レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年7月11日
- 登録日時
- 2023/09/05 09:39
- 更新日時
- 2025/05/26 13:42
- 管理番号
- 2023-038-2
- 質問
-
解決
細井広沢(江戸中期の儒者・書家、1658-1735)の作品がどのような経緯で人手に渡ったか調べる方法が知りたい。
出展された展覧会の図録(展覧会カタログ)等で作品の解説を確認することが考えられるが、それ以外の方法があれば知りたい。
- 回答
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細井広沢の伝記に、作品が人手に渡った経緯に関連する部分的な記述がありました。
その他、考えられる調査方法については、回答プロセスをご参照ください。
- 回答プロセス
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1.事典を確認
(1)"細井広沢", WhoPlus [参照 2023-07-11]※本学契約データベース
「人物文献」に『近世能書伝』の情報あり。
(2)『日本畫家辭典』人名篇(大学堂書店, 1970)
細井広沢の項目に『先哲叢談』の情報あり。
2.伝記を確認
(1)回答プロセス1.より下記を確認。
書(作品)について言及あり。
・三村清三郎著, 肥田晧三, 中野三敏編『近世能書伝』(三村竹清集4, 青裳堂書店, 1983)
p.37「広沢が房州へ行った時、先生願いますと言って絹や紙を百枚も旅寓へ持ち込んで書かせた、よくある手だが只で書かせて義理に遣うつもりらしいのを、広沢は承知で半分余りも書いてやったという話もある」
p.39「木綿島…此地に渡辺という旧家があり…雪嶺界天白と書いた彫額がある、享保己亥(四年)春広沢書…この額は広沢自刻といわれ、これに添った広沢の渡辺宛の手紙と共に同じ駅(駿河の吉原駅)の神尾昌之助氏に帰した。又吉原駅の天神様の額も広沢の書で…此の額の原本はやはり近年渡辺氏に持伝えていたが」
・『先哲叢談』(大日本文庫 儒教篇, 春陽堂書店, 1936)
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可
後篇 巻之三
https://dl.ndl.go.jp/pid/1207431/1/181 [参照 2023-07-11]
p.326に、ある僧のために「薬師堂」という字を書き与えた、との内容あり。
p.329-330に、享保年間には広沢の書の評判が高くなり、偽物でもよく売れたという内容の記述あり。
(2)本学OPACを検索
・佐佐木杜太郎著『細井廣澤の生涯』(満願寺, 1983)
国立国会図書館デジタルコレクション(参加館・個人送信)でも閲覧可
https://dl.ndl.go.jp/pid/12252006 [参照 2023-09-08]
p.176に、1709年に親王・上皇に書を献上したとの記述あり。
p.214(年表)にも同内容の記述あり。
p.219~221に「参考文献書目」あり。
3.旧蔵者を調べる
下記(1)~(3)のような方法が考えられるが、時代を遡る方法のため、作者までたどり着くのは難しいと思われる。
(1)売立目録で旧蔵者を調べる
・東京文化財研究所「売立目録作品情報」
(東文研総合検索 https://www.tobunken.go.jp/archives/ [参照 2023-06-29]より)
東京文化財研究所が所蔵する売立目録のうち、明治~昭和(戦前)までの目録について、作品(主として写真の掲載があるもの)をデータベース化したもの。
「細井広沢」で検索すると15件ヒットする(大正~昭和戦前期)。
「入札会名」「家名」「売立終了日」より、売立が行われる前の所蔵者などがわかる場合がある。
・東京文化財研究所「ガラス乾板データベース」
撮影時の所蔵者について記載あり。
・東文研総合検索
細井光沢に関する文献も多数ヒットする。
例えば下記の文献がある。作品が人手に渡った経緯について直接述べられてはいないが、参考になる可能性はあり。
・樋口秀雄. 江戸時代唐様書道の影響―広沢を中心に―. 書道芸術(豪華普及版)月報16(第8巻附録), 1972-03, p.1-4.
・角井博. 江戸の唐様について:流入した書跡・法帖と唐様書道の展開. MUSEUM. 331, 1978-10, p.22-34.
