レファレンス事例詳細

事例作成日: 2024/11/30

登録日時: 2025/03/27 17:02

更新日時: 2025/03/27 17:48

提供館: 千葉県立東部図書館 (2110047)

管理番号: 千県東-2024-0007

質問: 解決

第二次世界大戦下の千葉県香取郡佐原町の防空監視哨について知りたい。

回答: 佐原町の防空監視哨について所在地などの詳細がわかる資料は見当たらなかったが、部分的に紹介されている資料や、佐原町に限定しない防空監視哨について記載のある資料は確認ができた。

【資料１】『防空演習史』(千田哲雄編纂　防空演習史編纂所　1935)
佐原町防空監視哨に関係する人物録（五十嵐諦、小川榮一、奥主良三、木内留の4名）の記述がある。

【資料２】『旭防空監視硝の記録』（福原勤著　福原勤　1979）
旭市だけでなく、千葉県内の防空監視硝等についての記載があり、佐原の防空監視硝についても一部記載があった。p41｢8　千葉県下の防空監視隊｣に｢佐原本部所属硝｣について記載がある。また、p42｢千葉県内監視隊本部及び所属監視硝位置図｣から、現在の香取市内に置かれていた監視隊本部の所在地がわかる。また、p317に「私も防衛庁の戦史資料室、千葉県警察本部の警察史資料室及び各地の図書館等を訪れて、資料の収集に努力してみたが、なお未解明の点が残されている…(2)全国及び千葉県内に設置された筈の、各民防空監視隊本部と、これに所属していた防空監視硝の位置とその活動状況…等々である…」との記述がある。

【資料３】『日本防空史』(浄法寺朝美著　原書房　1981）
佐原の監視哨についての詳細の記述はないが、p70に、他の多くの監視哨のうちのひとつの例として、佐原の監視哨も通信施設を持っており、航空総軍司令部となってもこの通信施設はそのまま転用されたという旨の記述がある。

【資料４】『本土防空作戦　戦史叢書 19』（防衛庁防衛研修所戦史室著　朝雲新聞社　1968）
p447の｢少数敵機来襲状況一覧表｣から、｢佐原｣の文字を確認。昭和20年2月9日に佐原に敵機が来襲したことがわかる。p569、570に｢東部軍航空情報隊対空監視哨配置及び情報通信網図(昭和20年2月頃における)｣および｢第三十二航空情報対空監視哨配置要図(昭和20年6月7日第十飛行師団命令に基づく)｣を確認。佐原という地名は掲載されておらず、現在の佐原が位置する場所にも監視哨の記号は記されていなかったが、この図から、千葉県のどの場所に監視哨が配置されていたかがわかる。

【資料５】平山元夫「｢占勝台｣二つの歴史（1）」（『ふるさとのしおり～香取の文化・自然～』通巻48号　2024.6）p48～52
P52に佐原本部の所在地について、｢詳しい情報は見つからなかったが、おそらく佐原警察署にあったのではと推測される。｣とある。

回答プロセス: １　｢佐原　防空監視哨｣でインターネット検索した。事前事項調査で調査済みの多古町広報誌『広報たこ』2014年8月号(https://www.town.tako.chiba.jp/docs/2014072400017/file_contents/2014072400017_www_town_tako_chiba_jp_news_php_img_1408_p1415.pdf)p14に戦時中に「佐原の防空監視隊本部に連絡した」旨の記述を発見。

２　国立国会図書館デジタルコレクション(以下国会デジタル)から事前事項調査で調査済みの【資料１】を確認。佐原町防空監視哨に関係する人物録（五十嵐諦、小川榮一、奥主良三、木内留の4名）がヒットした。

３　事前事項調査で調査済みの『千葉県警察史第2巻』のp324に佐原に防空監視隊が設置されていた記述を確認。所在地などの詳細は確認出来なかった。付録のp28に｢千葉県警察史編さん委員会・幹事(昭和61年1月1日現在)｣として、資料の編さんに携わった人の名簿が記載されている。また、付録のp32に｢千葉県中央図書館を振り出しに東京大学、国立国会図書館、国立公文書館、外務省外交史料館など県内外にわたって寧日ない資料の調査、収集作業が続けられた。｣｢しかし、いざ収集を始めてみると、戦災による焼失、終戦時の焼却処分等によってほとんどの資料が失われ、当時の警察活動を知る手掛かりは極めて乏しいことが分かり前途多難を思わせた。｣との記述がある。

