レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年08月20日
- 登録日時
- 2024/11/14 17:04
- 更新日時
- 2024/11/29 13:08
- 管理番号
- 000011155
- 質問
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解決
萩藩10代藩主の毛利斎熈の三男、毛利左近信順(のぶゆき)の略歴(特に、敬親が藩主になって以降)とその家臣、信順の子である喜久姫の離縁の理由、同じく信順の子で敬親の養子になった順明(のぶあきら)の略歴について知りたい。
- 回答
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毛利左近信順の略歴について、既に確認済みの『もりのしげり』に記載されたもの以外の情報として、以下がある。
下記資料1『近世防長人名辞典 増補版』p250に、「学を好み詩歌を能くす」とある。この資料は、“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(図書館・個人送信限定資料)
吉田祥朔 著『近世防長人名辞典』,マツノ書店,1976.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12190803/1/133 (参照 2024-11-14)
また、萩藩の幕末・明治期の歴史書である資料2『防長回天史 2 第2編』p79-80に、信順(左近君)死去の記事がある。その部分を引用すると以下のとおり。
「(引用者注:安政2年)三月九日左近君卒す君は清徳公の第二子なり故に公常に之を待つ頗る厚し藩内に令し音曲を停止すること十日始め崇文公の物故に方り其後を承くるに於て公と君と其系統相同じ而して公崇文公の遺志を以て其後を承く此の如きの境遇に在りては動もすれば藩士の党争を醸すは諸侯の家に多く見るの例とす毛利氏に在りて絶て此事なかりしは重臣の能く力を合せて公家の事に勉むるに因ること少なからざるべしと雖も抑も亦公と君と互に能く其分を盡すに因ること多きに居る」
なお、この資料は、ほぼ同じものが“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(インターネット公開資料)
末松謙澄 著『防長回天史』第2篇(第2),末松春彦,1921. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2169787/1/46 (参照 2024-11-14)
なお、資料3『萩の歌人』p2-3に、信順の和歌が2首掲載されている。p3には喜久姫のものもある。この資料は、“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(図書館・個人送信限定資料)
山本勉弥 著『萩の歌人』,萩文化協会,1957. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1345638/1/12 (参照 2024-11-14)
また、幕末期の萩藩士の分限帳である資料4『萩藩分限帳』、資料5『萩藩給禄帳』には、信順の禄は見当たらなかった。資料4、5ともに、“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(図書館・個人送信限定資料)
安藤紀一 [筆写] ほか『萩藩分限帳』,萩市郷土博物館友の会,1979.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9574455 (参照 2024-08-16)
樹下明紀, 田村哲夫 編『萩藩給禄帳』,マツノ書店,1984.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9575650 (参照 2024-11-14)
信順の家臣についても、彼の御家人帳の類は見当たらなかった。
なお、資料6に収録された論文、根本みなみ「近世大名家家族をめぐる世代間関係―萩毛利家における世代交代を事例に」によると、信順のような、結果的に家督相続者になりえなかった男子は「部屋住」「厄介」と呼ばれ、家長の扶助を受けながら一生を過ごした、とある。信順自身は禄や家臣を持たなかった可能性がある。幕末の毛利家の家族関係や家督相続について論じた資料として、資料6のほか、資料7『毛利家 家から見る江戸大名』や、資料8『お家相続 大名家の苦闘』などがある。
信順の娘、喜久姫が、嫁ぎ先の山内豊範から離縁されたことについて、“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている「土佐史談」(46)(図書館・個人送信限定資料)に掲載の「山内豊範公年譜」によると、形式的には2度離婚したことになっている。
p90の元治元年8月22日条に「夫人毛利氏ヲ離婚シ、之ヲ家老職五藤内蔵助ノ邸置ク」とある。その後、p93の明治元年12月8日条に「前夫人毛利氏ト再婚」とあり、さらにp94の明治5年9月28日条に「是ヨリ先、夫人毛利氏ト離婚シ」て、この日に上杉齊憲の娘、栄姫と結婚したとある。離婚の理由は記載されていない。
『土佐史談』(46),土佐史談会,1934-03. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/7913022/1/58 (参照 2024-11-14)
このことについて、資料9「歴史読本」49(10)に掲載の、渡部淳「土佐藩 山内豊範夫人 俊・栄」によると、元治元年8月22日の「離婚」は、その年に起こった禁門の変に伴い、萩藩が朝敵となったために、離別して城内から出したもので、俊姫(喜久姫が山内家に嫁いだ際に改名)を萩藩に返すべきか議論となったが、最終的には藩内にとどまったとある。また、明治元年12月7日に「帰縁」し、彼女は再び高知城へ戻ったが、「その御仲は復た昔のやうでは無く公は何となく夫人を御厭ひの風があった」(「田村久井談話」)ために、改めて離婚したとある。