(2)国立国会図書館デジタルコレクションで作品目録などを探す
「細井広沢筆」などで検索してみると、作品目録、展観目録(展覧会のカタログ)などの資料がいくつかヒットする。
その当時の所蔵館、所有者を調べることが可能。
(例)
・『書画展観目録』(三橋承卿, 明治8)
https://dl.ndl.go.jp/pid/850844/1/5 [参照 2023-07-11]
https://dl.ndl.go.jp/pid/850844/1/14 [参照 2023-07-11]
・『時代陳列目録 : 自延暦元年至慶応末年』 [1](京都帝室博物館, 1903)
https://dl.ndl.go.jp/pid/849520/1/50 [参照 2023-07-11]
→「桃季園序(京都市 夏朝生)」
「寛延 辛未夏」=「宝暦1年 辛未 夏ごろ(1751年)」の作品か。
※宝暦1年への改元は秋(10月27日)
※広沢が書いたのは題の草書のみ。
・『書画大観』利(書画大観刊行会, 大正5-6) ※利=第三冊
https://dl.ndl.go.jp/pid/1016535/1/70 [参照 2023-07-11]
→「細井廣澤筆跡(萩野山之博士所蔵)」
・『古文書学概論』(目黒書店, 1930) ※参加館・個人送信
https://dl.ndl.go.jp/pid/1920877 [参照 2023-07-11]
検索結果画面のプレビューによると、25コマ目に
「…一三○細井廣澤筆七律詩稿(東京萩野淑子氏所藏)」
・『一五人の生物学者』(科学新書, 河出書房, 昭和16) ※参加館・個人送信
https://dl.ndl.go.jp/pid/1244267 [参照 2023-07-11]
検索結果画面のプレビューによると、53コマ目に
「彼の書齋の楣間には細井廣澤筆の般若心經の扁額が揭げられ…」
→作品名は不明。
(3)西洋美術関連の所蔵者の変遷の調べ方
・川口 雅子. カタログ・レゾネ編纂と美術作品のドキュメンテーション──『松方コレクション 西洋美術全作品』を事例として. アート・ドキュメンテーション研究. 2020 年 27.28 巻 p. 3-17
https://doi.org/10.24537/jads.27.28.0_3 [参照 2023-07-11]
売立目録、画商の記録、など作品ごとに調べていく方法が記述されている。
4.研究手法の参考になる論文を探す
いずれも、CiNii Researchの論文詳細検索で「刊行物」欄に雑誌名を入力して検索することで、論文名を一覧できる。
(1)書道関連の研究雑誌に、江戸時代の書の作品が人手に渡ることについての研究文献がある可能性あり。
例)『書学書道史研究』『書道学論集』
(2)収蔵品についての研究をしている美術館・博物館の刊行物が参考になる可能性あり。
例)東京国立博物館「MUSEUM」
5.細井広沢関連の文書を探す
細井広沢や関連人物の日記、書簡、等々の文書類があるようなら、そちらを調べるという方法も考えられる。
ただしそのような文書類がまとまって存在するのかは不明。
『細井広沢の生涯』では、細井(子孫)家に伝わる「反故紙」「記録書留」に言及があるため、細井家に文書が存在する可能性はあり。
下記では書簡が数件見つかる。
(1)国立国会図書館サーチ [参照 2023-09-04]
著者名「細井広沢」で検索し、デジタル資料に絞り込むと書簡が見つかる。
(2)所蔵史料データベース(東京大学史料編纂所)
https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ [参照 2023-09-04]
横断検索で書簡がヒットする。
(3)ジャパンサーチ
https://jpsearch.go.jp/ [参照 2023-09-04]
キーワード「細井広沢」で検索すると、作品、文献のほか、書簡もヒットする。
- 事前調査事項
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佐佐木杜太郎著『細井廣澤の生涯』(満願寺, 1983)は確認済。書を献上した件について言及されているのみ。
- NDC
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- 書.書道 (728 10版)
- 日本思想 (121 10版)
- 個人伝記 (289 10版)
- 参考資料
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- "細井広沢", WhoPlus [参照 2023-07-11]
-
沢田章 編 , 沢田, 章, 1876-1934. 日本画家辞典. 大学堂書店, 1970.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001283212-00 (NCID:BN09633497 ※人名篇を参照) -
三村清三郎 著 , 肥田晧三, 中野三敏 編 , 三村, 清三郎, 1872-1953. 三村竹清集 4. 青裳堂書店, 1983. (日本書誌学大系 ; 23-4)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001659904-00 (NCID:BN00303245) -
小柳司気太 校 , 小柳, 司気太, 1870-1940. 先哲叢談. 春陽堂書店, 1936. (大日本文庫 ; 儒教篇)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000723460-00 (NCID:BN10043810) -
佐佐木杜太郎 著 , 佐佐木, 杜太郎, 1906-1983. 細井広沢の生涯. 満願寺, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001715179-00 (NCID:BN00412058) -
東文研総合検索. 東京文化財研究所
https://www.tobunken.go.jp/archives/ [参照 2023-06-29] - 樋口秀雄. 江戸時代唐様書道の影響―広沢を中心に―. 1972-03. 書道芸術(豪華普及版) 月報16(第8巻附録) p. 1-4 (本学書誌ID:BB10015632)
-
角井 博 , 角井 博. 江戸の唐様について--流入した書跡・法帖と唐様書道の展開. 東京国立博物館, 1978-10. (日本の書<特集>-2-) Museum / 東京国立博物館 編 (331) p. p22~34
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I1898736-00 (NCID:AN00004122) -
三橋承卿 編 , 三橋, 承卿. 書画展観目録. 三橋承卿, 1875.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000487747-00 -
京都帝室博物館. 時代陳列目録 : 自延暦元年至慶応末年. 京都帝室博物館, 1903.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000487021-00 (NCID:BA52939976) -
書画大観刊行会 編. 書画大観 元,亨,利,貞,解説(乾,坤). 書画大観刊行会, 1916.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000581182-00 (NCID:BN08004077 ※利(第三冊)を参照) -
勝峯月渓 著 , 勝峯, 月渓, 1899-1928. 古文書学概論. 目黒書店, 1930.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000893868-00 (NCID:BN08122029) -
篠遠喜人 著 , 篠遠, 喜人, 1895-1989. 一五人の生物学者. 河出書房, 1941. (科学新書)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000699430-00 (NCID:BN03925241) -
川口 雅子 , 川口 雅子. カタログ・レゾネ編纂と美術作品のドキュメンテーション : 『松方コレクション 西洋美術全作品』を事例として. アート・ドキュメンテーション学会, 2020-05. アート・ドキュメンテーション研究 = The bulletin of Japan Art Documentation Society / アート・ドキュメンテーション学会 編(27・28) p. 3-17
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I030515017-00 (NCID:AN10403361)
- キーワード
-
- 書 日本 歴史 江戸時代
- 書家
- 儒者
- 作品
- 細井, 広沢, 1658-1735
- 細井廣澤
- 近世
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 書 書道
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000338204