レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年03月27日
- 登録日時
- 2024/12/10 12:47
- 更新日時
- 2024/12/10 12:47
- 管理番号
- 9000043508
- 質問
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解決
江戸城は、度重なる改修を公儀普請で実施した。石垣普請を担当した大名と、担当した石垣について調査研究した資料を紹介してほしい。
- 回答
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江戸城の公儀(天下)普請は、徳川家康が慶長年間に始めたもので、続く秀忠、家光の時代にも行われた。
寛永5(1628)年の普請の際に西の丸大手升形石垣を築いたのは酒井忠世、1636(寛永13)年の普請の際に下乗橋升形石垣を築いたのは藤堂高次というように(『図説江戸城の石垣』鈴木啓/著 歴史春秋出版 2013年)、江戸城の石垣と担当大名との関係が様々な資料にまとめられている。
詳しくは参考資料をご確認ください。
- 回答プロセス
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1.「公儀普請(こうぎぶしん)」について確認。
・『事典しらべる江戸時代』(林英夫、青木美智男/編集代表 柏書房 2001年)p.539に、工事の種類として「幕府の経費で行う公儀普請」とある。
・『国史大辞典』15上(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1996年)p.66によると、「公儀」は近世の国家権力の総称であり、天下という概念の下位との解説がある。
・インターネットで「公儀普請」を検索すると、Wikipedia「普請」の項目( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%AE%E8%AB%8B#%E6%99%AE%E8%AB%8B%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E )に、普請の種類として「公儀御普請 - 天下普請の事でもあるが個々の具体的な幕府が行う普請」とあった。
2.図書資料の調査。
(1)自館業務システムで、件名「江戸城」をキーワードに所蔵検索。
(2)自館業務システムで、件名「石垣」×件名「城」をキーワードに所蔵検索。
(3)自館業務システムで、全項目で「天下普請」または「公儀(御)普請」をキーワードに所蔵検索。
以上により、次の図書を紹介。
・『江戸城:その全容と歴史』(西ケ谷恭弘/著 東京堂出版 2009年)〈資料番号0106171051〉中世から近代に至るまでの江戸城の歴史を、カラー写真や図版により、詳細に解説。pp.12-29に「家康による天下普請と将軍家・幕府の城」の項があり、石垣普請にあたった助役の名前の記載あり。
・『図説江戸城の石垣』(鈴木啓/著 歴史春秋出版 2013年)〈資料番号0106441025〉江戸城の石垣を、カラー写真や図で紹介。pp.95-101に「天下普請」の項があり、第1期から第5期に分けて概要を記載。
・『江戸城外堀物語(ちくま新書)』(北原糸子/著 筑摩書房 1999年 『江戸の城づくり:都市インフラはこうして築かれた(ちくま学芸文庫)』(北原糸子/著 筑摩書房 2012年)に改題)〈資料番号0103744694〉1636(寛永13)年の江戸城外堀普請を、発掘調査で出土した遺構により再現し、そのシステムや技術力について紹介。pp.173-177の「「石垣方普請丁場図」と発掘結果」の項によると、立花家文書の「江戸城普請分担図(石垣方普請丁場図)」(柳川古文書館蔵)が唯一残る江戸城の石垣普請当時作られたものの控えと考えられるとのことで、この丁場図と実際の石垣の刻印石を照合している。
・『刻印石で楽しむ三大名城の石垣物語(新人物ブックス)』(菅野良男/著 新人物往来社 2011年)〈資料番号0105630198〉江戸城、名古屋城、大坂城の石に刻まれた刻印・刻文などを紹介。pp.37-118が「第二章 江戸城石垣の構築と刻印石」となっており、公儀普請(天下普請)による石垣の構築の経緯の概説や、石垣の刻印を探すモデルコースの紹介がある。
・『江戸城:築城と造営の全貌』(野中和夫/著 同成社 2015年)〈資料番号0106591399〉太田道灌による築城以前から、明治維新以降の宮城造営に至るまでの江戸城の全歴史を、考古学、文献史学、古絵図の解読を通して解明した研究成果。pp.19-113が「第二章 公儀普請としての江戸城修築」となっており、「江戸城修築の経緯」として、慶長期以降の修築について概説されて、助役大名の一覧が、pp.96-109には、石垣にある刻印についての一覧と考察がある。
・『江戸城の土木工事』(後藤宏樹/著 吉川弘文館 2024年)〈資料番号0107893778〉p.71、74、75、81、85、95、101、102、118、119などに慶長期、元和期、寛永期に分けて普請の状況がまとめられている。
・『石垣が語る江戸城(ものが語る歴史)』(野中和夫/編 同成社 2007年)〈資料番号0105205405〉最初に天下普請について大まかな説明があり、p.21からそれぞれの時代の修築に関わった大名の説明とその一覧がある。
3.雑誌記事・論文の調査。
国立国会図書館サーチ、国立国会図書館デジタルコレクション、CiNiiResearch、magazineplus、J-STAGE等を、「江戸城」「石垣」「公儀普請」「天下普請」のキーワードで検索し、次のものを紹介。
・「天下普請と諸大名:慶長十一年の江戸城普請、江戸城誕生をめぐる新視点」白峰旬(「歴史読本 2003年8月号」新人物往来社 2003.8 pp.72-77)〈資料番号0200933570〉これまで徳川幕府の絶対的権力を示す象徴的行為とされていた慶長11(1606)年の天下普請については、実態は徳川氏の単独公儀では助役大名を動員できず、豊臣公儀の介在が必要だったことを解明する。
・「〈特集ワイド徳川幕府誕生〉石垣採石の情報合戦:江戸城普請の過酷なノルマ」野口和夫(「歴史読本2011年3月号」新人物往来社 2011.3 pp.96-101)〈資料番号0201653441〉石垣に彫られた刻印に見られる記号の意味、石場の確保のための大名たちの情報合戦など、江戸城普請のための過酷なノルマによる、採石・運搬の熾烈な現場の状況を紹介。