また、p323から、昭和16年12月17日に｢防空監視隊令｣が交付されたことがわかった。国会デジタルにて｢防空監視隊令｣で検索したところ、官報1941年12月17日4484号本文がヒットした。閲覧したところ、佐原については触れられていないものの、「防空監視隊令」について記載は確認できた。

さらに、p327の注より、【資料２】【資料３】【資料４】を確認。

４　千葉県立図書館HP｢図書・雑誌・視聴覚資料検索｣にて、【書名=”戦史叢書”を含む】で所蔵検索をしたところ、『戦史叢書　５１本土決戦準備　１　関東の防衛』(防衛庁防衛研修所戦史室著　朝雲新聞社　1971)を確認。巻末に部隊編成や軍管区部隊一覧表、部隊編成概要、軍配備要図などを発見。佐原は見当たらなかった。

５　菜の花ライブラリーで「防空監視哨」｢防空｣｢防空監視｣｢佐原防空｣で検索。佐原の防空監視哨に関する記事は見当たらなかった。

６　国立国会図書館サーチにて【書名=”防空”を含む、かつ著者名=”内務省”、かつ出版年=～1945年まで】で蔵書検索したところ、『防空関係法令及例規』(内務省防空局著　内務省防空局　1942）を確認。国会デジタルで閲覧可能。
　
７　朝日新聞クロスサーチ、ELNETのELDB、毎索、ヨミダスで｢佐原防空｣で検索したが、佐原の防空監視哨に関する記事は見当たらなかった。

８　千葉県歴史関係雑誌記事索引採録誌一覧から、佐原に関係のある雑誌を確認。以下の雑誌記事を確認したが、佐原の防空監視哨に関する記述は見当たらなかった。

櫻井良樹｢佐原市内の戦争関係碑を見る　－現況紹介－(上)｣(『佐原の歴史』4巻　2004.3)p94-116
櫻井良樹｢佐原市内の戦争関係碑を見る　－現況紹介－(下)｣(『佐原の歴史』5巻　2005.3)p89-106
野口政和｢一億火の玉の後-戦争遺跡をたずねて-｣(『香取民衆史』6巻　1993.1)p146-157
野口政和｢兵どもが夢の跡-香取海軍航空基地-｣(『香取民衆史』8巻　1997.9)p164-179
高橋清行｢佐原でも造っていた『特攻艇・震洋』｣(『香取民衆史』9巻　2003.3)p131-145

また、｢佐原市内の戦争関係碑を見る　－現況紹介－｣の参考引用文献の『幻の本土決戦全８巻房総半島の防衛』(石橋正一著　千葉日報社　1989-1994)及び『資料幻の本土決戦 : 千葉県における軍事機密文書』(野馬曳き文庫 1987)を確認。該当する記述は見当たらなかった。

９　千葉県立図書館HP｢図書・雑誌・視聴覚資料検索｣にて【全項目=”防空”を含む、かつ千葉県資料にチェック】で蔵書検索したところ、『平和の黎明　四番片貝民間防空監視哨秘録』(古川幸男著　古川幸男　1995)を確認。九十九里町をはじめ千葉県の他の地域についての記述はあるが、佐原についての記述はなかった。

１０　佐原町にあった学校の記念誌に当時の記述が残っている可能性を考え、『八十年のあゆみ　創立八十周年記念』(千葉県立佐原高等学校「八十年のあゆみ」編集委員会編集　千葉県立佐原高等学校　1980)を確認。佐原町防空監視哨については書かれていないが、例えば、以下のような佐原町における戦時中の記録がp22に掲載されていた。
・滑空機格納庫建設地借用願及び地図(昭和13年)
・滑空部員(佐原中学校を会場とした滑空訓練大会の様子の写真) (昭和15年)

また、『九十年のあゆみ　千葉県立佐原女子高等学校創立九十周年記念誌』(千葉県立佐原女子高等学校創立九十周年記念事業実行委員会内記念誌編纂委員会編集　千葉県立佐原白楊高等学校　2004)の第一章第一節「同級生」、第四章第二節「戦時体制下の佐原高等女学校」に佐原町の戦時中の様子が記録されている。p181に防空演習についての記述がある。

１１　郷土開架を確認したところ、『千葉県の歴史　通史編近現代2　県史シリーズ 7』(千葉県史料研究財団編集　千葉県　2006)を確認。p25、924-935、1011-1013、1037に千葉県の防空監視哨に関する記載がある。佐原の防空監視哨については記載なし。