レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年11月21日
- 登録日時
- 2012/12/27 13:49
- 更新日時
- 2012/12/27 13:49
- 管理番号
- tr274
- 質問
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解決
江戸時代に、下野国でお灸のモグサが作られていたかどうか、作られていたとしたら、産地はどこか知りたい。『享保・元文諸国産物帳集成 第2巻 常陸・下野・武蔵・伊豆七島』と『江戸後期諸国産物帳集成 第3巻 下野』に記述がないか。
- 回答
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『栃木県大百科事典』(栃木県大百科事典刊行会/編 下野新聞社 1980)p741の「ヨモギ」の項に、「もぐさというのは、夏に葉を集めて乾燥したものを臼でつき、葉の裏の白い綿毛だけを集めたもので、これを適当にまるめて皮膚の上にのせ、線香で火をつけるのが灸である。」とありますので、まずはお尋ねの資料で「よもぎ」の記載を確認しました。
・『享保・元文諸国産物帳集成 第2巻』(盛永俊太郎/共編 安田健/共編 科学書院 1985)
「下野国諸村産物帳」(p63-181)の「下野国宇都宮御領岡本最寄拾壱ヶ村産物書上ヶ帳」(p67-112)に、以下の記述がありました。なお、「拾壱ヶ村」は「河内郡 芦沼村、下ヶ橋村、白沢村、上岡本村、中岡本村、下岡本村、上平出村、下平出村、小原新田村、柳原新田村、石井村」の11村です。(村名の記載はp67及びp110-112にあり)
「一 よむぎくさ 最寄村不残」(p93)
「一 よもぎ葉
一 ところ
一 ままだご
右最寄村不残」(p107)
また、「河内郡 下反町村、上御田村、中嶋村、下横田村、御田長嶋村、羽牛田村、台新田村、兵庫塚新田、幕田村、鷺谷村、西川田村、江曽島村、靏田村」の13村の部分(p113-155)には、以下の記述がありました。(村名の記載はp113及びp153-155にあり)
「一 よもき
一 ところ
右最寄村不残用申候」(p151)
さらに、「丹羽正伯様より被仰出候品々書上帳」(p161-167)にも、以下の記述があります。
「一 たて 一 よもき
一 ちそ
此分百姓食事に仕候 」
・『江戸後期諸国産物帳集成 第3巻 陸奥・羽前・羽後・陸中・陸前・磐城・会津・下野・常陸』(安田健/編 科学書院 1998)
「日光山志」(p827-858)の中に「岩蓬」の図があります(p834)。
なお、下野関連の資料でもう一つ、「日光山草木之図」が収録されていますが(p531-826)、p537-556の目録を確認した限りでは、「よもぎ」の記載は確認できませんでした。
その他、栃木県内のモグサ産地に関する資料は、以下のとおりです。
・『モグサの研究 2 伊吹山考』(織田隆三/著 全日本鍼灸学会 1985)
(『全日本鍼灸学会雑誌』35巻1号(1985)の別刷資料)
・『モグサの研究 4・5 篩について』(織田隆三/著 全日本鍼灸学会 1995)
(『全日本鍼灸学会雑誌』45巻2号(1995)の別刷資料)
・『モグサの研究 6・7/モグサの名所しめじが原について』(織田隆三/著)
(「モグサの研究」は『全日本鍼灸学会雑誌』45巻4号(1995)及び46巻2号(1996)の別刷資料、
「モグサの名所しめじが原について」は『薬史学雑誌』第31巻第1号(1996)の別刷資料)
・『モグサの研究 10・11 産地について』(織田隆三/著 全日本鍼灸学会 1999)
(『全日本鍼灸学会雑誌』48巻4号(1998)及び49巻2号(1996)の別刷資料)
・「伊吹山とモグサについて」(織田隆三/著 織田隆三 1997)
(『薬史学雑誌』第32巻第1号(1997)の別刷資料)
また、前述『栃木県大百科事典』の引用部分の続きに、「よく伊吹山の艾といわれ、滋賀県と岐阜県の境の伊吹山産であるとされているが、本当は栃木市の北の吹上町にある小さな山の伊吹山周辺がそれのようである。このことは物集(もずめ)高見の「広文庫」と落合直文の「言泉」にもでているし、」とあります。こちらの2資料の該当部分は、以下のとおりです。
・『言泉1』(落合直文/著 大倉書店 1929)
p305-306「いぶきやま 伊吹山」の項に、「二 下野国下都賀郡にある山。吹上村に属す。吹上城址にあるに由り、城山と通称す。(略)艾草(ヨモギグサ)及び其他の薬草を産すること多し。世に「伊吹もぐさ」を近江・美濃の堺なる伊吹山の産なりとするは誤なりといふ。」とあります(p306)。
・『廣文庫 19』(物集高見/著 廣文庫刊行会 1918)
p149-151「もぐさ 艾」の項の「益軒全集養生訓」の引用部分に、「昔より近江の膽吹山、下野の標茅(シメジ)が原を艾葉の名産とし」とあります(p150)。また、同じページの「伊吹艾」の「本朝医談 初編」部分には「近江のいぶき艾をもてはやすは、永禄以来の事なり」、「日本山海名物図絵」の引用部分には「伊吹山は近江美濃両国にかかりたる大山なり、和薬おほく出づ、中にも、もぐさ名物なり」とあります。
・『廣文庫 20』(物集高見/著 廣文庫刊行会 1918)
p19-21「よもぎ 艾、蓬」の項の「本朝食鑑」の引用部分に「今以 江州膽吹山之艾 為上、野州中禅山中標茅原之艾 次之」※とあります(p19)
※引用文中のスペースは当館職員による。
『廣文庫』ですが、「伊吹山」の項が収録されている可能性のある第3巻について、当館で所蔵しておらず、残念ながらこの項目は確認できませんでした。上記2項目からは、伊吹山が下野の山であるとする記述は確認できませんでした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 農業 (610 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- モグサ
- よもぎ
- 伊吹山
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000117540