なお、「田村久井談話」の該当部分は“国立国会図書館デジタルコレクション”の以下の資料で利用することができる。(図書館・個人送信限定資料)
山内家史料刊行委員会 [編]『幕末維新』第14編 (第十六代豊範公紀 明治四年六月三日~明治十年七月十四日),山内神社宝物資料館,1989.7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9576534/1/235 (参照 2024-11-14)
毛利順明について、『もりのしげり』に記載のもの以外の情報として、以下がある。
前掲資料2『防長回天史 2 第2編』p447によると、万延元年1月ごろ、順明が銃陣の訓練を受けた旨の記載がある。
末松謙澄 著『防長回天史』第2篇(第2),末松春彦,1921. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2169787/1/230 (参照 2024-11-14)
また、資料10『防長回天史 7 第5編上』p35によると、元治元年のいわゆる元治の内乱の際、順明(禎之丞)ら「公族」が、山口から萩へ移ったとの記述がある。この資料は、ほぼ同じものが“国立国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(インターネット公開資料)
末松謙澄 著『防長回天史』第5篇上(第7),末松春彦,1921. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2169811/1/22 (参照 2024-11-14)
順明が山口に住んでいたことについて、資料11『小鯖村史』p380によると、文久3年5月23日、順明が禅昌寺(現・山口市小鯖にある寺院)を居館としたため、同寺が「鯖山御殿」と称されるようになった旨の記載がある。文久3年春ごろから、藩の中心地を萩から山口に移した、いわゆる山口移鎮が行われたため、それに伴って山口に移ったものと思われる。資料6は、“国会図書館デジタルコレクション”に収録されている。(図書館・個人送信限定資料)
坂倉道義 著『小鯖村史』,小鯖村史刊行会,1967. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3027661/1/203 (参照 2024-11-14)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 中国地方 (217 9版)
- 参考資料
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1.吉田祥朔 著. 近世防長人名辞典 増補. マツノ書店, 1976.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001368803 (p250) -
2.末松 謙澄 著. 防長回天史 2 第2編. マツノ書店, 1991.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I35115010013810 (p447) -
3.山本勉弥著. 萩の歌人 : 附防長の歌人. 萩文化協会, 1957.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130282271269886080 (p2-3) -
4.萩郷土文化研究会. 萩藩分限帳 改訂複刻版. 萩市郷土博物館友の会, 1979.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I3411B10037649 -
5.樹下明紀, 田村哲夫 編. 萩藩給禄帳. マツノ書店, 1984.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001719043 -
6.比較家族史学会 監修. 家族研究の最前線 5. 日本経済評論社, 2021.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I031244298 , ISBN 978-4-8188-2578-9 (p21-42) -
7.根本みなみ 著. 毛利家 : 萩藩. 吉川弘文館, 2023. (家からみる江戸大名)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I032864612 , ISBN 978-4-642-06882-6 -
8.大森映子 著. お家相続 : 大名家の苦闘. 吉川弘文館, 2018. (読みなおす日本史)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I029125751 , ISBN 978-4-642-06766-9 - 9.渡部淳. 「土佐藩 山内豊範夫人 俊・栄」. KADOKAWA, 2004.10. 歴史読本 第49巻第10号通巻779号 (p120-123)
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10.末松 謙澄 著. 防長回天史 7 第5編 上. マツノ書店, 1991.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I35115010024189 (p35) -
11.坂倉 道義 著. 小鯖村史. 1967.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I35119310047053 (p380)
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1.吉田祥朔 著. 近世防長人名辞典 増補. マツノ書店, 1976.
- キーワード
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- 毛利 (家) (長州藩)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000359366