レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024/07/17
- 登録日時
- 2024/08/02 00:30
- 更新日時
- 2024/08/22 11:48
- 管理番号
- 17905912
- 質問
-
未解決
天正10年10月に大徳寺で営まれた織田信長の葬儀において黙祷が行われたかを知りたい。
『変容する記憶と追悼(シリーズ戦争と社会5)』では、黙祷が日本で初めて導入されたのは、関東大震災の翌年(大正13年)の一周忌追悼行事だと記載されている。しかし、『日本国語大辞典』の「黙祷」の項では天正10年以前の記述が紹介されている。『日本国語大辞典』で紹介されている「黙祷」と現在の「黙祷」が同じ行為ではないかもしれないが、もし、以前から行われていたなら、織田信長の葬儀は大人数が参列したといわれており、そのような葬儀では皆で黙祷が行われたのではないか。
- 回答
-
以下の資料を概観しましたが、織田信長の葬儀において黙祷が行われたとする記述は見当たりませんでした。当館のレファレンスでは、本文の精読を伴う調査はできませんのでご了承ください。
【 】内は当館請求記号です。書誌事項末尾に☆を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションのインターネット公開資料、◎を付した資料は国立国会図書館内/図書館・個人送信対象資料です。
一部旧字を新字に置き換えて表記している箇所があります。
高柳光寿 著『戦国戦記 [2] (賤ケ岳の戦)』春秋社, 1958【210.48-Ta451s】◎
https://dl.ndl.go.jp/pid/3006028
*「三 大徳寺の葬儀」
田中義成 著『豊臣時代史』明治書院, 1925【210.48-Ta833t】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/1918425
*「第六章第二節 織田信長の葬儀」
*p.26に「皆使を遣はして香を献ぜり」とありますが、黙祷に関する記述はありません。
長瀬春風 著『豊臣秀吉言行録』東亜堂書房, 大正7, (修養史伝 ; 第19編)【355-17-(19)】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/953314
井口丑二 編著『豊臣秀吉言行録. 第4版』大京堂出版部, 昭和9, (偉人研究 ; 第62編)【特224-975】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/1034379
*「七 大徳寺の燒香」
*p.71に「鄭重荘厳なる葬式を行ひ思ふがまゝに焼香する」とありますが、黙祷に関する記述はありません。
橋本政宣 著『近世公家社会の研究』吉川弘文館, 2002.12【GB311-H1】
*「第二部第三章 贈太政大臣織田信長の葬儀と勅諚」
*p.282に「大徳寺における信長の百日忌法事及び葬儀等については、すでに『大日本史料』にも綱文が立てられ詳細が知られる」とあります。
大名墓研究会 編『近世大名墓の成立 : 信長・秀吉・家康の墓と各地の大名墓を探る』雄山閣, 2014.10【GB364-L10】
*加藤理文「織田信長の葬儀と墓」
竹貫元勝 著『古溪宗陳 : 千利休参禅の師、その生涯』淡交社, 2006.3【HM175-H83】
*p.77に七日間の仏事の内容として、経典(大蔵経)の転読、亡者追善供養のための多くの僧による写経、死者供養仏事の懺法、内裏や公家などからの経の贈与等の記述がありますが、黙祷に関する記述はありません。
*(参考)ジャパンナレッジ版『国史大辞典』「古渓宗陳」:「信長葬式法要を奉行し」たとあります。
岡本 良一「信長の葬儀」『日本史研究 = Journal of Japanese history』日本史研究会 編. (通号 103) 1969.03.00,p.64-66【Z8-258】◎
https://dl.ndl.go.jp/pid/13000450/1/34
以下は黙祷および仏教等に関連する調査済み資料です。
新谷尚紀, 関沢まゆみ 編『民俗小事典 死と葬送』吉川弘文館, 2005.12【GB8-H50】
*p.281に黙祷の項があり「瞑目し無言のまま心の中で祈ること。室町時代の文明本『節用集』には「黙祷 モクトウ 心中祈念」とある」との記載があります。
『雑字類書』, 写, [室町中期]【WA16-21】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/1286982
*546コマ目に「黙祷 心中ノ祈念」
