レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年09月03日
- 登録日時
- 2024/11/14 17:26
- 更新日時
- 2024/11/29 13:08
- 管理番号
- 000011157
- 質問
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未解決
『防長風土注進案 奥阿武宰判』の須佐村の項に、千家清主(俊信)の説として、「須佐」の地名は素戔嗚尊と関係があるとし、須佐の高山が「須佐之男の神山」に由来する、とある。
また、『山口県史 上』に「須佐湾は昔から北海岸の良港で神代の昔がし(ママ)素鳴男の尊が朝鮮に往来された途次寄港せられ、その際は高山に御登りになつて四方を展望されたと言ふので高山を神山と呼び地方を須佐と稱するようになつた起源だと傳へられてゐる」とある。
このことに関する出典を知りたい。
- 回答
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下記資料1『防長風土注進案』須佐村の項(p393)に記載のある、千家清主(すがぬし 俊信(としざね)とも)が唱えたという、「須佐」の地名起源について、出典となる文献等は見当たらなかった。
“国立国会図書館サーチ”(国立国会図書館)でキーワード「千家俊信」「千家清主」の語で検索したが、千家の著作集のようなものは見当たらなかった。また、“国書データベース”(国文学研究資料館)にて、検索対象を著者、キーワードを「千家俊信」として検索し、千家の著作を調査したが、タイトルから、須佐に関する記述があると思われるものは見当たらなかった。千家の著作の多くは翻刻されていないもの思われ、網羅的な調査は困難。
(インターネット情報の最終確認日は2024年11月14日。以下同じ。)
“国書データベース 千家俊信の著作”(国文学研究資料館)
https://kokusho.nijl.ac.jp/author/295103?ln=ja
また、『山口県史 上』(資料2)の該当部分はp649にあたる。“国立国会図書館デジタルコレクション”にも収録されている。
山口県史編纂所 編『山口県史』上巻,山口県史編纂所,昭和9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1226148/1/673 インターネット公開資料
高山の名前の由来について、資料3『防長地下上申』の須佐村の項(p656)では、弘法大師が高山に自身の寺を建てようとしたところ、黄帝が取られることを惜しんで山を隠してしまったため、弘法大師は紀伊の高野山に金剛峰寺を開いたことから、高野山になり損ねたことにより高山と呼ぶ、との説が書かれている。“国立国会図書館デジタルコレクション”での該当部分は以下のとおり。
https://dl.ndl.go.jp/pid/9574542/1/338
資料1『防長風土注進案』p395では、「一高山と申は此山至て霊山にして神代のむかし素戔嗚尊降臨ましましける山にて御座候哉、先年は神山と書申候、今は高山と書転し申候事」とある。
https://dl.ndl.go.jp/pid/9575406/1/207
資料4『山口県風土誌』の須佐村の項(p431-432)では、『注進案』の説を紹介した上で、「由来書にのする高山・北谷・帆柱・臼ヶ浦の伝説は皆黄帝にかけて云ふ。黄帝と云う者、則須佐之男命を謬り伝へたるべく思はる。」としている。「由来書」は「地下上申」を指すものと思われる。
https://dl.ndl.go.jp/pid/9573776/1/228
このほか、資料5~8の「高山」または「須佐」の項を確認したが、『山口県史』の出典となったと思われる記述は見当たらなかった。
参考までに、高山の黄帝信仰に関する文献として菊池武「海と黄帝信仰―その実態と伝播―」があり、“国立国会図書館デジタルコレクション”で利用できる。
日本宗教民俗学会 編『宗教民俗研究 = Studies of religious folklore』(1),日本宗教民俗学会,1991-09. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/4426843/1/41 (参照 2024-09-01)
また、資料9「温故 9号」に収録の「須佐湾観光案内」の翻刻(奥付なし、序文に昭和3年(1928年)の年記あり。)に、須佐の「町名の起源」として、「須佐町風土記」の引用があり、宇佐八幡宮から八幡宮を勧請して「宇佐」と呼んでいたものが、「須佐」に転じたとする説を紹介した上で、「同書には更に別説として」、千家清主の説を紹介し、素戔嗚尊が朝鮮と行き来する際に高山に登ったことが由来、としている。
この「須佐風土記」については不明。須佐歴史民俗資料館みこと館に確認したが不明とのこと。
なお、国立公文書館が所蔵ずる「防長風土注進案」は、「長門国風土記」と呼ばれており、うち、須佐村の巻は、題箋に「奥阿武宰判長門国阿武郡風土記 十六 須佐村」とある。ただし、前述のとおり、『防長風土注進案』の須佐村の項には、素戔嗚尊が朝鮮往来の際に高山に登った、とする記述はない。
“国立公文書館デジタルアーカイブ 奥阿武郡宰判長門国阿武郡風土記16”(国立公文書館)
https://www.digital.archives.go.jp/img/745744
また、『名勝天然記念物 須佐湾案内』は萩市立図書館がインターネット上に公開しており、奥付では昭和3年3月25日発行とある。
白上貞利 著『名勝天然記念物 須佐湾案内』(須佐町役場 1928.3)
https://hagilib.city.hagi.lg.jp/hagilib-archive/image/255.pdf
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 地理.地誌.紀行 (29 9版)
- 参考資料
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1.山口県文書館 編. 防長風土注進案 21. マツノ書店, 1983.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I34211100084327 (p393-395) -
2.山口県史編纂所. 山口県史 上巻. 山口県史編纂所, 1934.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111100137746 (p649) -
3.山口県地方史学会 編修. 防長地下上申 第4巻. 山口県地方史学会, 1980.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001468306 (p656) -
4.近藤清石 編. 山口県風土誌 第12巻. 歴史図書社, 1973.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001231360 (p431-432) -
5.御薗生翁甫著. 防長地名淵鑑. マツノ書店, 1974.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130282269036342784 (p905) -
6.高橋文雄 著. 山口県地名考. 1978.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I35115010072202 (p254-255) -
7.日本歴史地名大系 36. 平凡社, 1980.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I10111100070719 , ISBN 4-582-49036-0 (p613-614) -
8.「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典 35 (山口県). 角川書店, 1988.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001948933 , ISBN 4-04-001350-6 (p367) -
9.須佐町郷土史研究会 [編]. 温故 第9号. 須佐町郷土史研究会.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I35111000714968 (p1)
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1.山口県文書館 編. 防長風土注進案 21. マツノ書店, 1983.
- キーワード
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- 山口県--地名
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000359372