レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年12月23日
- 登録日時
- 2023/03/27 16:20
- 更新日時
- 2023/03/27 16:20
- 管理番号
- 千県西-2022-0010
- 質問
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解決
ジャック・ホーバンという青年について書かれた渡辺一夫氏の著作を読みたい。この青年は1526年に火刑に処せられているらしい。
- 回答
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渡辺一夫氏の著作の中で、以下の資料にジャック・ホーバンと思われる青年についての記述があります。
【資料1】『渡辺一夫著作集 9 乱世・泰平の日記(渡辺一夫[著] 筑摩書房 1977)
p284-285「ジャーク・プゥワン逮捕事件」
『フランソワ一世治下におけるパリ一市民の日記』の1525年12月からジャック・ホーバンに関する部分が引用されています。
「1525年クリスマスノ前日モーノ町ノ一人ノ若者ガ、パリ・ノートル・ダム大聖堂前ニテ(中略)コノ者ノ面前ニオイテ(中略)翻訳シタ数冊ノ書物ガ焼却セシメラレタ。(後略)」
引用の後に渡辺氏による解説があり、日記ではこの若者がホーバンだと明記されていないが、「翻刻者のV・L・ブゥリーイーによりますと、後に1526年8月28日に火刑に処せられるジャーク・ポーヴァンだとのことです」といった記述があります。
なお、巻頭の端書によると、この「ジャーク・プゥワン逮捕事件」の記述は『泰平の日記』(渡辺一夫著 白水社 1960)に収録されているとのことです。
【資料2】『異国残照 人と思想』(渡辺一夫著 文芸春秋 1973)
p280-281に『フランソワ一世治下におけるパリ一市民の日記』の1525年12月からジャック・ホーバンに関する部分の引用(【資料1】に引用されたものと同じ部分)と、「ポーヴァンは、翌1526年8月25日に火刑に処せられている」といった記述があります。
- 回答プロセス
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1 事前調査事項にある『持続する志』(大江健三郎著 文芸春秋 1968)を確認すると、
大江氏がジャック・ホーバンについて語っている部分は、渡辺氏と大江氏の対話からの引用であることがわかった。Googleブックスを「渡辺一夫 大江健三郎 対話」で検索すると、『思想との対話 12 人間と機械など』(講談社 1968)がヒットした。資料を確認すると、『持続する志』にあった対話の引用は、『思想との対話 12 人間と機械など』に掲載されている、「対話による解説 人間の狂気と歴史」であることが分かったが、ジャック・ホーバンに関する記述がある渡辺氏の著作について出典は載っていなかった。対話からはジャック・ホーバンに関して「1525年のクリスマスの前の日にノートルダム寺院の前で、自分の書き、翻訳した本を読み上げながら、こういう志は棄てると自分を否定して破いていった」「翌年にはあらためてもう一度最初の志にもどって、ついに火刑に処せられた」という情報を得た。
2 Googleブックスを「渡辺一夫 ジャック・ホーバン」で検索するが、質問に合った内容の資料はヒットなし。
3 1で見つけた『思想との対話 12 人間と機械など』(講談社 1968)の対話の中で書名があがった『フランス・ルネサンスの人々』(渡辺一夫著 白水社 1979)を確認するとp107で、1526年の初めごろから、幾人もの人々が火刑に処せられていることに触れ、「ジャーク・プゥアン(パヴァーヌ)Jacques Pouent(Pavanes)のごとき青年たちがそれでした」との記述があった。火刑に処せられた時期から、この「ジャーク・プゥアン」が、ジャック・ホーバンである可能性を考え、Googleブックスで「ジャーク・プゥアン」を検索すると、【資料2】がヒットした。
4 【資料2】の記述に、【資料1】のp285参照とあった。
5 【資料1】の記述に、『渡辺一夫著作集 5 ルネサンス雑考』(渡辺一夫著 筑摩書房 1977)のp297参照とあり確認したところ、「ジャーク・プゥヮンは、パリのノートル・ダム大聖堂で贖罪告白を行わさせられ」といった記述があるが、【資料1】【資料2】ほど詳しくは書かれていなかった。
- 事前調査事項
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渡辺一夫氏の著作の中に、ジャック・ホーバンについての記述があることは、『持続する志』(大江健三郎著 文芸春秋 1968)のp11-14「この本全体のための最初のノート」に、以下のように書かれていた。「ぼくが読み得た先生のフランス・ルネサンスに関するご本のページのうちでもっとも鮮明な印象をぼくに残している人物は(中略)ジャック・ホーバンという非常に若い人のことです。(中略)先生が短い文章をそのために割かれている、この青年のことがぼくには忘れられません。」
- NDC
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- フランス (235 9版)
- 参考資料
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【資料1】『渡辺一夫著作集 9 乱世・泰平の日記』(渡辺一夫著 筑摩書房 1977)
(9100939934) - 【資料2】『異国残照 人と思想』(渡辺一夫著 文芸春秋 1973)(9100712813)
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【資料1】『渡辺一夫著作集 9 乱世・泰平の日記』(渡辺一夫著 筑摩書房 1977)
- キーワード
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- 渡辺一夫
- Pouent Jacques
- Pavanes
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌的事項調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331064