵入名将百史伝』 中央出版社, 1924(大正13) では
p.177「総大将頼信朝臣は海原を見渡し、遁げ残りたる海師を召して、海の浅瀬を聞き…」とあり。
(国立国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧が可能。http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/980765 [参照:2014-09-01」)
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210)
- 武術 (789)
- 小説.物語 (913)
- 参考資料
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- 日本乗馬協会 編. 日本馬術史 第1巻 第1巻-. 原書房, 1980-10-30. (NCID:BN08239966)
- 伊沢 信一 著 , 伊沢信一. 愛馬必携馬の知識. 牧書房, 1944. (NCID:BA39474346)
- 帝国競馬協会編 , 帝国競馬協会. 日本馬政史 第1巻-. 原書房. (明治百年史叢書) (NCID:BN02893285)
- 水原一 考定 , 水原, 一, 1925-. 新定源平盛衰記 第5巻. 新人物往来社, 1991. (NCID:BN02723605)
- 田中政三 著 , 田中, 政三. 近江源氏 2巻 (佐々木氏の系譜). 弘文堂書店, 1981. (NCID:BN13447780)
-
森 公章 , 森 公章. 源頼信と河内源氏の展開過程. 2013. 東洋大学文学部紀要. 史学科篇 = Bulletin of Toyo University, Department of History, the Faculty of Literature(39) p. 1-50
https://toyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=6823&item_no=1&page_id=13&block_id=17 (参照:2014-09-01) - 元木泰雄 著 , 元木, 泰雄, 1954-. 河内源氏 : 頼朝を生んだ武士本流. 中央公論新社, 2011. (中公新書 ; 2127) (NCID:BB06785949)
- 石岡久夫 著 , 石岡, 久夫, 1905-. 日本兵法史 : 兵法学の源流と展開 下. 雄山閣, 1972. (NCID:BN01142436)
- 野口実 著 , 野口, 実, 1951- 史学. 武門源氏の血脈 : 為義から義経まで. 中央公論新社, 2012. (NCID:BB07877565)
- 佐藤和夫 著 , 佐藤, 和夫, 1932-. 日本水軍史. 原書房, 1985. (NCID:BN02050989)
- 佐藤和夫 著 , 佐藤, 和夫, 1932-. 海と水軍の日本史 上巻 (古代~源平の合戦まで). 原書房, 1995. (NCID:BN13488096)
- 中井良太郎 著 , 中井, 良太郎, 1887-1953. 日本古戦史の真価. 洛陽書院, 1941. (NCID:BA36830626)
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網野善彦, 石井進 編 , 網野, 善彦, 1928-2004 , 石井, 進, 1931-2001. 中世の風景を読む 第2巻 (都市鎌倉と坂東の海に暮らす). 新人物往来社, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002375671-00 (NCID:BN11816886) - 千葉県郷土史研究連絡協議会 編 , 千葉県郷土史研究連絡協議会. 千葉氏研究の諸問題 : 論集. 千秋社, 1977. (郷土研叢書 ; 1) (NCID:BN0468553X)
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中村金水 著 , 大町桂月 校. 絵入名将百史伝. 中央出版社, 1924.
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/980765 (参照:2014-09-01 NCID:BA43892190) -
国史大辞典編集委員会 編. 国史大辞典 第8巻 (すーたお). 吉川弘文館, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001887623-00 , ISBN 4642005080 (NCID:BN05839537)
- キーワード
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- 宇治拾遺物語
- 馬術
- 兵法
- 源頼信
- 平忠常の乱
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000159364