・「近世初期(元和・寛永期)の公儀普請(城普請)の実態に関する考察(1) : 石材調達・石垣普請の事例を中心に」白峰旬(「別府大学紀要 5」別府大学会 2010.2 pp.109-124)
※別府大学機関リポジトリで閲覧可能
http://repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/dk05110.pdf?file_id=4012
・「近世初期(元和・寛永期)の公儀普請(城普請)の実態に関する考察(2) : 石材調達・石垣普請の事例を中心に」白峰旬(「史学論叢(Review of Historical Studies). No.40」 別府大学史学研究会 2010. 3) pp.44- 625)
※別府大学機関リポジトリで閲覧可能
http://repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php/sg04008.pdf?file_id=5283
※確認したが関連の記載のなかったもの。
・『石垣普請(ものと人間の文化史)』(北垣聡一郎/著 法政大学出版局 1987年)〈資料番号0101564920〉
・『石垣の名城完全ガイド』(千田嘉博/編著 講談社 2018年)〈資料番号0107260689〉
・『戦国の城と石垣』(中井均/著 高志書院 2022年)〈資料番号0107693186〉
※webサイトは2024.6.11最終確認
- 事前調査事項
- NDC
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- 関東地方 (213 10版)
- 日本の建築 (521 10版)
- 参考資料
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西ケ谷恭弘 著. 江戸城 : その全容と歴史. 東京堂出版, 2009.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010568675 , ISBN 978-4-490-20675-3 (pp.12-29,請求記号521.8/ニシ/,資料番号0106171051 ) -
鈴木啓 著. 〈図説〉江戸城の石垣. 歴史春秋出版, 2013.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I024624966 , ISBN 978-4-89757-804-0 (pp.95-101,請求記号521.8/スズ/,資料番号0106441025) -
北原糸子 著. 江戸城外堀物語. 筑摩書房, 1999. (ちくま新書)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002811235 , ISBN 4-480-05809-5 (pp.174-177,請求記号521.8/キタ/,資料番号0103744694) -
菅野良男 著. 刻印石で楽しむ三大名城の石垣物語. 新人物往来社, 2011. (新人物ブックス ; 03991)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011161828 , ISBN 978-4-404-03991-0 (pp.37-118,請求記号521.8/カン/,資料番号0105630198) -
野中和夫 著. 江戸城 : 築城と造営の全貌. 同成社, 2015.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I026382279 , ISBN 978-4-88621-699-1 (p.96-109,請求記号521.8/ノナ/,資料番号0106591399) - 新人物往来社, 2011.3. 「歴史読本」 2003年8月号 (pp.72-77,資料番号0200933570 )
- 新人物往来社, 2011.3. 「歴史読本」 2011年3月号 (pp.96-101,資料番号0201653441)
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野中和夫 編. 石垣が語る江戸城. 同成社, 2007. (ものが語る歴史シリーズ ; 12)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008478217 , ISBN 978-4-88621-380-8 (pp.21-68,請求記号521.8/イシ/,資料番号0105205405 ) -
後藤宏樹 著. 江戸城の土木工事 : 石垣・堀・曲輪. 吉川弘文館, 2024. (歴史文化ライブラリー ; 594)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033422470 , ISBN 978-4-642-05994-7 (pp.54-143,請求記号521.8/ゴト/,資料番号0107893778)
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西ケ谷恭弘 著. 江戸城 : その全容と歴史. 東京堂出版, 2009.
- キーワード
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- 江戸城
- 石垣
- 公儀普請
- 天下普請
- 大名
- 江戸時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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「「近世初期(元和・寛永期)の公儀普請(城普請)の実態に関する考察(1)【別府大学機関リポジトリ】」
http://repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=dk05110
「「近世初期(元和・寛永期)の公儀普請(城普請)の実態に関する考察(2)【別府大学機関リポジトリ】」
http://repo.beppu-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=sg04008
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000360342