*書誌詳細画面の解説中に「書中に「文明六年」(1474)とあることから「文明本節用集」とも称される」とあります。
五来重 [著]『先祖供養と墓』KADOKAWA, 2022.2, (角川ソフィア文庫 ; J106-10)【GD24-M31】
『論集日本仏教史 第6巻』雄山閣出版, 1988.9【HM85-163】
吉田政博 著『戦国期東国の宗教と社会』吉川弘文館, 2022.3【HM85-M71】
[その他の調査済みウェブサイトおよび参考情報]
国立国会図書館デジタルコレクション( https://dl.ndl.go.jp/ja/ )
次世代デジタルライブラリー( https://lab.ndl.go.jp/dl/ )
東京大学史料編纂所データベース( https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ )
国文学・アーカイブズ学論文データベース( https://ronbun.nijl.ac.jp/ )
CiNii Research( https://cir.nii.ac.jp/ )
皓星社ざっさくプラス(当館契約データベース)
ジャパンナレッジLib(当館契約データベース)
J-STAGE( https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja )
リサーチ・ナビ(国立国会図書館)「日本の民間信仰を調べる」( https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/humanities/folk_religion )同「寺院を調べる」( https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/humanities/post_657 )
ウェブサイト最終アクセス:2024年7月13日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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以下の資料で調査しましたが、黙祷が行われたかどうかはわかりませんでした。
<織田信長の葬儀について>
・『大日本史料』第11編の2, 東京帝國大學文科大學史料編纂掛編纂, 東京帝國大學, 1928 pp.717-748
・『信長公と総見院』総見院編集, 総見院, 1961.6
…p.4に葬儀が「足利将軍の七仏事の作法にならって盛大に行われた。」とあり。
・『史料大徳寺の歴史』山田宗敏編, 伊藤克己補訂, 毎日新聞社, 1993.5
<中世の葬儀について>
・『日本中世の墓と葬送』勝田至著, 吉川弘文館, 2006.4 pp.164-210
・『日本喪服文化史』増田美子著, 東京堂出版, 2022.10 pp.168-173
…3代将軍足利義満、12代将軍足利義晴の葬儀の様子について記載あり。
・『古代日本の穢れ・死者・儀礼』尾留川方孝著, ぺりかん社, 2019.1
・『日本古代中世の葬送と社会』島津毅著, 吉川弘文館, 2017.9
<大徳寺(臨済宗)の葬儀について>
・『禅学大辞典』上下, 禪學大辭典編纂所編, 大修館書店, 1978.6
…七仏事、九仏事(くぶつじ)、葬儀、葬式、鎖龕(さがん)などの項
(以下は現代の葬儀について書かれたもの)
・「臨済宗の葬儀式次第」『大法輪』82(9), 大法輪閣, 2015.9 pp.91-94
・「禅宗の葬送儀則」『仏教葬祭大事典』藤井正雄 [ほか]共著, 雄山閣, 1980.8 pp.181-186
<黙祷について>
・『日本国語大辞典』第2版 12, 日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部編, 小学館, 2009 p.1260 …黙祷の項
・粟津賢太「なぜ私たちは黙祷するのか?-近代日本における黙祷儀礼の成立と変容」『変容する記憶と追悼(シリーズ戦争と社会5)』蘭信三 [ほか] 編, 西村明 [ほか] 執筆, 岩波書店, 2022.4 pp.215-236
・斎藤吉久「黙禱 死者に捧げる無宗教儀礼の一考察」『正論』406, 産経新聞社, 2006.2 pp.324-333 ※目次のタイトル「死者に捧げる無宗教儀礼『黙禱』への懐疑」
- NDC
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- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385)
- 日本史 (210)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000353943